コンバージョンが街をおもしろくする
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考察

 

●空間構成要素と印象との関係

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 住居コンバージョン店舗集積地区の総合評価を高める要素として、「楽しさ」「まとまり」「親しみ」という因子があり、「住居コンバージョン店舗」には、多くの人が反応し、訪れる人を強く惹きつけています。「楽しい」という印象を与え、エリアの魅力を高めていて、従来からある商店や工場、小学校や公園なども、エリアに「まとまり」感を与えています。

 中高層マンションやビルなども、エリアを囲む意味で「まとまり」感を与えているけれども、「楽しさ」にはマイナス要素でした。「長屋」や「生活景のある路地」といった昔からの生活の風景は、新旧エリアの内外の対比の様子を築くことで、「親しみ」を与えるというのは、なかなか面白いなと思います。


●住居CV店舗集積地区の特性と魅力についての考察

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 住居コンバージョン店舗単体の魅力ではなく、従来の街の機能と共存して魅力を発揮しているということです。一軒だけあっても影響は小さいのですが、エリアのなかに従来からある、生活の風景や商店などの空間構成要素と、近年増えている住居コンバージョン店舗が、エリア内に同じスケールで共存し、それぞれの良さがバランスよく機能して、エリアの魅力を形成しているという、私たちが普段なんとなく感じていることを統計的に明らかにできました。

 都心とすぐ隣り合わせのところにあるという特徴が、エリアの魅力をひきたてている。だから都市的で大きなスケールの空間に囲まれながら、昔からのスケールの街並みが残っていて、それがとても良いインパクトを与えているいうのはと、我々が普段感じることでもあると思います。

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 先ほどから出てきたこういうシーンそれぞれが、歩いた学生の目をひきつけています。学生らはこういう場所を歩いて、普通私たちが感じていることを感じているわけです。そこにある実際の建物や空間や風景やお店の様相などをあわせて、「なぜ面白いのか」ということを説明すると、こういうことになるということです。

 考察で得たことは、面白い街をつくっていく上で大事なことではあるけれども、その色々な面白さは、それぞれの人が色んなアクティビティをやることによって生まれてくる面白さであるわけです。一発でドカンとやって出来てくるものではないという意味です。これは『都市の魅力アップ』という本で主張した、“多発的に、同時に、色んなことを、小さくてもいいから今からでもやれることを、積み重ねていって面白い街ができる”ということを、裏付けているのではないかと思います。

 とりわけ、誰かが暮らしているということが魅力に貢献するということ、人が住んでいるところに遊びに行くことが結構面白いということがわかったわけです。人が暮らしながら楽しい街をつくっていくということ……現実には、これが皆なかなかできないから中心市街地問題などが発生するわけです。どうやって人を住まわせたらいいのかということを悩んでいます。ではどうやって人を住まわせたらいいかは、中谷さんに教えてもらおうかと思います(笑)。

 これは大学院の修士論文でやった研究で、色々複雑なデータを使って分析しましたけれども、それなりの結果が得られたのではないかと思っております。これで第一部の報告を終わります。

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