地方都市での「議論と合意」の景観まちづくり
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伊賀市の景観計画

 

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 伊賀市には二つの景観計画がありますが、ひとつは、景観計画ができる以前から景観条例で指定されていたエリアです。内容を一部変更し、伊賀市の重要な地区の景観計画となっています。もう一つの景観計画は、今お話したエリア以外の景観計画で、伊賀市はこの二本立てで景観計画を進めています。

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伊賀市景観計画 伊賀市眺望計画
 
 この景観計画は伊賀市全体を対象としていますが、伊賀市はマンション紛争を二度と体験することがないよう城下町の区域を重点区域にしています。これは城下町の風景区域と位置づけています。

 この対象地域はかなり広くて、300ヘクタール以上あります。これだけ広い範囲を、建物は原則4階以下・高さ15m以下の合意をとって景観計画の中に位置づけました。三重県の中では、合意が取れた地域としては一番広い範囲です。特に黄色く塗られた重点地区(上野天神祭が行われる地域)は、原則3階以下・高さ12m以下になっています。さらに緑色に塗られた部分は、重点地区の中でも最も重要な地区として、建物を2階以下として景観計画を進めているところです。小都市としては大変に広い範囲を高さコントロールの対象として位置づけ、市民の合意を取ることができました。これが伊賀市の特徴ではないかと思います。

 ただし、景観計画の中で位置づけた高さ規制では、変更命令が出せません。将来的には都市計画の高度地区などの指定も検討した方がいいのではないかと思っています。しかしまずは、景観計画で先頭を切って景観紛争の予防をすることに重点を置きました。

 関西の都市はどこでもそうだと思いますが、市街地で人がたくさん住んでいるエリアは高さコントロールを入れた景観計画をつくっても全員が賛成してくれるわけもなく、三重県もそれは同様です。例えば津市であれば反対意見の方が強いかもしれません。地方都市であっても、高さ規制に関してはすぐに合意が取れる状況ではないのです。伊賀市でそれができたのは、やはり市民の理解と協力があったからだと思います。

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 眺望景観に関しても、日本全体で見ると京都市等眺望景観施策以外はまだ十分に取り組まれていないように思われます。伊賀市の眺望景観についても最先端の京都市に比べたらまだまだ緒に就いたばかりですが、それでも今までやってこなかったことに挑戦していこうということで市民の合意ができつつあります。これも伊賀市の景観計画の特徴だろうと思います。

 今、伊賀市で眺望景観に位置づけられているのは、伊賀市のシンボルとなっている上野城天守閣が見える範囲です。城下町の外から多くの人が天守閣を臨める場所、例えば橋を渡る所、主要な道路から見えることなどです。「あそこからみたお城の風景」が多くの市民の原風景になっているようなエリアをいくつか選定して、そこからの範囲に関しては眺望に関しても設計の時に考慮してもらい、うまくお城と共存できるような建築デザインに調整していただく方針となっています。

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