京都市中心部の新しい景観政策
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その他の景観施策について

 

電線の地中化への取り組みは

金澤(大阪産業大学)

 短期間での成果という件に関連しますが、無電柱化などの景観の阻害要素を除外する取組みは、はっきりとした効果があらわれると思います。京都市では、無電柱化をどうやって進めているのでしょうか。

福島

 祇園町南側での無電柱化の事例を先程紹介しましたが、確かにスッキリとしますね。京都では、都心部の幹線道路と伝建地区などの歴史的な地区を優先的に進めています。

 担当している局が違うため、あまり言えないのですが、京都市はかなり積極的に無電柱化を進めていると言えます。目標とする地区で無電柱化を進めるためには、1000億円かかります。毎年10億円ずつかけて事業を進めています、このペースでは100年かかります。これを、何とかスピードアップをしようとして、国への補助の要望を出しています。できるだけ事業エリアを広げ、国の特別枠を取りながら進めているところです。地上器の設置等の課題もあり、いろんな方策を考えながら、必死に頑張っております。


広告付きのバス停を活用できないか

上田(コトブキ)

 屋外広告物に関して質問をさせていただきます。横浜、神戸、名古屋などの都市で広告付きのバス停が設置されています。設置許可だけ自治体から受け、広告を付けるかわりに、ハイグレードなバス停を無償で設置するものです。京都ではこうした動きはないのでしょうか。

福島

 基本的に道路上の広告物は禁止しています。バス停に広告物が付くという事は、京都では無理です。広告物の条例に関しても、今回の改正の中で協議をおこなっており、もし有効なのであれば、検討してみても良いかなと思います。

山崎

 上田さんが言われた停留所の広告は、ヨーロッパではよくある手法です。しかし、日本と違って規制が厳しく、建物上部に広告が設置できない代わりに、地上部に広告が認められているのです。

 日本では建物上部にも広告がたくさん存在しているので、そのままヨーロッパと同様に地上部の広告を導入するのではなく、全体のバランスを考える必要があります。


LRTとの関係は

上田

 路面電車(LRT)の話が進んでいると聞いているのですが、景観にかなり関わってくると思います。どうなっているのでしょうか。

福島

 LRTは他の部署の担当ですが、景観を考えていく上では一緒に考えていく必要があると思います。

 現在、社会実験的に多くの研究を行い、地域の住民の方々や団体の方と一緒に検討しています。東西に走る今出川通りの、出町柳から白梅町までの区間で、実験的に検討しているところです。自動車を中心に発展してきた交通システムの中で、省エネの問題や、自動車に換わる手段としての効果を実験してゆきます。

 もともと市電が走っていたところですが、昔のように石畳やレールが存在する形式では、自動車交通にも支障があると思います。しかし、歩行者空間を確保しながら、公共交通機関によって自動車の数を減らしていくことが可能であれば、景観上の問題としても非常にいい取り組みだと思います。


おわりに

山崎

 大変さには二つあると思います。一つは、1000年の間、都として文化的な中心であった歴史的な町を、どうやって保全・デザインしていく制度や仕組みをつくっていくのかという難しさです。

 それと、日本の都市計画はこれから、地区ごとに目標を定め、もう少し緻密に本当に住みよい場所を作っていく必要があると思います。そのとき都市計画よりも先に、景観という切り口で市民が理解する時代になってきています。景観によって、都市計画そのものを変えつつあるのです。

 景観法では私権の制限が可能で、本当の意味でのまちづくりにつながると思います。たとえば実際の15mの規制を行うと、都市計画で定められた容積率を目一杯利用する事は難しくなります。こういった難題に取り組んでいく大変さがあると思います。

 福島さん、今日はありがとうございました。

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