都市の魅力アップの手法について
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取り組みの経緯

 

 「今日は魅力ある都市の特質とその魅力アップ」というテーマでお話をさせていただきます。

 今から7年前の2000年9月29日のJUDIセミナーで「行ってみたい大阪」という発表を、船場創生研究グループという名前で行いました。その時は今日のメンバーに2人を加えてお話をさせていただきました。5人で行った活動の発表で、この部屋に80人近くの人が集まってくださいました。今日説明する活動もその頃に始まったものです。

 これが7年後の今、どうなったのかをお話させていただきます。


魅力ある都市の特質

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 我々がこれまで議論してきた中で、魅力ある都市の特質は、

 「多様な人が関わっているまちがおもしろい」

 「多様な居住空間・居住スタイルがあるまちが面白い」

 「建物と建物の間の空間が面白い」

 「多様性に富んだまちは面白い」

という4つではないかという結論に至りました。

 今日はこの内の「多様な人々が関わるまち」というテーマについてお話させていただきます。

 そして、その後にどういう風にすれば面白いのか、どうやっていけば魅力アップに繋がっていくのかですが、それについては
 「寄り合いまちづくり組織」

 「ともかく実現」

 「自前の魅力発信メディアづくり」

 「壁を乗り越える」

という4つの視点が重要だと考えてきました。今日はそのうち3つを説明します。


都市大阪創生研究会の設立

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 都市大阪創生研は1998年に設立されました。「大阪の未来とそこに至るべき道を考える場所を設置しましょう」という鳴海先生の呼びかけのもとに、情報交換と共同研究によって大阪の未来に貢献する成果を得ることを目的にスタートしました。この研究会には民間企業8社に大阪市さんなどを加えてスタートしました。

 最初に、大阪の中で埋もれた魅力がありそうな場所について研究しました。戦前に区画整理した場所、戦災に遭っていない場所、江戸時代の浪花百景に描かれている場所を重ね合わせたときに浮かび上がってきた17地区に対して、ここには何か魅力が埋もれているではないかと考えました。そして特に船場と大川周辺を深堀りしていこうとワーキングをスタートさせました。


船場ワーキングから三休橋筋への活動へ

 その中で、船場ワーキングに私たちは関わっていきました。鳴海先生は「都市には行ってみたいという魅力に溢れていなければいけない。歴史的な中心部が持っている魅力が大切であり、船場はそれを持っている。しかし船場は転換期を迎えている。歴史的な骨格を保ちながらも、新しい機能を導入いくことが必要である」とおっしゃっています。新しいまちづくりには企業や行政、そして市民の持っている真摯なエネルギーを結びつけることが必要で、そうしたネットワークがこれから重要だと考えられます。

 そこで私たちは一つの提案をしました。空間を作っていくときにオーナーや建築関係の人たちに任せきってしまうのではなく、そこにアイデアを結集して一つの空間を作っていかなければならない。それらを公共がバックアップしていかなければならない。こうしたことを重ねあわせていくことで、一つのアイデアが多くのアクションを連鎖的に生んでいくのではないか。これが研究会のひとつの結論です。

 そこから一部のメンバーで、ワーキングで扱った三休橋筋を対象に活動をスタートしました。同じくこの研究会から、今日、ご紹介する絵はがきでの魅力発信活動も展開していくことになります。


ワーカーもプレイヤーである船場

 研究会の中で船場の人口について調べました。

 船場の居住人口はどんどん減っています。最新データで船場の居住人口をみると、大阪市全体では人口密度が120人/haであるのに対して、船場には18人/haしか住んでおらず、さらに減少が続いています。一方で昼間人口に関しては、大阪市全体の170人/haに比べて1500人/haも働いており、またその数字は増加していることがわかりました。

 居住人口が減少しているけれども、大きな昼間人口が存在する都市であり、ワーカーもまちのプレイヤーの一人であると考え、どういうふうな連携をしていくのか、どのようにまちに関わっていくのかということが大切だという結論を導き出したわけです。


様々な人たちとの交流

 この研究の後、船場を深堀りしようということで、まずは2001年から堺筋の研究を行いました。このときは成果を地元に発信するために地元の方々と交流していく中で、船場にはまちを活性化しようと活動している多くの方がいることがわかりました。

 さらにその研究を深め、これまでにワーキングの中で出てきたいろいろなアイデアを整理し、大阪のまちづくりの基本ユニットとして以下の三つを提案しました。

 (1)「公共空間の新しい活用方策」

 (2)「既存ストックを活用した活性化策」

 (3)「地域から起こる新たな文化的活動」

 さらにこの中で4つの具体的な研究テーマを設け、それらの社会実験までワーキングの中で行いました。

 研究会の10年近い活動の中で、多くの人たちと交流し、都市との関わり方が深まってきました。さらに都市に多くの人たちが関わっているということを知りました。現在は場所を変えて野田福島でフリーペーパーの発行なども行っています。

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