橋爪:
こんばんは、ただ今ご紹介いただきました橋爪でございます。
師匠から紹介してもらうのも格別の思いがありますが、今もお話にありましたように、現在大阪府立大学で観光産業戦略研究所という観光に関する新たな研究拠点施設の準備を進めております。いっぽうで大阪市立大学の都市研究プラザという研究所も担当しております。
府と市、双方の大学の教授というのも、なかなか珍しい例かなと思います。一つには一人で市府連携しているということ。もう一つはまちづくり・都市計画的な研究と、観光・集客・賑わいづくりという領域の間に橋をかけるということです。そもそも私がこれまで実践してきたことですので、それを研究所の活動のなかでも自ら体現してきていると自負しております。
また最近では広告媒体とエリアマネジメントに関わる調査研究、あるいは中国などのクリエイティブ・インダストリに関する研究等を継続してきております。
今日は最新の研究成果の話をしようかと思っていたのですが、鳴海先生の方から現在私が関わり、また現在進行形で進めております大阪のまちづくり、あるいは集客都市という大きなフレームのなかであてはまる事業について話をせよというふうに依頼を受けましたので、今日は限定して話をさせていただきたいと思っております。
大学院のころから、「集客」という言葉をキーワードにまちづくりを考えていました。しかしなかなか一般には、理解をえることは難しかった。転機がいくつかあります。私にとって大きなきっかけになったのは、前の全国の総合計画を考える際です。これから21世紀にかけて日本は人口が減少していくのだ、都市はコンパクトにつくっていかないといけないという潮流の原点の部分を議論した時期がございます。
その双方の議論のなかで出てきたのは、アメリカ等の中心市街地の空洞化を踏まえて、日本においてもこれから都市の空洞化が進むであろうということ。そこにおいて従来の夜間人口、昼間人口という概念だけでは都市はもたないだろう。だからこそ、できるだけ多くの人を外から受け入れるまちづくり、地域づくりが必要だということ。私はそれに加えて、そういった人たちを受け入れる産業振興策が必要だと強調してきました。当然そこには文化的な政策、文化的な事業が重なり合わなければいけない。ようするにまちづくり、観光施策、産業振興策、文化的な施策、官民双方の役割だと思いますが、それらすべてに橋を架けていくことが、今後の都市のデザイン、環境デザイン全般においても重要だと考えております。
近年それに加えてしばしば主張しておりますのが、文化産業や創意産業の意義です。日本ではクリエイティブ・インダストリを創造産業と訳しておりますが、中国では創意産業という文字をあてます。この文化産業や創意産業に加えて、広義の文化的景観等も都市のソフトパワーだという認識が第一に必要です。歴史的景観や文化的景観も、保全・修景をはかるだけではなく、次のまちづくりに関わる資源として私たちは使いこなしていかなければならないという発想に立つべきでしょう。
集客都市構想と都市のソフトパワー
●集客都市というキーワード
「集客都市」というキーワードを使い始めて10年以上経過しております。私なりの考えを日本経済新聞社から『集客都市』という本にまとめて、はやもう数年経ちました。
●交流人口という概念
その時「交流人口」という概念でいろいろ意見交換をしました。亡くなられた紙野先生のご指導のもとにいくつかの研究会で議論をし、いっぽうで当時民族学博物館で石森修三先生との観光に関する研究会に継続して参加していました。
●「国際集客都市」大阪
さらに転機がありました。大阪がオリンピック招致に参加、都市像を描く議論が盛んになった時に、亡くなられた磯村市長と「国際集客都市」という言葉を掲げてはどうかと話をしました。集客都市というコンセプトに国際という冠をつけたわけです。この考え方が90年代後半の大阪市の施策ではかなり上位のコンセプトになっていたかと思います。来街者も都市の担い手
私なりにアイデアを深めておりました。一つには先ほど申し上げたように、従来の人口の考え方だけでは日本の都市は維持できそうにないところが出てくるのではなないか。それであれば、さまざまな目的を持った来街者も担い手であるということを前提にまちづくりを考えてはどうか、ということであります。観光まちづくり、文化のまちづくり
集客都市という概念を前提とした地域づくりのあり方について、いくつかの指針を想定しました。たとえば、かねてより私が重ねて主張してきたのは、ビジターズインダストリの振興の意義、地域ブランドの向上の必要性、文化の持つポテンシャルを活かす仕掛けの重要性などです。
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