都市の魅力アップの手法について
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質疑応答

 

 

活動を仕事にする社会的な枠組みは?

柴田(DAN計画研究所)

 大阪ええはがき研究会の活動に学生時代から関わって、今年で6年目になります。都市の魅力アップにつながる社会的な活動ではありますが、鳴海先生がおっしゃったように楽しいから活動を続けています。

 こういった活動は、はじめは自分たちで好きなようにやっていますが、4年目くらいから「こんなこと出来ますか」と問い合わせがきたりして、社会的ニーズがやってきます。それに応える活動が求められるわけですが、メンバーは本業が別にあるからなかなか本腰を入れて活動するのは難しい。これはええはがき研だけじゃなく、他のまちづくりNPOの活動にも言えることです。

 これを乗り越えるには仕事としてお金がでる枠組みが必要だと思うのですが、それについてどうお考えになるか、鳴海先生にうかがいたいです。

鳴海

 面白いし意義もあるから取り組むわけですが、参加する人も本業があるあるから、継続的に活発に展開することが難しくなるのは事実です。大学のクラブ活動のように新人が入ってきて表の活動を引継ぎ、OBができる範囲でサポートするというしくみも考えられると思います。こういう仕組みをつくると、僕の経験だと10年ぐらいは続けることができます。

 もうひとつはおっしゃるように、仕事にする方向があります。これについては、NPOとか、コンサルタントが仕組みを作れると思います。


活動資金はどこから出るか

難波(兵庫県)

 今日の報告で活動している地元の人々は、我々が知っているまち協や自治会の人々とはちょっと違うという印象ですが、既成の組織との関係や連携はあるのでしょうか。また、まちづくり活動について行政から補助金が出たりする事例はよくあるのですが、そちらの活動資金はどうなっていますか。

篠原

 まず自治会やまちづくり協議会についてですが、船場にも町会や自治会があり地元を代表する組織ということになっていますが、何分人が住んでないこともあって活動の実態はほとんどありません。ある種の権威はあるようですが。

 僕らと一緒に活動しているのは、一部居住者もいますが、主にそこで商売をされている人やビルオーナー、僕らのように職場が船場にある人たちです。ですから、町会に入れない立場の人たちが「船場をなんとかせなアカン」と頑張っているんです。まち協のように条例や都市計画上の組織にはなってなくて、全く自主活動としてやっているのが実情です。

 活動資金については、グループによってそれぞれ事情は違うでしょうが、例えば三休橋筋愛好会について言うとお金に困ったことは一度もありません。「どうされているんですか」とよく聞かれますが、本当です。コンペの賞金もあるし、最近では講演会でよく声がかかりますのでいただいた謝礼を「愛好会貯金」で蓄えており、増える一方です。現在数十万円ほどあります。三休橋筋のために何らかの形で役立てたいと貯金している次第です。ようは人件費ゼロなら活動資金がなくてもある程度の活動はできるというわけです。

 もうひとつの絵はがき研のほうも、イベントの時の数千円の負担ぐらいで、基本は「自分たちが面白いからやる」という姿勢です。ただ、いろんな所と連携して活動をしている中で「せんばGENKIまつり」のような規模の大きなイベントになると桁の違うお金が必要になってきます。その場合は別のプロがやってくれて僕らにお金の負担が回ってくることはありません。そういう役割分担が出来ています。

岸田

 僕らの活動は、まずお金がかかることは企画しないのが原則です。できないことを企画すると疲れるので、できることだけ企画します。それを確実にやっていくから楽しい、だから続く、これの繰り返しで活動しています。あまり「あるべき都市像」と大上段にビジョンを挙げないのがいいのかなあと思っています。

 それと先ほど柴田さんが言われた「3年目からのマンネリ打破」についてですが、僕の解決策として「常に新人を入れるようにする」をお薦めします。当初からやっているメンバーはマンネリ化しても、初めてその話を聞いた人には面白いかもしれない。そういう人をメンバーに入れて、絵はがき研はどんどん若返ってほしいと思います。


地道な活動に期待

玄道(“FM COCOLO”関西インターメディア株式会社。前・歴史街道推進協議会)

