アメリカ中小都市のまちづくり
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質疑応答

 

 

バスの赤字はどうやって補填しているのか?

堀内(都市交通問題研究家)

 ボルダーの市バスの赤字についてですが、赤字補填は税金でまかなわれていると思いますが、何を財源にしているのでしょうか。消費税(売上税)の導入や、所得税や相続税の増税が行われているのでしょうか。また地元企業などの協賛金は投入されているのでしょうか。

服部

 そのへんははっきりお答えできません。ただボルダーは脱自動車のまちづくりを考えていて、1993年に自動車関連の年間予算を20%ほど削減しているのです。だから自動車関連の予算を削減して、それをバス運行の費用や自転車道の整備に充てているようです。日本で言うと、道路特定財源の予算を20%削減して、それを脱自動車用に回すということでしょうか。増税ではなくて、予算の使い方を変えて対応しているようです。その内訳までは分からないのですが。


「いかにしてモータリゼーションをおさえるか」はキーワードになるか?

土井(神戸国際大学)

 私は公共交通をテーマにしておりますが、今日は心に響くお話が多く感銘を受けました。

 最後の9つのキーワードについてですが、それに加えもう一つ付加するキーワードとして「モータリゼーションを押さえて、公共交通を重視することで、魅力ある歩行者空間の創出」があげられるのではないかと思いました。その点はいかがですか。

服部

 日本の地方都市でもモータリゼーションが進んでいますが、アメリカは圧倒的に自動車利用の多い国で、この五つの都市は本当に例外的な存在です。ですから車を運転できない高齢者、車が持てない低所得者にとっては本当に大変な国です。タクシーは日本ならお金を持っている人の乗り物ですが、アメリカではスラムに住む低所得者がスーパーに行くのに利用する乗り物という認識なんです。

 ボルダーやデービスの事例は、自動車利用を抑えるためにいろいろ工夫したという点でも参考になる事例ですが、日本の都市に比べるとアメリカの状況ははるかに悪いと思います。高校生になると自動車利用が当たり前の国なので、モータリゼーションが圧倒的多数の国なんです。ですから、アメリカが積極的に何か素晴らしいことをやっているわけではありません。

 デービスは自転車のまちづくりを推進していますが、だからと言って人びとが自動車をやめたかというと、そんなことはありません。ただデービスは大学都市でもあるので、自転車を主な交通手段としている人たちもいます。

 ボルダーで強調したかったのは、脱自動車のまちづくりと言うよりは、公共交通が赤字だけれど運営するんだという姿勢です。


まとめ

鳴海(阪大)

 日本では、人口10万以下の都市では我が町に自信が持てないという変な風潮があり、みんな東京の方を向いて東京のまねをしたがる状況がずっと続いています。今日のアメリカの町の事例は草の根民主主義の伝統もあるでしょうが、自分の町を愛する気持ちが、こういうしぶとさとも言えるいろんな努力に反映しているのではないかと思います。

 最初の事例に出たチャールストンの「ガイドラインのないまちづくり」は、今度フォーラムで取り上げる京都の問題にもいろいろヒントになりそうに思います。また今後も情報交換をしていただければと思います。

 では今日はこれで終わります。服部先生、長時間にわたりどうもありがとうございました。

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