やはり、周辺の町並みに合わない家が多い |
私はプロダクトデザイナーとしてここ20年間ほど景観の問題に取り組んでまいりました。もともとプロダクト出身と言うことから、どうしてもメーカーさんのものづくりの可能性について考えてしまいます。景観問題についてもハウスメーカーさんはもっと役割を果たせるのではないかと思ってまいりました。今日のお話を聞いてましても、みなさんが大変努力してこられたことを評価したいと思っています。
その上で、山中さんにうかがいます。この十数年、関西の幾つかの自治体で景観アドバイザーとして、新しく届け出を出された建物をたくさん見てきました。私は、新しい建物がどうしたら周辺と調和していけるかをアドバイスしています。しかし、ハウスメーカーさんが作られる住宅は、あまりにも周囲とそぐわないものが多くて、アドバイスする上で非常に困ったことがあります。周辺住民の方も建設に反対をされるということもありました。その点、ハウスメーカーさんとして、もっと頑張って欲しいというのが正直なところです。クライアントの方に、「このデザインを選ぶと地域で反対されます。周辺に合わないです」ということをカタログに明記していただきたいとさえ思います。あるいは、そういった住宅はいっそ作らないで頂きたい。特にGマークの付いた商品はみなさん建てたいようなんで、地域の景観から見るととても困ったことになることがあるのです。
山中:
建て売りで計画する場合(例えば京都のGORAKU)でしたら、私たちも周囲に合わせてやろうとは思うのですが。営業マンもそのコンセプトに沿って、お客様に勧めてくれます。
しかし、我われの営業所にお客様がいらっしゃったとき。お客様が考える景観とは何かという問題があります。どうしても、今まで住んでいた日本家屋がイヤなのだ、もっとモダンな家に住みたいと主張されたときに、我われは「いや、ここは日本的な家並みなので、そうした家に住んでもらいます」と言えないんですよ。どうしてもモダンな家でと希望されたとき、「じゃあウチは契約しません」なんて絶対言わないものなんです。もちろん、我われも町並みは大事だからとかいろいろ言っています。でも一対一の話し合いではお客様の考えておられることが一番優先されてしまうんです。
ちなみに、当社に来られるお客様は、家の保証を一番に求めて来られます。だから、景観は人それぞれ考え方が違いますが、我われも全国商品であっても街を歩いてこの住まいにはこういうものを取り入れた方がいいという努力はしています。しかし、おっしゃったように、クライアントの主張が優先されるというところでは難しいところだと思います。この問題は、ハウスメーカーに頼んでも設計事務所に頼んでも同じ難しさがあるように思います。
藤本:
私としては、あまりにも地域に合わない家は作らないで欲しいということなんですが。
山中:
会社の立場とは関係なく、個人的に見て、ここは建てないほうがいいと思える場所はけっこうあるんですけどね。でも、やはり景観は人によって好き嫌いのあることですし、伝建地区ならこれしか建てられないというのがはっきりしていますが、そうでない地区は何を基準にするかは、なかなか難しいところだと思います。