ハウスメーカーのつくる住まいの風景
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地域性は大事なのか、日本の街を美しくするには

 

赤坂(京都の設計事務所)

 ハウスメーカーの事例として開発団地の話が多かったようですが、実際には積水ハウスの開発団地は売り上げが少ないと聞いています。

 小浦先生は「地域性を大事に」というお話がメインテーマでしたが、本当に地域性を出していけばまちが良くなるのかという点については僕はちょっと疑問に思います。建材については、これだけ流通が発達していますから、品質的には今のような状況になっていくと思うんです。

 例えば、景観規制が厳しいことで知られるオーストリアのウイーン、リンツ、ザルツブルグ、あるいは国境を越えてプラハに行こうが、そんなに建物で独自性を感じることってないんですよ。もちろん、教会やお城などの特別な建物は別ですが。普通の町並みはそんなに変わらないと思いました。

 僕は、先進国の中で日本が一番まちが汚いと思います。一方、住宅は家を建てて5年もすれば、売ろうとしても土地値でしか売れない。つまり、住宅はタダなんですよ。今日来られている竹内さんの博士論文を読むと、それはどんな建物、つまり積水だろうとダイワハウスだろうと一緒だということです。

 その原因を考えてみると、住宅産業が始まって以来、市場原理で進んできたということがありますよね。つまり、ソニーは松下とは違う商品を作ってきたように、積水はダイワハウスとは違う住宅商品を作ってきた。先ほど小浦先生から、「ユニット寸法も各メーカーでそれぞれ違う」という話がありましたが、寸法から何までバラバラな住宅産業となっていったのです。その辺をハウスメーカーは反省して、日本のまちを美しくするために何が大事なのかなを考えてみて欲しいと思います。

山中

 確かに、住宅が変わったかなと思う時期は、外壁に模様が出てきた頃からだと思います。当初は、吹き付け塗装のパネルで作っていたのですが、それを外壁に柄模様を施すデザインになった。それが全国一律に供給されて地域の町並みと合わなくなって、バラバラ感が出てきたかなとは思うのですが。ひとつひとつは凄い技術なのですが、それが全国的に出てくるようになってから、日本の街が変わったかなと個人的には思うのですが。

小浦

 地域性をどう位置づけるかというのは、まだ共有されていない価値観だとおもうのですが、私は全ての地域にそれぞれの住まい方や生活のあり方があり、それが現れてくるものが地域性だと思っています。必ずしも物的なものだけではないと思うのです。全く同じ建物が建っていても、一方は掃除して、もうひとつは掃除されていないというのもある種の地域性が出てくるものだと思っています。そういう意味で住まいをつくるということを言っていました。

 ヨーロッパの街の美しさはおそらくボリュームの問題だと思いますし、日本はまちをボリュームの概念でデザインするということをしていません。一番大きな違いは、日本は敷地あるいは土地のコントロールをしていないことですね。そういう規制をしていません。つまり、法的な概念で敷地を規制していないのですから、ボリュームのベースになる敷地のコントロール規制がない中で建て替えが進み、様式が変わってきていることから、日本のまちなみの混乱が起こっていると考えています。

 市場の原理をコントロールできるのかと言うと、制度的にはできるのですが、いざしようとするとものすごい反対が起きるでしょう。例えば、低層市街地に大規模な建物は必要ないので容積を下げることには賛成と考えながらも、自分のところにそれがかかってくると財産価値が下がるからイヤだという社会状況の中で、市場コントロールしようとするには制度だけではダメなんです。市場が評価する価値を住宅で作れるかということですよね。それには、おっしゃったように5年経ったら住宅の価値がなくなってしまうような評価システムを変えていかないと。評価の仕組みの方が、制度的なことよりも重要なことだと思っています。

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