伝建地区のこれから |
文化財としての社会的ニーズがあるのは間違いないことです。これは制度的な枠組みの中の話で、規制もあるし誘導もあります。
もうひとつは、伝建独特の問題ですが、そこは現に人が住んでいて生活の場でもあることです。
この2つが重なる部分がまだまだ小さいのが伝建地区の問題で、一方では「保存しろ」と言われていますが、一方ではその使い道がないという現実があります。そういう状況が伝建地区ではずっと続いてきたのかもしれません。ところが、現在では、新しいまちづくりの考え方とか家の活用の仕方がどんどん出てきて、新しい使い方が「保存」のほうをぐっと押している印象があります。歴史的なものを使って何か新しいことを展開することがとても増えてきて、オーナーさんの意識も急激に変わっています。
文化財の社会的ニーズも、生活の中で使ってどうかという所に関心があるようです。
そんな流れの中で、なぜ私が文化財にこだわるかというと、これほど歴史的資産を活用するメニューが増えたとき、伝建地区の重みは今まで以上に大きいと思っているからです。つまり、伝建がやってきたような「本物の材料を使って本物の建物を残していく」ことは歴まち法や景観法のメニューの中では担保できないからです。別の言い方をすると、「ほんまもん」を群として残していけるのは伝建しかないのです。ですから、「文化財としての」という形容詞は伝建からはずせないと思います。
この現状の中で、伝建地区が文化財保存と生活の場の両方を満たせる新しい分野を見つけていくことは、大きな意義があるとと考えます。
これで、私の報告を終わります。ありがとうございました。