看板・広告から見る都市景観の課題
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屋外広告物の景観における問題点

 

 今日は何が問題なのかを考えて、みなさんとディスカッションをしたいと思います。そこで私は三つの問題点を提起したいと思います。


ゆるやかな規制であること

 法が出来ても、法をどれだけ使うかに関しては自治体任せになります。拘束力の非常に弱い条例や要綱では、お願い行政でしかありません。大阪府の条例では壁面の2/3まで広告が可能になっているように、運用されている法の力は弱いものです。こうした状況の中で、広告を抑えていこうと思うと、技が必要となってきます。沿道のポール看板も、大阪府では20mまでは問題なく、それを10mに抑えるのは大変です。またデザインの質に関しては、色彩に対しては彩度などの制限を設けることができますが、実際のデザインの良し悪しは数値で表せるものではありません。そのため、好きにデザインされたものが出来てしまいます。

 次の問題として、単事業所への規制であって、決して全体への規制ではないということがあります。田端先生のお話の中にも、京都市の条例を作る時に、ある交差点での広告総量をカウントされているものがありました。これも一つ一つの広告の届出に対する指導の積み重ねで出来たものです。一つ一つは条例をクリアし、指導に従っていても、それらが重なり合ってくると、だいぶ状況が変わってきます。規制のゆるやかな状況で成立した交差点の景観と、抑えられた中で成立した交差点の景観には大きな違いがあります。単体の規制では、なかなか交差点の広告総量は規制できないという問題があります


種類の多様化・大型化

 私は大阪市交通局の全面広告つきのバスのチェッカーもしています。とにかくデザイン次第でどうにもなる世界です。最近は地下鉄にもあります。印刷技術の向上や、素材の進化による大型化など、技術進歩による影響があります。

 また近年、コンピューターの弊害として、専門のデザイン教育を受けた人でなくても、誰でも簡単に平面デザインができるようになってしまいました。デザインにおいては、文字だけでなく写真やイラストもあります。文字だけのレイアウトは結構やりやすいのですが、そこに写真とイラストが加わると、それらの組み合わせに技が必要になってきます。現在ではコンピューターが進歩することで、グラフィックソフトを使って素人でも簡単にデザイン要素の組み合わせができるようになり、混乱がおこっています。

 ビルの壁面広告やラッピングバスでもこういった問題が起こってきています。最近ではフロアーにもラッピングが付き、駅改札を出たところの床全面にマンションの広告があったりして、少しぞっとします。

 その他に動画広告もあります。渋谷の交差点には、スーパービジョンと言われるものが六つも七つもあります。テレビのように映るものもあれば、文字が並んでいるだけのものもあります。またLEDが発達してきて、きれいにグラデーションなども表現できるようになりました。立体広告も簡単に作れるようになってきました。自動車のディーラーの建物の上などに、大きなバルーンが置かれていたりします。

 全国に展開する大型チェーンの企業が、様々なCIをきっちりと行い、色彩やサイズなどを街のイメージに関係なく導入してしまっています。また企業合併による混乱もあって、ピュアなグリーンのミドリ電化さんには、合併後にえんじ色とペパーミントグリーンが加わっています。合併のあと、どちらの色を守っていくのかという問題があり、金融関係などは新しい色を作ったりするのですが、そうでもないところは両方のCIが入って混乱していきます。

 工事中の仮囲いやスーパーグラフィックなども加えていくと、本当に広告の種類が増えてきています。

 広告の多様化、大型化ということが二つ目の問題なのです。


広告効果の不明瞭性

 広告効果が不明瞭であるという問題もあります。

 新聞やチラシ広告においては、広告会社が部数と効果との関係についてのデータを持っていますが、屋外広告物に関しては、アメリカでの通行量による評価の試みがあるものの、その効果の検証はなかなか困難です。効果が不明瞭なことを原因として、とにかく一杯広告を出す、またとにかく大きくするという現象が起こります。またCIによく見られますが、現場の状況と関係なく四面広告を付けようとする。たとえ裏が山でも住宅地でも、全国共通ということで、現場の状況と関係のない広告が出てきます。

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