看板・広告から見る都市景観の課題
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ヨーロッパの屋外広告規制

 

ローマの屋外広告規制

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(出典:宗田好史『にぎわいを呼ぶイタリアのまちづくり』p.150より)
 
 次に話題を日本からヨーロッパに移して、ヨーロッパの屋外広告の現状を見てみましょう。

 これは宗田好史さんが出された『にぎわいを呼ぶイタリアのまちづくり』から抜粋したローマの屋外広告規制の事例です。規制手法だけ見ると日本とあまり変わらないのですが、その内容に注目すると日本とヨーロッパではものすごい違いがあります。もちろん景観規制や土地所有の概念も違うのですが、広告についてだけでも日本は現状よりもっと厳しく規制していくべきじゃないかと思います。

 ローマでは規制は1級から4級まで分類されていますが、右上図はおそらく2級規制の広告だと思います。文字の大きさは60cm以内、掲げる場所は元々の開口部の中か張り出しテントのみ。また店の屋号を書いたら店の種類を書いてはならないと決められています。つまり「レストラン」と書いたら屋号を書いてはダメなんです。

 一番規制がゆるい4級(4級だとアーチの外に出してもいいとされています)でも、看板の大きさは1メートル×1.4メートル以内です。

 しかも一番厳しい1級規制は市域の35%、2級が51%、1、2級で市域の85%が規制されています。大きい看板を出していい所は市域のわずか十数%しかありません。ですから制度や手法は日本と変わらなくても、それが及ぼす力は全く違うことが分かります。この厳しさがヨーロッパの常識なんです。

 フランスの場合も厳しさは同様で、看板文字は打ち抜き文字とされ、板に字を書くのは禁止というのが原則で「文字は透かせ」というのです。日本の場合、漢字は細かいから透かし文字にするのは難しいでしょうが。

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ローマの規制区域図(出典:宗田好史『にぎわいを呼ぶイタリアのまちづくり』p.146より、手書きは山崎加筆、原出典:ローマ市条例および都市デザイン課リストより宗田作成)
 
 一番濃い色で示されているのが1級規制の区域です。色が薄くなるごとに等級が下がっていくのですが、白が4級規制区域です。


ブランド店の並ぶコンドッティ通り

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 ローマへ行かれた方は知っていると思いますが、スペイン階段前のコンドッティ通りが高級ブランド街として賑わっています。昔はベネト通りが高級ブランド街として賑わっていて、三十数年前、私が初めて団体旅行で訪れた時は、ガイドさんが「ここは高級ブランド街なので、見るだけですよ」と言ったものです。当時はここは商店街なのでベネト通りが、一番規制がゆるい地区になっています。ところが今は、観光客が大勢やってくるスペイン広場付近に高級ブランド街が移ってしまいました。

 スペイン広場付近は規制が厳しいところです。

 フェラガモやプラダなどのブランド店が立ち並び、いつも観光客で賑わっているのですが、看板・広告が全く見えないことにお気づきでしょう。日本では商店街が賑わうためには看板・広告を大きくして人を集めなくてはということがよく言われますが、必ずしもそうじゃないことがよく分かります。文化観光が発達してくると、看板・広告がなくても商店街は成り立つんです。


フェラガモの店構え

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 プラダも店名は出入り口1カ所のロゴだけです。ブティックだとかは書いていません。フェラガモも同様で、出入り口の幕に店名が書いてあるだけです。これが規制された看板なんです。それでも十分商売が成立し、世界中からお客を集めています。


ベニスのマクドナルド

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 京都の屋外広告と言えば、マクドナルドの看板の黄色を赤に変えさせたことが話題になりますが、京都だったらもっと厳しくしてもよかったと思います。これはベニスのマクドナルドですが、建物にロゴマークのMを入れているだけです。ヨーロッパの古い町ではよく見られる光景です。もちろん町によっては、もっと派手にしている店もあります。

 ベニスのマクドもこれを受け入れているわけですから、これに比べると京都のマクドが黄色から赤に変えたからと言って、そんなに自慢することでもないなあと思います。


広告の掲出位置

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 これはパリの一角です。今日お見せしたいのは、建物に付随している広告位置です。ヨーロッパの突き出し広告は大体1階か2階より下で看板を出し、上階には出さないようにしています。日本とは逆の発想です。日本はどちらかというと近景に広告が見えるのを嫌って、広告を建物の上の方に出して風景の中に広告が見えるようにしています。

 ヨーロッパのやり方だと目線の低いところに広告がありますから、文字が小さくても読めるんです。ヨーロッパでは近景に看板などの文字情報を入れて、その一方風景は広告など経済的なものには使用させないという考え方です。風景を大事にする場所では、このやり方の方がいいのではないかと思います。


アントワープの街角−仮設広告

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 これは先週行ってきたアントワープの街角の写真です。広告の規制に厳しいヨーロッパでも、工事中の覆いでは大きなものを出すんです。その覆いには広告が出ていたり、写真にしたり、完成後の姿を描いたりと様々です。中には、その建物が壊れている絵を描いたりすることもあります。

 つまり、一時的な覆いは大きい絵や図を出すことが認められているんです。工事中の覆いはたいてい広告主がお金を出して、かなりきれいな広告を出しています。

 私の報告は以上です。ご静聴ありがとうございました。

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