だんじり祭りを歩く
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顔が見える町〜都市ブランドと観光

ランドデザイン 中村伸之

 

 言葉の通じない国でも、人々の顔を見ているのは楽しい。舗道を行きかう人々を見ているだけでも時間が過ぎてゆく。特に親子の姿を見ると情感までが伝わってくる。言葉が通じない分、顔が伝える情報はとても大きいので、表情が豊かな人たち、内面が滲み出してくるような人たちがいる町は楽しい。歴史や伝統をかたどっていても、富や流行を飾っていても、このような人々がいない町はつまらない。生活のない町はもっとつまらない。

 都市観光を面白くするのは、人々の顔である。文字通り「町の顔」であり、最良のメディア(伝達手段)である。元気なコミュニティには人々の顔を明るくする力があるし、訪れる人も明るくする。そのような光に憧れて人々は都市を訪れ、訪れることでコミュニティも元気になる。そんな良い循環が、都市ブランド力の源泉であると思う。

 岸和田の人たちを見ていると、安定したコミュニティにいるのだなと感じる。気心が知れた(知られてしまった)間柄だから、いまさら外見を取り繕うことはないという安心感である。

 その信頼関係は、だんじり祭を共にやり抜いたことから生まれたのだろう。自身に確たる誇りがあるから、ビジターに対しても身構えることなく開放的で風格がある。

 だんじり祭を訪れると人々の表情が生き生きしていることが分かるだろう。それぞれの世代、男と女、親と子にそれぞれの役割があり、みんなが主役。その役割を必死で担っている。

 祭もまた、町の顔である。元気なコミュニティの飛びきり良い顔であると思った。

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