4−3 アルベロベッロAlberobelloのトゥルッリに住む
          堀口 浩司 KOUJI HORIGUCHI 地域計画建築研究所
 
 アルベロベッロは数センチの厚さの石灰質岩を積層させた円錐形の屋根(トゥルッリ:IL TRULLO)が特徴的な住宅群で有名なまちです。
 このトゥルッリはサレント半島に多く見られる住居の形式であり、一つの部屋で一つの円錐形の屋根を支えている。そのため、それぞれの部屋の中はカーテンなどで間仕切りされている。
 このような形状になった理由として、16 世紀後半から入植者が増え始め、当時の家屋ごとの課税を逃れるため、簡単に屋根を取り壊せる構造にしたという説がある。
 さらに乾燥した気候の元で雨水を有効利用するための構造が用意されている。円錐形の屋根で受けられた雨は、傾斜によって集められ、水路を通して、床下の貯水槽に貯められ生活用水に使われている。
 アルベロベッロは世界遺産として有名な観光地でもあるので、世界中から多くの外国人旅行者が訪れている。改修したトゥルッリは宿泊所として貸し出している。
 建物としての構造や経緯は書籍やテレビなどで紹介されているので、詳細な説明は省略して、ここでは体験談とする。
 なお、我々が滞在したのは8月、夏の終わりである。
トゥルッリは現在も現役の建物として活用されている。その用途は住宅、店舗、宿泊所など様々であるが、構造を変えずに建物を動態保存している。
 保存活動を進めているNPOが宿泊所として短期滞在から1週間単位のレンタルなど様々なサービス提供を行っている。
 地区内には現在も住宅として利用しているもの、何らかの理由で空屋になったものなど混在しているため、我々JUDIメンバーも地区内に点在する家屋に分かれて滞在した。
 住宅としての印象は、窓が小さいため室内が暗く風が抜けない、加えて建物の平面が円形であるため壁が湾曲しており、壁から離れて置かれた家具の収まりがわるい。床とバスルームの扉以外は、壁、天井ともに湾曲しているため、何となく落ち着かない。反面、天井が高いので圧迫感はなく、間仕切りがないので結構広く感じる。壁が厚いため、遮音性能が高く、外壁の断熱効果も高い。ニッチに照明や花瓶、写真を飾るなど意匠としても優れている。
 当然ながらエアコンはない。夏の南イタリアは日差しが強く、空気も乾燥しているため、湿度が低ければ快適な住宅であろう。 
我々の滞在した時期は、生憎と室内の湿気も高く、屋外に出て夕涼みをすることにした。隣家の滞在客も同様に夕涼みしている。夕暮れ時は、家の中より外部の方が涼しいため、外部空間の役割が大きい。
 道路と建物の間に、数十センチ程度、壁面が後退した空間があり、自家用車を乗り上げて止めたり、写真のようにフラワーポットをおいたり、椅子を持ち出して座ったり、様々な使われ方をしていたのが印象的である。
 
トゥルッリが集中した地区では小さい屋根が細かい陰影になって見える google map
 

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