休憩時間に提出していただいたご意見・ご質問は様々でしたが、後半の討論では議論が交錯しないよう、論点ごとに絞った討論にしていきたいと思います。
事前のご案内では論点として(1)都市計画は変わるのか、(2)デザイン規制をめぐって、(3)都心の15m規制と職住共存地区のあり方、をあげていますが、必ずしもこの論点だけではうまくいかないかもしれません。
まずは井口さんが報告された「京都市の新景観政策に対する意見書」から始め、続いて久保さんの報告から「都市計画は変わるか」を論点とします。丸茂先生のお話もここに含まれるかと思います。そして3番目に「職住近接地区のあり方」あるいはそのデザインをめぐって。最後はデザイン基準に関わる問題をめぐって。これは、デザイン基準だけではなく、高さや壁面線も含んでの話になろうかと思います。
まずは「京都市に対する意見書」に関連して何かご意見おありでしょうか。例えば、ストック重視についてとか。桐田さん、いかがですか。
桐田(歩いて暮らせるまちづくり推進会議):
ストックという視点から考えると、まず地域の人は芝居の書き割りのような町はそもそも望んでいないんです。自分たちが生活している町ですから、「生きている」ということを反映したまちづくりを考えたいんです。もちろん町中には残したい立派な町家もありますが、昭和初期に借家として建てられて老朽化した建物もいっぱいありまして、それをストックとして残すことに意味があるのかという疑問があります。
それから「まちなみ」という言葉がよく出てきますが、「まちなみ」はそれを形成した時代の条件が積み重なって出てきたものですから、今の経済システムや社会条件の中での町並みとはどういうものだろうかと考えてしまいます。ストックも今の社会システムの中で考える必要があるだろうと思います。
また、マンションをストックとして考えられるかという問題もあります。ここ10年の間に建てられたものは大急ぎで工事をした、いわゆる「売り逃げ」マンションが多いですから、躯体そのものがマズイものが多い。例えば、型枠の養生期間を取っていない、シャブコンを多用した等で、設備より先に躯体が傷む建物が多いのです。
マンションに住んでいる人は新景観政策のもとで建て替えられるかを気にしていますが、建て替え時期以前に躯体の劣化が顕わになる恐れがあります。そんな建物をどうやってストックとして大事に維持していけるか。これは町並みストックというより、自分たちの資産のストックの価値の維持ということになりますが。
井口:
今、町並みストックと資産としてのストックに分けてお話しいただきましたが、ここで私たちが考えたストックについて、少し補足説明させていただきます。
都心部の職住共存地区に限って話しますが、今の町並みをそのままストックとして引き継ぐのかと言えば、誰もがそうじゃないと思っていることでしょう。これからどんな風にストックを作り上げていくかが大事なのであって、これから我々が新しい京都の形をつくっていくのだと考えています。
どんな結果になるのかは、まだはっきり言えない。どんな形が望ましいかはそれぞれの個人が持っているでしょうが、それがみんなで共有できる形かどうかはこれからの問題だろうと思います。そして、今おっしゃった町並みとしてのストックを作ることは重要なテーマです。
また、マンション問題については建て替え促進が大きなテーマとしてあげられています。政策的には既存不適格になるマンションの居住者にどう応えるかが問題ですが、建て替えにちゃんとした手当をすることが書かれています。しかし、それだけだと今までのスクラップ&ビルドのやり方と変わらないのではないかと、我々は考えています。我々は建て替えではなく、残して住み続けることも考えたい。もちろん、耐震的な問題、設備の劣化、構造不良など様々な問題があることは承知していますが、それらは技術的に解決できる問題です。むしろ、モノを残していく思想がこれからの建築やまちづくりにとって大事なテーマではないかと言いたいのです。実際には「あんなマンション、あっては困る」というのは存在するかもしれません、そんなのは建て替える必要があるでしょう。
ストックと言うとき、三つのテーマがあるように思います。
(1)悪いものは撤去するか改修する。
(2)良いもの、悪くないものは残す、保存する。
(3)もっと良くするために新しいものを作る。
この三つのテーマがこれからの都市を考えていく上でのキーワードだと思います。何時の時代にもこの三つをしっかりと考えていくことが、良質なストックに結びつくと考えます。
意見書に対して
はじめに
司会(榊原和彦(大阪産業大学)):
ストック重視について
司会:
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