環境共生と農のまちづくりへの挑戦
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自分自身の意識の変化

 

 私自身エコ村に関わるようになってから、従来よりもエコを意識するようになりました。大学へ歩いていったり、自転車に乗る機会も増えました。現地である近江八幡に行くときも、自動車ではなく公共交通を利用することがほとんどです。

 結局は、一人ずつの意識の転換を図っていかないことには根本的な環境問題の解決にはならないのでしょう。人々はこのようなプロジェクトに参加しながら変わっていくことが大事なのかなと思っています。

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『地球家族』表紙
 
 僕がエコということを考えはじめた一つのきっかけは、『地球家族 世界30カ国の普通の暮らし』(ピーター・メンシェル著・TOTO出版)という写真集を見てからです。学生の頃に読んでとても感銘を受けました。ピーターさんは「家の中の物を全部、家の前に出して写真を撮らせてください」というすごい企画を考えられたんですね。企画を考えるのは簡単ですが、それを実践されたのはすごいなあと感心します。

 15年前の東京の家の写真では、大量の物であふれています。学生の頃の私は、この大量の物に囲まれた暮らしが特におかしいとは思いませんでした。経済が右肩上がりに成長していく時代でしたので、大量消費型のライフスタイルは日本では普通というイメージでした。

 その一方で、ショックを受けたのは当時のブータンの家の写真です。家の中の物を全部出しても、ほんの少ししかありません。目を引く物は仏教関連の祭具ぐらいで、あとは農耕具が少しあるだけです。学生の私は、自給自足とはまさにこのことだとハッと気がついたわけです。

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 昨年、エコ村のメンバーがブータン行きを企画されまして、7人の若者と一緒にブータンの田舎に行って来ました。

 実際にこういうところに行ってみると、日本が失ったものがよく見えてきます。例えば食事風景ひとつとっても、日本なら家族がバラバラに食べているのが今では当たり前の状況かもしれませんが、ブータンでは食事時には家族だけでなく隣近所の人たちが集まってくるんです。必要なものだけを食べ、さらに分け与えるという文化がまだブータンには残っているんです。日本では、個人化、個別化の時代だと盛んにいわれますが、日本が失ってしまったものはやはり多いのではないかとブータンで考えた次第です。

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 価値観を変える必要があるということに関連して、人間の暮らしとはどうあるべきなのかを考えたこともあります。その一例としてブータンが2005年に初めて国勢調査をしたときの結果を紹介します。

 ブータンでは調査項目の中に「あなたは幸せですか」という質問があるのです。それに97%が「とても幸せ(Very happy)」「幸せ(Happy)」と答えています。都市部、田舎とも同じような数値でした。日本ではどうでしょうか。この国ではGNPではなくGNHを目指しているそうで、HとはHapinessのことです。最近ではHapinessではなく、Contentedness(今あることに満足)という用語を使おうとしているそうです。

 国の機関であるCBS(Center for Bhutan Studies)がGNHの定量化を目指しています。これは、大量消費の社会のあり方を変えていくには精神的な豊かさを考えていかねばならないという観点から、特に西洋の国々から大変に注目されている取り組みです。

 ※ブータンについては日本の原風景を探る−ブータンから何を学ぶか参照。セミナー委員会注記。

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