見えた。これがデザインの力だ!
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〈竹原義二氏の発表より〉
つくる、つかう、そだつ

 

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『無有』学芸出版社
 
 これは竹原先生がこの春に出される
『無有』という本です。竹原先生のお考えがよく分かりますので、ご関心の方はお読みください。


つくる

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(C)竹原義二
 
 これは、愛知県で手がけられた住宅です。

 まず「つくる」段階のお話として、中庭を中心にして2つの棟があるとの説明がありました。2階建てで屋上庭園や菜園もあります。Uコートと同じように真ん中の緑地を建物が囲むプランになっています。

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(C)竹原義二
 
 構造は木造を基本にしています。ただし、屋根部分は軽く薄くするために鉄骨にしたそうです。

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(C)竹原義二
 
 この家が建っているロケーションです。大きな地形として山並みに囲まれており、まわりは田んぼです。山との呼応、連続感を表すために、斜面に沿う形で屋根を作っていると説明がありました。山のうねりが連続して建築にもつながってくる、そうするために屋根のデザインはこんな形になってくるのだろうと思います。

 また、田んぼの中に住宅を入れ込むプランなので、住宅がふわりと水面に降りたって、映り込むようにしたというお話でした。

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(C)竹原義二
 
 骨組は木造です。建築の構造を意識的に見せています。

 上の屋根は軽い鉄骨造になっています。建ち上がる方位を見ながら材料を決定していくやり方をしたそうです。

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(C)竹原義二
 
 これが山並みと屋根の関係を表している写真です。風土の中におさまった建築と言えるでしょう。

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(C)絹巻豊
 
 夜になると、家の水面に映り込むのです。

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(C)絹巻豊
 
 住宅内部です。土間が大きな意味を持っており、室内と地面との距離感をなくそうとしました。こうすることで、内と外がつながっていく…土間が敷地の外、庭、内部をつなぐ役割を果たしているというお話でした。

 しかも、土間は家族が必ず通る動線になっており、家族をつなぐ役割を担っています。

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(C)絹巻豊
 
 中庭です。外に抜けていく風景です。

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(C)絹巻豊
 
 住宅内部です。両側に屋外が同じ高さに見えるという連続感があるわけです。

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(C)絹巻豊
 
 この家では浴室や厨房なども、土間から靴のまま上がっていくスタイルになっています。外と内が「靴を脱ぐ」段階を経ないでつながっているのです。

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(C)絹巻豊
 
  2階もテラスや窓が外へつながる仕掛けになっています。身体との呼応という点で、窓の高さをとても意識したとのことです。子どもが立ち上がった時の手すりの高さとか、身障者の身体感覚から窓の高さを決めていくなど、窓の高さや位置を住まう人に合わせることで、生活の仕方が変わってくるとのお話でした。

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(C)絹巻豊
 
 軽い屋根と壁の間にすき間が、左上のような窓になります。

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(C)竹原義二
 
 手前に見えていますが屋上には菜園があり、断熱効果で、下の部屋の室温を緩和します。

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(C)竹原義二
 
 窓が外へつながるひとつの仕掛けになっています。

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(C)絹巻豊
 
 建物と屋根の形です。この建物のコンセプトは、昔の農家の平面プラン(土間、中庭)やその生活様式、行動パターンを基礎にして、その上に現代的な箱の建築をのせて、さらに軽い屋根をかけて雨水を流していくということでした。


つかう

 「つかう」というキーワードは、子どもの視点から説明されました。施主のお子さんは、土や土間のような場所が大好きで、水を運んで泥団子を作って遊びます。また、土間と接する床でお昼寝をします。

 子ども達は水や土に囲まれた環境に親しみながら、空間を学んでいきます。建築の中で物語を作りながら、自分の育っていく場所を覚えていくのです。

 2階のテラスなど、ちょっと危ない空間もあるわけですが、大人との関係で「安全」を学んでいます。居間から子どもの動きが見える間取りで、子どもを見守る作りになっているわけです


そだつ

 最後に「そだつ」というキーワードでは松尾芭蕉の「造化にしたがいて四時を友とす」(造化=神や自然、四時=四季)という言葉が紹介されました。そんなにデザインしなくてもいい、季節を取り入れると新しいデザインが待っているという事であります。

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