最後にいろんな提案をしています。いろいろと調整してああやってこうやってと言うのは簡単ですが、お金にはならないのに時間だけはかかってしまいます。十数年かかってワークショップを百何回もやってという仕事になりますが、本当はそんな手順を踏む方がいいのでしょう。
最後にまとめた提案は8項目になります。
また、法令にはマスタープランに住民を参加させよと書いてあるのですが、実際には形式的なもので本当に住民の声が反映されるとは思えない。その辺、現実感覚がないことを指摘したうえで、本格的な住民参加を目指すならばという提案をしました。
これを「良い悪い」で評価してしまうと、学者先生同士の議論になっていくだけで、何も決まらない。それじゃあダメです。住民も入れて「好きか嫌いか」でやると、案外スムーズに決まるんじゃないかというのが私の説です。
コンクリートにすると税金が上がって、しかも長い間高い。これじゃあ、地震に強い街にはなかなかならないでしょう。景気浮場のため容積率アップや規制緩和が大手を振っていますが、税制は一向に改善されません。景観行政で税制は大きな力を発揮すると考えているのですが、反応はにぶい。
今、重点予算として3百億円の無電柱化予算が組まれていますが、国道のバイパスだけで町なかには全然入らないものです。町なかを対象にした措置法が望まれる所です。
広告・看板の除去や高架道路・歩道橋など、都市を醜くしている要素を重点的に除去することは、今すぐ始めるべきだと提言しました。
また4つの行動の中に「美しい都市づくりに向けての緊急5カ年(ないし10カ年)計画を持つ」とあります。実はこれまで、建設省だけでも住宅、道路、下水道、都市公園の各々の緊急措置法が作られています。現在の都市再生もそうしたものと考えてよいでしょう。景観においても、そうした緊急措置法が必要ではないかと考えました。
提案
1)都市計画・建築規制のあるべき姿
さっきも言いましたように、地方分権化を徹底して、ローカルルールをしっかり作っていく必要があるでしょう。2)都市計画マスタープランへ景観計画を位置づけ、運用する
今も都市計画審議会と景観計画審議会が、それぞれ別に運営されることが多いのですが、一本化することが必要でしょう。突飛に聞こえるかもしれませんが、一言で言うと、都市計画に感性をもたらす必要があるということです。3)都市開発プロジェクトへ戦略的マスタープランを導入する
これはマスタープランが形骸化しないよう、実質的なマスタープラン、プログラムを組み込む必要があるだろうと提案したものです。とくに動きのある地区、大規模な開発事業地区の周辺のマスタープランのあり方についての提案です。4)「ローカルルール優先」の原則に基づく制度の再構築
景観というものは「その場所にしか存在しないもの」ですから、その場所で一番いい解答が正しいんです。それが法律違反になるのだったら、法律の方が間違っていると思った方がよい。今は法律通りにやるとベストにならない、それをどうすべきかを考えました。5)都市開発に景観評価システムを取り入れる
本にはいろいろ書いてありますが、私個人としては「好き嫌いで評価しろ」と前から言っています。「好きの票が多かったら、そっちの方向でいく」。それを何度か繰り返していくうちに、客観的な基準になっていくだろうと楽観的に考えています。6)税制をまちづくりに連動させる
景観が良いものを作ると資産価値が上がります。ところが、そうすると固定資産税は当然上がります。本来自分の資産価値が上がるのを誇るべきだと思うんですが、どうもそうでもないらしい。住宅の耐震化不燃化がいわれていますが、街なかでも木造が増えているのも資産価値を上げたくないからだろうと勘ぐっています。そういう今の税システムも問題だろうと考えています。7)専門家の職能を確立させる
最近、「都市計画家は職能なのか、どうなのか」という議論を別の場面でしています。何を今さらと言われるかもしれませんが、よく考えると分からない。行政のインハウスプランナー、民間の専門家、コンサルタントなど、学者先生の社会的役割など、どれも中途半端です。8)今すぐ始めるべき4つの行動
まずは、全ての道路の無電柱化をやれと提言します。4メートル道路の電柱なんか、道幅が狭いほどヒドイんです。あそこに光ファイバーなど新しい通信網まで取り付けようとするんですから。世の中チグハグもいいところです。本当にヒドイことになる前に無電柱化をやって欲しい。やったとしても、都市計画道路の何分の一かの予算で出来るんですから。
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