環境共生と農のまちづくりへの挑戦
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上之・辻之地区の地域環境資産を活かした住民まちづくり活動

 

まちづくり活動の経緯

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 地域環境資産を活かした住民まちづくり活動についてということで、まちづくり活動がどのように発展してきたのかということをご紹介したいと思います。

 上之・辻之地区は堺市中区の泉北ニュータウンの泉ヶ丘地区の北側にあります。市街化調整区域の白地になっています。丘陵端部ということで尾根筋が3本あり、その間に谷筋が3本あり、水系を中心にまちづくりが発展してきました。

 平成12年からまちづくりが行われてきた様子を説明します。午池の堤防に亀裂が走ったことが発見され、堺市に相談に行ったところ、老朽ため池改修事業を使って改修をしてもよいということになりました。そしてため池を中心としたまちづくりも考えてみようということになり、太田之内土地改良区と上之自治会で協議会をつくりました。そしてまずまちづくり講演会やセミナーという形で大学が関わりました。

 堺市の方では老朽ため池改修事業であるけれども、大阪府ため池オアシス整備事業と同じような、地域ぐるみため池保全活動推進モデル事業というまちづくりを同時に考える事業を立ち上げてくれました。そして午池水系ため池保全協議会の発足に際しては、堺市が仲介に入って川下の辻之地区もいっしょになり、大学と市が入った三位一体の協議会が結成されました。ワークショップ形式で議論していくとともに、先進事例として滋賀の甲良町に視察に行ったりしました。われわれ大学も地域の基礎情報を教えるということも行いました。

 事例視察などを通して、午池水系ため池保全協議会としてきっちりとしたまちづくりの検討を行う必要が高まり、一年目は数回のワークショップ形式で進めていたものを、全体に上げる意見を整理するための事務局と全体会議というものを組織化して、話し合いを定例化していきました。さらに地域の方にアンケート調査や、ため池整備を行っている稲美のため池ミュージアムの視察も行いました。そして地域で継続できる活動計画というものを考えていきました。

 地域の中の環境資産として優良な風景がどこにあるのかも調べました。居住者の方々にカメラを渡して自由に撮影していただき、撮影場所等を整理してみました。水がある風景やそれに加えて斜面林や山並みが見える風景が良いといったような風景解析を行いました。これによって地域の環境資産としてどんな風景があるのかを共有していただきました。さらに実際に現場で確認してみようと水路ウォッチングを行ったりしました。

 このような勉強会を続けていく中で、もっと行動したいという気持ちも高まってきて、3年目になって農業を中心にがんばるグループ、花や緑で新たな魅力づくりをしていくグループ、情報発信をしていくグループが結成されました。さらに堺市まちづくり支援課の仲介により、堺市都市部の湊駅前商店会との交流活動も開始しました。

     
     「陶の里でくらす〜ふるさとづくり〜」
      美しく、豊かな自然を守り、活かそう、伝えよう。
      緑と伝統文化を育み、次の世代に受け継いでいく、
      人情味豊かなふるさと陶の里をめざして。。。
 
 グループ活動が始まる際には、皆で共有できる理念を持って活動しようということになり、「陶の里でくらす−ふるさとづくり−」という理念を作り、常に理念と自分達の活動を照らし合わせながら活動してきました。


活動の内容

 実際の活動を紹介します。午池の埋立地の計画として境界の無いエッジレスな空間を作ろうということになりました。こうした計画の際にも、資料だけではあまりよくわからないので、逐一現場を確認しながら整備計画を作っていきました。また、湊地域との交流として遊休地を活用した田植え体験なども行ってきました。逆にお返しとしてクルージングなどの体験もさせていただきました。

 またこうした活動を続けていくために、自己財源を集めようと農産物直売会を実施しました。これ以降、年一回11月の最終週に実施しています。さらに、地域のことをもっとわかってもらおうと、「陶の里めぐり」というタウンウォッチングを繰り返し行っています。18年度からは遊休地でBDF(バイオディーゼル燃料)事業により菜の花を植えています。また堺市の都市緑化センターの支援を受けながら花壇も整備しています。

 こうした活動は年4回の「陶の里だより」で全戸配布してお知らせしています。さらに昨年度には陶の里散策MAPを作って、地域資産を紹介していこうという取り組みも始まっています。


地元住民、行政、大学の果たした役割

 大学とコンサルタントは地域環境資産の発見や地域活動計画のアドバイス、コーディネートが役割になってきます。

 行政は他地域との連携の仲人役となること、および各種の事業制度を組み合わせて継続的に地元を支援していくことを求められます。例えば上之・辻之地区では、老朽ため池改修事業の他に、まちづくりの活動支援するための地域ぐるみため池環境整備事業を6ヵ年、堺市の花と緑のわがまちモデル事業などの適用を受けて進めてきました。

 農業の活性化に関しては大阪府のBDF(バイオディーゼル燃料)利用推進事業、遊休農地を用いた市民農園利用についての補助事業なども動きだしています。

 ため池の改修後には新たな埋立地の修景整備という課題が残っているのですが、大阪府の事業は終わっても堺市の親水コミュニティ活動支援事業などを適用しながら進めていくことになると思います。来年度地域が盛り上がれば金岡地区のように地域全体の土地利用ビジョンを考えるということになってくるかもしれません。

 地元住民の方々は、地域環境資産を再発見すること、判らないことや不安に思うことは常に現場に出向いて確認および学習をすること、既存組織との連携を図りながら行動力を十二分に発揮するという役割を担っていました。

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