 今日の発表はどれも感銘深いものでした。特に野田福島の報告は地域資源をいろんな切り口・視点で楽しく活動しながら発掘することが一つのポイントだと思いました。

 私は先週、シンガポール政府観光局・シンガポール航空共催のプレスツアーに招かれ、シンガポールに行って来たのですが、“賑いのあるまちづくり”の視点から、今日のテーマ「魅力ある都市」に関係すると思われますので、少し紹介いたします。バルーンに乗って中心市街地のパノラマを楽しみましたが、空中からの眺めは緑深い土地に新旧の建物がバランス良く配置されている都市、といった感じがしました。シンガポールも近代的な高層ビルがたくさん建っていますが、基本的に今日の文化を形づくってきた古い建物を壊さず、古い町並みが大事に残されているように思いました。緑豊かな都市環境(景観)をベースに都市計画から色彩・景観計画までよく練られていて、この国の提供するクオリティの高いツーリズムや金融サービス(施設と機能)を求めて世界中から人々がやって来て、まちの賑いが生まれています。

 2015年を最終年度とするツーリズム戦略が政府観光局によって明確に提示され、目標達成のために計画的なまちづくりが着々と進んでいます。シンガポールのケースは国や行政が計画を主導し、外資を含めた民間が参加する形のまちづくりです。

 2000年11月、私は関西プロモーションのためシンガポールを訪問したことがあります。シンガポール川のウォーターフロント再開発で知られるクラークキーとかオーチャード通りなどは6年前と変らず大変賑わっていましたが、今回、とくにマリーナベイ周辺の景色が見違えるほど美しくなっているのには驚かされました。

 移設された“マーライオン”のある公園から河口の向うに南国のフルーツ、ドリアンを模した二つのドーム“Esplanade Theaters”(劇場)が眺望できます。この自然界の造形はばらばらに点在している高層ビル群を“吸引”するような形で周囲の景観を総体としてまとめ上げるような効果を上げていて、新しいランドマークとなっています。近くではアジア最大規模の観覧車の建設が急ピッチで進んでいます。また対岸ではホテル、カジノ、ミュージアム、水族館などの複合レジャー施設の建設の槌音が聞こえています。同じように経済発展を遂げ、現代国家への道を歩みながら、シンガポールは美しい都市景観を守り、素晴らしい国づくりをしていると感心いたしました。

 そのようなことを感じながら大阪に帰ってきたのですが、私の職場(大阪ワールドトレードセンター内)のある大阪南港がどうも閑散としているように思えて仕方ありません。先ほど鳴海先生がプロジェクト中心でやってきたのがつまづきの原因と指摘されましたが、今まで日本のまちづくりは大金がちぐはぐな形で使われてきたように思います。それにしてもシンガポールと大阪南港のこの大きな落差は何なのでしょう。まちづくり、国づくりの構想(グランドデザイン)と計画、そして計画実現のための戦略(前提が大きく変れば、修正の努力も含めて)といったことがしっかり担保される仕組みづくりや人材の育成に本気で取り組まなければ、また税金のムダ遣いが繰り返されるのではないかと心配です。

 今日の発表はお金をかけずに自分たちのまちを見直すという視点のお話でしたが、やはり大阪の都市の魅力は「他人任せにしない」、そういう地道な活動からしか再生できないのかなという感じを強く持ちました。


一人から始めるまちづくり

前田(学芸出版社)

 最後に鳴海先生のお話に出た「手押し車アーバニズム」の補足しておきます。

 ユニオンスクエアで最初に行われたグリーンマーケットは手押し車ひとつだったことから名付けられたもので、それが起爆剤となって大規模なグリーンマーケットに発展し、まちににぎわいが戻ったといういきさつがあります。一人からでも始められるまちづくりのシンボル的な言葉として「手押し車アーバニズム」と呼ばれるようになりました。ひとつのきっかけが、まちを変化させることもあるのだという出来事で、私たちもそういうことをやっていかねばならないのだと思います。

 今日はセミナー運営にいろいろ不手際がありましたが、みなさん最後までお付き合いいただいてありがとうございました。では今日はこれで終了いたします。

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