都市環境デザイン会議関西ブロック
2009年度第5回都市環境デザインセミナー記録
景観まちづくりの今
大阪大学 小浦久子/彦根市 深谷覚
趣旨
景観法が全面施行されてもうすぐ4年が経とうとしている。新たに文化的景観や歴史まちづくり法も動きだした。これまで景観というと高さや色、様式など建築物の意匠、材料などを景観課題とされてきたが、各地での主体的な計画づくりの経験をとおして、景観を考えることがまちづくりや地域づくりであることが理解されるようになってきたことに注目したい。
景観はまちや地域のすがたである。しかし、これを構成要素に分解して評価しても、なかなか全体像の魅力や不具合を表現できないと感じている人も多いと思う。景観まちづくりでは、日常の生活の中で感じるまち実感を景観によって伝えることが、まちの認識を共有していくときの手がかりとなる。そうした景観のとらえ方のひとつが、「景観のまとまり」であり、そのデザインを考えることである。
これは、かつては地域に蓄積されてきた当たり前の情報であった地形・風土と呼応する暮らしのかたちや、地域の歴史のなかで形成されてきた道や街区・敷地のかたちなどが、今の生活空間とどうつながっているのかを理解することでもあり、そこから景観を読み解くことである。また、仕事や生活による建て替えや地域の変化が良い方向に向かうにはどうすれば良いのかを考える視点でもある。それはまた、今各地で試みられている文化的景観や歴史景観まちづくりにおける景観認識の基本でもある。
そこで、今回は2つの景観まちづくりについて報告した。
1.「景観のまとまり」から地域景観をデザインする:大阪大学 小浦久子
景観を計画することでまちを考える。それぞれの計画づくりを通して地域の景観価値を地域で共有するとともに、景観計画に書かれる方針と景観形成基準によって地域外に対して景観価値を発信する。そうすることにより、変化と地域らしさをつなぐ。景観法はこれを法的に支援することが期待されるが、今のところは、それぞれの自治体に工夫が求められる。では、どうすれば良いのか。その端緒として「まとまりの景観デザイン」を示した。
2.歴史景観まちづくりに景観計画を活かす:彦根市 深谷 覚
彦根市は平成6年に彦根市都市景観基本計画を定め、16年6月には景観法に移行した。そこでは住民の理解と賛同を得ながら歴史的景観の特徴を踏まえ城下町としての景観を形成していくことへの拘りがある。それは歴まち法の活用にも引き継がれている。彦根市の城下町景観への果敢な挑戦を紹介していただいた。
セミナー委員 小浦久子
小浦久子
大阪府生まれ。民間建設コンサルタント会社などを経て、1992年より大阪大学工学部助手、1997年より、大阪大学大学院工学研究科准教授。博士(工学)、技術士(都市及び地方計画)。著書に『まとまりの景観デザイン』(学芸出版社)、共著に『景観まちづくり最前線』(学芸出版社)、『景観法活用ガイド─市民と自治体による実践的景観 づくりのために』(ぎょうせい)など。
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深谷 覚
1970年滋賀県生まれ。1993年彦根市入庁、建築指導課に配属。1995年4月より1年間滋賀県へ派遣交流、1996年7月より4ヶ月間阪神・淡路大震災復興支援のため西宮市へ派遣、1998年から都市計画課で開発指導担当を経て、現在、景観・公園担当として主に景観施策を中心とした業務に携わる。共著に『景観まちづくり最前線』(学芸出版社)。
記 録
まとまりの景観 都市空間のかたちと変化の調整 大阪大学 小浦久子
歴史景観まちづくりに景観計画を活かす 彦根市 深谷覚
質疑応答
日時/場所
2009年5月22日(金曜日) 18:15開場 18:30開演 20:30頃まで
CITE(大阪市都市工学情報センター)会議室
主 催
都市環境デザイン会議関西ブロック
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