環境共生と農のまちづくりへの挑戦
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アーバンフリンジの農空間のまちづくりについて

 

合意形成にいたるまでに

石川(浜松まちづくりセンター)

 浜松の調整区域でのまちづくりに取り組んでおります。今日のお話は大変参考になりました。浜松では今まちづくりの絵を描いているところですが、地域での合意形成がとても難しいのです。そこで加我さんにひとつお聞きします。 金岡地区の農家対象のアンケートは、答えた人は市街化区域の人も含んだアンケートなのでしょうか。

 それと合意形成を図る上で、世帯主と次世代の間で意見の乖離はなかったでしょうか。また不在地主に対しても、こういう取り組みをされているのかどうか。そのへんをご説明ください。

加我

 この地域は田んぼが市街化調整区域で、お住まいは全部市街化区域になっています。ですから、アンケートに答えた人は全員が市街化区域居住者で、田んぼを市街化調整区域に持っているという本当にキワキワの所なんです。

 次に世帯主と次世代の間の意見の乖離というご質問ですが、アンケートを聞いたり3回の地権者集会で聞いたりしたことによれば、60代の世帯主が次世代にきつい物言いをしたら、反対に次世代が世帯主達にくってかかるという光景は見たことがないです。お互いに話し合うという雰囲気で、軋轢があったという話は聞いておりません。

 ただ、地域合意があって協定まで行ったのかと言うと、まだそこまでは行っていません。協定を提示して地権者集会をやって、その後、ミニ地権者集会のようなミニキャラバンを何回かやっていますが、最後の合意まではいたっておりません。

 ここでも合意をどう取るかが課題になっているのです。ネックのひとつは、都市計画道路の南花田鳳西町線の整備も合意形成に大きく影響しているようで、道路整備が終わってから意思を表明したいと考えている方もおられるようです。

 また、農道整備である「道普請」や休耕田を減らすための農業体験はこういうことを続けて行けば、きっとみんな農業を辞めずに真剣に取り組んでくれるだろうとの期待を込めて、様子待ちをしているような段階です。ですから、今は協定のための合意形成の時期というより、そこに至るまでの地道な活動を続けている時期です。

 農道整備は沿道の地権者からタダで土地を借りていますから、土地を貸してくれる人の所でしかやっていません。それを見て、以前は反対していた人も「なぜオレの所はやらないんだ?」と言うようになって、ちょっとずつですが事態は進行しつつあるといったところです。


後継者問題および次世代農業の形とは

久米(西宮)

 私の地元でも、市街化調整区域の農地で、これからまちづくりを進めていかねばならないと思っているところです。

 加我先生のお話でプロセスはよく分かったのですが、私どもが問題と思っているのは、景観を考える立場からすると、緑地・田畑のほうがよいのでしょうが、生活の問題として考えると「資材置場として土地を貸すしか、今のところ暮らしの収入を得る手段が見当たらない」という意見が農業をされている方の率直な意見として出てまいります。

 要するに後継者の問題なんですね。農業の後継者がいない、それが一番大きな問題です。その点について、堺市ではどういう意見があるでしょうか。そしてそれを解決するにあたって、生活を維持していく農業という観点から見た課題がございましたら、お聞かせください。

加我

 この2地域についてお話しすると、まず後継者問題については絶対出てくる問題です。どちらも後継者は全然足りてません。今、都市部に働きに行っている人が、それを辞めて農業に就いてくれるなんて状況はありません。

 特に上之・辻之地区の協議会に出てくるメンバーでは64、65歳で会社を定年退職した方が増えつつあります。それらの年代層が農業やまちづくりへの取り組みの中心になっているというのが、実感としてあります。

 生活の維持という問題では、農業だけで生活が維持でき生計が成り立つということは2地域ともなさそうです。不動産経営をしながら農業を続けている方も多くいます。生活という点から見ると「不動産経営はダメ」と言い切れない現状です。

 ですから私としては、不動産経営をする土地をどこまで・どういうふうに許せるかということを考えるべきだと思います。スプロール的な虫食い状態のように農地のあちらこちらにポツポツと不動産が出来るのが、都市的土地利用にとっても農地的土地利用にとっても一番マズイことです。それをどうコントロールして、計画にまとめていくかを考えていきたいと思っています。

久米

 今の60代が引退した後はどうなるのでしょう。世代交代は?
加我

 そうですね、今の60代もいつかは体力的に農業ができなくなります。

 後継者問題に明確な答えを持っているわけではないのですが、後継者のことともに新たな農業の形態を模索することが必要だと考えています。例えば、貸し農園、福祉農園、ふれあいレストランなどはすでに提示したことがあります。そういう形態を模索したとき、今、個人でやっている農業の形態も集落でやる形態に移行していけるのではないか。圃場整備があると、集落ぐるみの仕組みは作りやすいのですが、圃場整備がない場合に集落ぐるみの仕組みをどう作っていくのかは次の課題です。特に金岡の方々とはこれをやっていきたいと、今話題に上っています。まだ答えは出ていませんが。

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