京都市中心部の新しい景観政策
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新たな景観施策の展開〜「中間取りまとめ」を受けて〜

 

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 中間取りまとめでは、建物の高さやデザイン、歴史性、看板、そして緑化の推進や夜間景観まで含めた景観に関わる様々な提言がなされました。

 そして、その中でも、速やかに実施しなければ間に合わないとされたのが、

 ・建築物の高さやデザインの更なる規制誘導
 ・京町家など歴史的建造物の保全とそれを活用した都市景観の形成
 ・看板など屋外広告物や駐車・駐輪対策
 以上の3点であり、これを速やかに実施すべきであると、提言で謳われております。これを受けて直ちに行っている取り組みを、次にご紹介します。


地域別の規制・誘導に関する方策

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 京都の景観を地域別に分けて、それぞれの特性に合った規制・誘導を行っていくわけですが、

と、たいだいこのような地域類型をいたしました。

 外国の歴史都市などでは、「歴史地区」などと呼ばれる地区を指定して凍結的な保存を目指しているところもあるようですが、京都市においても、地域の特色ごとにこういった名称を与えて、そこの歴史性を徹底的に再生させていく、あるいは歴史性と調和した現代空間を創っていくといった方針で、まちづくり、景観づくりを考えていくことにいたしました。


建築物の高さ規制の見直し

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 まずは、先ほど速やかに施策を具体化すべきと提言されたと言いました三つのうちの一つである建物の「高さ」についてです。

 これについては、山裾から中心部まで、市街化区域全域で高さの見直しをすることにしています。先ほど45mを30mに、あるいは31mを15mに、といった数字が出ましたけれども、あれは歴史的都心地区での高さ制限の例を挙げたものです。

 どういった形にまとめていけるかはまだ見えておりませんが、今頑張っている最中です。

 基準とか法律というものは一律に、画一的、硬直的な運用では決して良いものが誘導できないものです。非常に難しい話ですが、高さ制限ばかりを言うのではなくて、トータルでのデザインを考えるべきものがありますので、色んなケースがあることを理解しておく必要があります。

 したがって原則としての高さ規制に加えて許可の仕組みも整備し、公共性や公益性の高い建築物や、その地域の良好な景観形成に寄与する望ましいものである場合に、総合的な判断のもと許可するという仕組みをつくっていこうと考えています。

 また、この許可を行政が恣意的に行うことは許されませんので、専門家などで構成する第三者機関による審査、あるいは建築主の周辺住民への説明の義務といった客観的な評価制度の仕組みを整備する必要があるでしょう。


歴史的都心地区での取組

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 例として、旧市街地にあたる「歴史的市街地」の中の「歴史的都心地区」での取り組みを申しますと、幹線道路沿いの街区を中心とした「田の字地区」は現在45mの高度地区に指定していますが、これを31mにしようという方向で見直しをしております。

 また、町家が今も残る地区では、歴史性と調和するような形で高さ制限をしていけば、景観形成も上手くいくだろうというようなことを答申で提案していただきました。

 
 また「職住共存地区」では、31mのところを15mの高さ制限に見直して、3階以上は壁面を後退させなさいという規制を設けようとしています。

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職住共存地区でのシミュレーション@〈現状〉
 
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職住共存地区でのシミュレーションA〈高さ規制見直し後〉
 
 シュミレーションをしてみますと、先ほど紹介しました3点セットルールによって、ある程度壁面後退をさせることができますが、しかし現状ではまだ不調和な状態にあります。見直し後は伝統的な町家の後ろに多少建物が見える程度になります。

 勾配屋根をつけるつけないは、これからデザインの問題として考えますけれども、こういった近代的な建物と歴史的な町並との調和を図るための景観形成を考えようとしているわけです。


建築物のデザインについての取組

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新・京デザイン提案募集
 
 建築物のデザインについては、先ほど言いましたように、全国の美観地区の80%が京都にあるというくらい、京都市では美観地区を活用したり、建造物修景地区という京都市独自の制度仕組みを作りデザインを指導しています。

 町家にも、織物屋さんだとかお茶屋さんだとか、いろんな町家がありますが、そういった京町家と言われる伝統的な木造建築には、いろんなタイプがあり、それぞれの様式があります。

 ところが、現代的な中高層建築物については、たとえ美観地区においても、京都市独自の明確なブランドというのは、ございません。作ろうと思っても、抽象的な基準になったり、色々と課題があるわけです。

そんなことから今回、中間取りまとめを受けて実施している取り組みの中で、美観地区等におけるデザイン基準をもう少し明確にしていこうとしています。

 そこで、いろんな人の意見を聞くため、「新・京デザイン(しんみやこでざいん)」という名称をつけまして、広く提案を募集することにいたしました。

 京都にはどんな建築物が似合うか、京都で建てる現代的な中高層建築物ならどんなエレメントを考えていく必要があるか、あるいは全体としてこうあるべきだというようなことを、お考えをお持ちの方から広く募ろうということで、平成18年8月の末まで公募しております。(当HP公開時点では終了しています)。

 部門が二つありまして、そのうちのアイデア部門は、素人の方でも十分思いだけは述べられますので、ちょうど夏休みに入る小学生の子供達に参加してもらおうと、子供用のリーフレットを作りまして、絵でも文章でも何でもいいから、思い思いに書いてかいてもらうことにしました。もちろんプロの方も、このアイデア部門でコンセプトや考え方を述べてもらうのは大いに結構ですので、ここにいらっしゃる方々にも是非お願いしたいと思います。

