環境共生と農のまちづくりへの挑戦
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

 

エコ村について

 

エコ村が今の宅地計画に至ったプロセスについて

金澤(大阪産業大学)

 エコ村について質問いたします。

 エコ村は大変面白い報告でした。特に都市デザインだけでなく暮らしの提案もされていて、そういう仕組みづくりも面白いなあと思いました。

 ただ、住まいや暮らし方ではイメージがふくらんでいますが、僕ら都市デザインに関わる者としては宅地の計画が気になります。21世紀が環境の時代ならば、21世紀の宅地造成や村づくりにどう影響してくるのかが一番関心のある点です。

 そこで、宅地開発計画が今の計画になったプロセスを教えてください。

 今の計画だと、宅地や道路は直線で区切られているパターンになっています。しかし、自然界に直線の形態はなく、全て有機的な形態というか曲線が多いのです。例えば河川の形も人間が作ると真っ直ぐになりますが、自然の川だと曲がっているわけです。

 そう考えると、エコロジーの形を宅地で表すと、どんな形になるのかと気になりました。歩いて楽しい道路も直線の形になってしまうのかどうかです。

福田

 今はプロセスの具体的な変遷を整理して、なぜこの形になったのかをまとめている最中です。

 当初理想として描いていたのは、先生がおっしゃったようにカーブがあって自然曲線の道がある村です。しかし、実際には行政との協議の中で今の形に落ち着いています。

 あの地域は市街化調整区域の農振の地域でしたから、まずその適用をはずして開発許可を取る必要がありました。その後、エコ村の理念を実現しようとした経緯の中で、県や市の住宅局と農政局との両立を図っていくのが大変難航したといういきさつがあります。両者と協議を続ける中で、今の形になったということです。


食料、エネルギーのエコ度について

濱(大阪ガス)

 私はエコ住宅や環境共生について研究をしていますので、エコ村の話を興味深くうかがいました。

 ところで、エコ村では食料やエネルギーの自給率向上などによって、温暖化対策としてのCO2をどのくらい削減できるか、量的な目標はありますか。

福田

 仰るような数値で表せる「エコ度」を作りたいものです。中々難しいでしょうが。

 農の部分、特に野菜についてはかなり自給自足に近いレベルだろうと予測できますが、エネルギーについてはまだ分からず、今はまだまとめている段階です。

 エネルギーで検討したことは、一括受電ができないかということです。ただこれは、維持管理と初期コストの面から考えて、それを住宅コストに載せて事業が成り立つかを考慮すると、現状は一般的な方法が望ましいという判断になりました。

 エネルギーに関連して申し上げると、今は電柱を地中化すると、普通に電柱を立てるのに比べてコストが10倍かかるそうですね。エコ村ではこの問題のため、地中化を断念しました。彩都でも幹線道路沿いは地中化されていますが、一歩入ると電柱、電線が見えてくるのは、同じ問題だからでしょうか。

講演後に得た情報の追記
 CO2排出量については、例えば、事業者の造成工事分については地元の森林組合と共同してCO2オフセットをする検討を進めている。


エコ村のマーケット戦略について

柴田(PPI計画設計所)

 私どもは民間のディベロッパーとお付き合いがある仕事ですので、事業面つまりお金の話はどうなんだろうと思ってしまいます。エコ村の分譲住宅は平均73坪の宅地だそうですが、分譲価格はどれぐらいを予定されているのでしょうか。

 また、デザインコードを決める際は住民と相談しながら決めるとおっしゃいましたが、住民とはユーザーのことですか。ユーザーならば、エコ村の理念を理解して貰うためにどんな囲い込みをなさっていますか。マーケットの中で絞り込みをするなど、いろんな準備が必要なのかなと思いますが。

福田

 まず分譲価格について。平均敷地面積は73坪で、最低60坪から最高90坪以上(40区画)まであります。65〜75坪が一番多い宅地面積です。宅地面積はユーザー個々との相談になりますが、大体32坪前後を見込んでいます。

 購入価格についてはまだ聞いていませんが、近江八幡市の住宅市場価格と同じぐらいのレベルだと聞いています。ですから、大阪よりは安いのではないでしょうか。

 ユーザーの囲い込みに当てはまるかわかりませんが、9月上旬からエコ村の「友の会」のような方には優先的に案内をはじめているそうです。一般に対しては10月から案内をはじめると聞いています。囲い込みをどのようにしているかは、私は把握しておりません。

講演後に得た情報の追記
 販売はできるだけ、一般的でわかりやすい方法としている。通常良く行われる会員化の後で事前案内会を行うなど。特別な囲い込み策は講じていない。


エコ村について現実面からの質問

神谷(愛知・東浦)

 区画整理や民間の宅地開発を見ても、なかなか自分でも住んでみたいと思えるような住宅地がありませんでした。しかし、今日のエコ村は面白そうだと興味を持って聞かせていただきました。現実面のことで、いくつか質問をさせていただきます。

 (1)敷地面が普通の住宅より広めとなると、単価的には買えない層が出てくると思います。販売面において、その辺はいかがお考えでしょう。

 (2)宅地と農地は分筆した登記になるのでしょうか。あるいは、建ぺい率制限で農地部分を確保しようという考え方なのでしょうか。農地部分をどうやって担保されるのかが気になりました。人によっては農地を駐車場にしたいとか物置にしたいという人も出てくると思いますが、それをどうやって防いで農地を担保するか、です。

 (3)開発された宅地は、地主が換地を受ける部分もあるのでしょうか。その場合、地主さんが自分の好きなことに使うということができますか。

 (4)産地直売の販売所がエコ村にできるというお話ですが、こういう場合、商業系の建物は住宅地内に建てさせないケースがあるのですが、販売所については何らかの条件付きなのでしょうか。

 (5)エコ村は立地条件が駅から遠く、普通だと車中心の生活になっていきがちです。それについてはどうお考えですか。

福田

 (1)買えない層をどう考えるか。これは難しい話です。エコ村はひとつのモデルを作ろうとしているわけですから、この開発が出発点となって全国に広がっていくと価格はどうなるのでしょうか。また、私自身「ロハス」という思想が「高所得者層のもの」というイメージになっていることには、違和感を感じています。そもそも価値観を見直すことがロハスの考え方ですから。

 (2)風景として担保しなければいけない部分は、今の法律と現在進めている自主的な取り組みの中で守っていきたいと考えています。住民になる人にもそれを説明し、納得した上で動いてもらう必要がありますね。強制だけでは意味がありませんから。ディベロッパーと住まい手であるユーザーとの話し合いにかかってくると思います。

 その他のご質問については、時間の都合上割愛させていただきます。

講演後に得た情報の追記
 (1)購入できるかできないかは、購入者のライフプランと、求める付加価値によるところが大きい。一方、小舟木エコ村では、住宅購入することだけが参加の方法ではないことをNPOエコ村ネットワーキングや小舟木エコ村推進協議会、NPO百菜劇場を通じて紹介していきたい。

 (2)菜園部分も全て宅地。質問の手法は我々も検討したが、農地転用においては穴あきは認められないし、何より個人の菜園配置の自由度がなくなるため、デメリットの方が大きいと考えた。購入者には外構の一部として菜園を整備してもらうよう説明している。

 (4)店舗の内容は、歯科医、接骨院、美容室、パン屋、内科などを検討している。

 (5)近江八幡は1人1台の地域。これを1家に1台にシフトしていきたい。エコ村に隣接する県道にバス停が既にある。居住後はバスの増便の検討を依頼している。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見はJUDI

(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