まとめ〜専門家は何をすべきか |
鳴海:
日本の建築やまちづくりに関する法制度は、景観づくりをやりにくくしているというのは今までにもいろいろと議論されてきました。それに加え、一般の人びとや事業者の景観に対する認識がとても低いというのが日本のまちづくり環境です。そんな中で、今日のお二方のお話はいいまちづくりをどうやって進めていけばいいかという内容でした。
最後に小浦先生に質問ですが、良い制度にするとしたらどう変えていけばいいか。イギリスのガイドラインの例は、空間に対する常識とか教養が大事だということが項目に挙がってきてて、市民もそれを支持している。日本ではあまりない状況ですよね。そういう景観に対する教養を高めていくために、専門家は何をしていけばいいか、そのあたりの展望あるいは抱負をお聞きしたいと思います。
小浦:
先ほどご質問いただいたアドバイザー会議も、その一つだと私は考えています。地域の人たちに、何らかの形でまちづくりの情報発信をしていくことは日本の社会では意外とないのですね。地域の方々が独自でまちづくりをするというのは例がありますが、専門家から発信されることがあまりない…。
鳴海:
いえ、私がうかがいたいのは、景観の教養を高めるために研究者は何ができるかということなのですが。今は一般の人にそれが足りないわけですし。
小浦:
やはり、それぞれの地域に対して発信する機会をどう作っていくかだと思うんですけど。もちろん、学校での教育もあるでしょうが、芦屋アドバイザー会議も地域の人々に専門家が発信するひとつの方法だと思っています。
専門家としては、その街の状況をきちんと読んで、「これが大事なのだ」ということを市民に伝えていくいろんな仕組みが必要になってくると思うのです。しかし、それが全国一律にするというのは難しいと思うんです。ひとつひとつの現場の中で、積み重ねていくのも専門家の役割ではないかと思っています。専門家もまちづくりの現場で言うべきことを言っていかないといけないでしょう。
芦屋アドバイザー会議のその方法のひとつだと思っていますし、公表する中でどれだけ市民の方々に発信し、やりとりできるかということは、私自身のトライだと考えています。
それと、良い制度にするために何を変えていくべきかというご質問についてですが、制度の改革は難しいですよね。まずは、その街がある程度ビジョンが描けていて、姿が見えるならば、その描き方があると思いますし、そのための制度のあり方があるでしょう。
でも、ビジョンが見えないというのが多くの場合で、そのうえ人口が減って街が縮小していくことも考えないといけないとか、小さな単位で突然いろんなものが変わっていく土地利用の状況の中では、難しいですよね。
私の考えでは、制度化はひとまずおいといて、景観計画を土地利用管理として機能させ、少なくともひとつひとつの動きを目に見える変化としてコントロールできるように変えることは意味があるんじゃないかと思っています。
つまり、今は景観計画だけが市街地から山まで地域を全部見ることのできる唯一の計画なので、その中では一定、縦割りされた土地利用コントロールを総合化することができます。変化をつなぐために、全体の土地利用計画をコントロールしつつ、ひとつひとつを調整できるような仕組みを組み立てることだと思っています。
鳴海:
ありがとうございました。これからもお二方には、頑張って頂きたく、感謝と期待を込めまして今日のセミナーを拍手で締めくくりたいと思います。
このページへのご意見はJUDIへ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai
学芸出版社ホームページへ