 それから、もう一つはデザイン部門です。これは敷地を田の字の地区と職住共存地区を選んでいただいて、どんな中高層建築物のデザインがふさわしいか、パースなどとともに設計コンセプトを書いて頂くというものです。あまり細かいことを考えて頂くよりは、京都に建てる中高層建築のデザインはどんなものが良いかといったことを考えて頂ければと思っています。あまりカチカチに設計図面をあげるような考え方は無用です。力を貸して頂けたら有り難いと思います。


京町家など歴史的建造物の保全・再生

歴史的景観再生事業
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歴史的景観再生事業
 
 次にご紹介するのは、速やかに施策を具体化すべき2つ目の課題、歴史的建造物の保全とそれを活用した都市景観の形成についての取り組みです。

 先ほど、単体の歴史的意匠建造物を市で指定して補助しているほか、景観法にもとづいて景観重要建造物も3軒指定したとご説明しました。そこで、これらの補助制度を使って、歴史的景観再生事業を行っていこうという取り組みです。

 どういうことかと言いますと、例えば一つの良好な歴史的な建築物があるとします。この建物を景観法に基づく景観重要建造物に指定し、これを核として、その地域において意匠が崩されてしまった京町家あるいは近代洋風建築を順次復元しその地区の歴史的町並を整えていこうとするものです。

 また、防火のためのモルタルなどが塗られて伝統性が潰れていっているようなものも、一つ、二つと段々と再生させ、点から線、線から面へと広げていき、地区全体の歴史的景観を再生していこうというわけです。

 このように、景観重要建造物の指定制度、仕組みを使いながら、京都の歴史的景観を再生していこうとしております。

景観重要建造物の指定について
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景観重要建造物の指定について
 
 平成18年3月に景観法に基づく景観重要建造物の第一号となる建築物を指定したと申し上げましたが、それが小島邸(中京区新町通錦小路上る)、吉田邸(中京区新町通六角下る)、山中油店(上京区下立売通智恵光院西入)の三つです。

 これらを核として建築物の再生事例を段々と増やしていこうと思っています。

京町家まちづくりファンドの活用
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「京町家まちづくりファンド」の活用
 
 先ほどご紹介しました「景観・まちづくりセンター」では、昨年「京町家まちづくりファンド」を立ち上げました。

 このファンドは、皆さんからのご寄付と、国からと京都市のファンド立ち上げによって、現在一億五千万円となっております。5年先には5億、10年先には10億と、徐々にファンド規模を大きくしようと考えております。

 この京町家まちづくりファンドでは、老朽化や様式が潰されている京町家に助成をして、むしこ窓の復元など様式を再生させる事業を行っています。

 ある程度再生ができましたら、景観重要建造物の指定ができます。そうすると国の補助金も京都市の補助金も使えることになります。このまちづくりファンドと連携しつつ、こういった建物を増やしていって、最終的には町並全体を再生しようとしています。


屋外広告物対策の強化

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屋外広告物対策の強化
 
 それから先ほど言いましたように、京都市では昭和31年から広告物条例を作って、頑張って指導してきましたが、現在もやはり違反が多くあります。

 建築物の違反は結構厳しく取り締まっておりますが、広告物は繁華街などではいつのまにか設置されてしまっているということがありますし、許可を受けずに勝手に作っている看板がかなりあって、それらが町並を壊す一つの大きな要素になっています。

 そこで平成18年度から、四条通と、河原町通の一定範囲および木屋町の一定範囲をモデル地区として、徹底的に違反の取り締まりを行い、告発・代執行を含めた取り組みの強化をしようとしています。すでに調査に入るなど指導を始めているところです。

 また、このような取り組みに合わせて、広告物条例の見直しも図りながら、例えば統一的な看板にしていただくなどの協力をいただき、その中でも優良な看板については、積極的に表彰するなど、どんどん宣伝し、反対に悪いもの、違反の広告については、徹底的に指導していく、こういった二つの取り組みを進めようとしています。

 このように現在、中間取りまとめで挙げられた建築物の高さやデザイン、歴史的建造物の保全、そして広告物の三つについて、積極的な具体的施策を組んでいるところでございます。


最後に

 市長の言葉を借りますと、景観まちづくりは、先ほども50年、100年先と言いましたけれども、やはりそれだけの長いタームの中でようやく全体的な形が現れてくるものです。

 ですから、今すぐ取り組まないと50年先にはできないということになります。景観は時間との勝負、まったなしであるという合い言葉の下、昨年の7月に審議会を立ち上げ、今年の3月に中間取りまとめをもらった後、4月19日に市長自ら定例記者会見でこれからの方向を打ちあげまして、今職員一丸となってこれに取り組んでいるところです。

 山崎先生が大変だろうとおっしゃいましたが、まあ大変です。大変ですが、これをやりきらないと50年後の歴史都市・京都の町並景観というものは全く無くなっているだろうと思いますので、頑張って取り組んでいるわけです。

 以上、雑駁な説明になりましたけれども、これまでの取り組み、現状、そして中間取りまとめを受けた後の今後の取り組みについてご報告をさせて頂きました。ありがとうございました。

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