分科会のテーマについてですが、感性のデザインと参加のデザインを包括するキーワードとして「共振」を思いついたわけです。
都市環境を構成する様々な要素が共振する。人々の感性と共振する。そしてコミュニティとデザインの共振。そんな「デザイン原論」みたいなイメージがあったわけです。
さらに欲張って、時の流れに耐える生命を持ったデザイン(デザインされた環境)をつくろう、という思いをこめて「生き続ける」という言葉を加えました。
このようなテーマに、講師の皆さんは見事に答えてくださいました。竹原義二さん、辻本智子さん、乾 亨さん、菅 博嗣さんの4人です。皆さんの発表を再度ここでご紹介しながら、「共振し生き続けるデザイン」について、私が考えましたことをお話します。
分科会の記録を作成しながら、皆さんの発表された事例が「つくるデザイン」「つかうデザイン」「そだつデザイン」の循環する時空間を形作ること。さらに「あそぶ」ことが重要な動機付けになっていることに気がつきました。
そして、「つくる」「つかう」は「共振する」に深く関わり、「つかう」「そだつ」は「生き続ける」に関わるような気がします。「あそぶ」は、すべてのプロセスで原動力となる、デザインの力ではないかと思いました。
以上のような、イメージを図式化すると次の図のようになります(図、「共振し生き続けるデザイン」のダイアグラム)。
講師の皆さんのお話は「つくる」「つかう」「そだつ」のいずれかに力点が置かれていたり、振り子のように行き来したりするわけですが、全体としてみればバランスの取れたお話になったかと思います。では、皆さんのお話を、私なりに整理して報告します。
また「つかう」という面では、住まい手が、感性やあそびを通じて空間を獲得していく有り様の説明がありました。これはある意味で、作り手の作為が消える瞬間であるとおもいます。
「そだつ」という面では、人間が育てるというよりも、自然のスローな時間で環境が育っていくということでした。
発表は、大人が花を飾ることをまちのイベントとして遊ぶ、そして大人の付きあいの場を創っていくという事例でした。まちを使って遊んでいると、その結果まちの風景が育っていくのだと、私は受け止めました。
使う人たちが自分たちの暮らしをイメージして場所を作り、育てるというお話だったと思います。例えば、公園を作る話だと、すぐに「何を作ればいいのか」という「モノ」に集中しがちなのですが、そういう発想ではなく「本当に必要なのはモノなのか」という問い掛けから始め「本当は生活のスタイルやシーンを求めているのではないか」というお話でした。
では、各々の発表を、画像を見ながら説明していきます。
つくる、つかう、そだつ、あそぶ
竹原義二さん
竹原さんの発表のキーワードは、まず「つくる」でした。素材・風土・場所・身体という4つの視点からもの作りをしているように、お見受けしました。辻本智子さん
次の辻本智子さんの発表は、大人が遊びをつくる→まちを使う→風景を育てるという内容でまとめられると思います。乾亨さん
続いての乾亨さんは、20年前に手がけられた集合住宅の追跡調査をもとにしてお話されました。京都の洛西にあるUコートというコーポラティブハウスで、みんなが集まるような中庭を作り、自分の家に帰るには必ず中庭を通って顔を合わせるようにしたということです。中庭には豊かな緑環境を作り、子ども達はそれを使いこなしたり遊んだりして育ってゆきます。菅博嗣さん
最後の菅博嗣さんの発表は、横浜市の「まち普請」という新しい形の公共事業の報告でした。これは住民団体に事業費を渡して、住民自身が設計・施工するという事業です。菅さんがコンサルタントとして参加した事業を報告していただきました。
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