梅田北ヤード2期のグリーンパーク構想
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質疑応答

 

 

司会

 皆さんから質問、ご意見等を受けたいと思います。


■ビジョン委員会に関わって〜精神的な癒しの場になるよう

藤本(京都市立芸大)

 篠アさん、分かりやすい説明をありがとうございました。また、ご提案されたみなさま、素晴らしい提案をありがとうございました。私も篠アさんのお話にありました2期ビジョン委員会の委員を務めていました。私自身のイメージに非常に近いと思うのは、田端先生のご説明があった大阪芸大の「森の中の施設イメージ」です。最終的にビジョン委員会が出したものとしては建物のイメージでゾーン分けになっていますけれど、私が当初から言い続けていたのは、スクラップ&ビルドでいいから何か実験をする場をと訴えていました。そのイメージはやはり森の中で、環境のいろんなトライアルをつぶしてはやっていくことが必要ではないかと考えたからです。今はこれから先が見えない時代だと思うので、時代に合わせていろんなチャレンジをする駅前施設というイメージです。

 それと、もうひとつ私が言っていたのは、やはり滞在型の場所を作ろうということです。子どもたちが学ぶために宿泊をする施設、いわば都市型のキャンプ場としていろんな場所を作り上げて、いざ震災のような災害が起きた時は帰宅難民者を受け入れる宿泊施設にしていこうと私は言っていました。

 1期の方も関わっていましたが、その中で何が問題だったかと言うと、先ほどのご説明にあったようにJRTTの問題ですね。法律で価格が規定されているということに、私は非常に憤りを感じたところです。2期がなんとかそういう形にならずに、予算面でうまくソフトランディングしたらいいと思うところです。みなさんの知恵と英知が必要かと思います。環境や防災で国の予算が付くということもあるかと思います。

 今、日本では大きな問題として年間3万人の自殺者がいて、その2〜3倍の行方不明者がいると言われています。精神的な闇を抱えている人が多い時代かと思います。そうした精神の救済を兼ねるような施設を駅前に作れたらと思う次第です。1期では過酷なナレッジの開発をしますので、それを癒すような場になるような予算付けが国の方から政策で出てこないかなと思います。

 そういう形で自然と環境共生できるような駅前施設になっていけばいいなと私は思っているところです。

篠ア

 会場には私よりも詳しい方がたくさんいらっしゃいますので、どうぞコメントをお願い致します。

 1期の時からビジョン企画委員会として、私も鳴海先生とご一緒させて頂きました。その際例えば、1期の南北軸は地下に入れるべきじゃないかという議論もありましたね。また鳴海先生にはコンペの審査員もしていただきましたし、都市計画審議会でも貴重なご指摘をいただきました。鳴海先生からコメントをいただけないでしょうか。

司会

 鳴海先生にはセミナーの最後にお願いしようと思っていまして…。

篠ア

 あ、そうですか。ではまた後でよろしくお願いします。


■大阪市の立場は? 全て民間任せなのか?

前田(学芸)

 ちょっと分からないことがありまして、あの当時土地を高く売って儲けるのは国鉄ないし国ということになるんですよね。大阪市は関係ないし、せいぜい固定資産税が入ってくるということぐらいなんでしょう?。あんな無茶苦茶な高い容積を認めて何の得があるのでしょうか。

篠ア

 私たちは大阪市長には何代にもわたってお話ししましたし、局長さんともお話ししました。しかし、その印象からは私は大阪市が「こうしたい」というビジョンを持っておられないと感じました。歴代の局長さんは「大阪市は南港とか阿倍野のまちづくりでずいぶん失敗をした」とおっしゃるんですね。私は、これは「羮に懲りて膾を吹く」ということだなと思っているのですが、北ヤードも大阪市が変なまちづくりをするよりは民間の知恵や提案を受けた方がいいと思っておられます。大阪市は「民間の方がよっぽど良い知恵を持っているし力もあるでしょう。だからまちづくりは民間に委ねたい」と常々おっしゃっています。

 新聞でも報道されましたが、1期の土地は3千億を超えたと聞いています。その横のヨドバシカメラは3.5haが1千6百億でした。だけど、あれ以降随分地価は下がっていました。私たちが最初に提言した2001年が底値だったと思いますが、1期事業者を募集した2006年はちょっとミニバブルになっていたんで、競争入札だったので、かなり価格がつり上がって、価格の高いところに落ちたということだと思います。

 都市計画審議会を延期しても少し容積を積み増しして欲しい、そういう提案をしないと採算が取れないという事情があったのです。銀行筋の人に聞きますと、それでも収支上は
大変厳しいことになっているらしいですが、採算の取りにくいナレッジ・キャピタルという新しい拠点を作る事に対しての注目もありますし、民間企業がずいぶん頑張っておられます。それを大阪市は「民に全てお任せ」という姿勢で、無策としか私には思えません。

 ともあれ、北ヤード開発は民間企業の投資を都心再生に振り向けることで、提案も出来るし容積の積み増しも出来るということになっているのですが、最初の段階に大阪市が「この街をこうしたい」という明確なビジョンがない中で、民間の知恵に委ねたというのが実情だと思います。

前田

 しつこく聞きますが、最初に200%と決めていれば民間はそれに見合うお金で落札するだけですよね。別にリスクを負う必要はなかったように思うのですが。

 他の方はいかがでしょう。「あんな森作ってどないすんねん!」と思っておられませんか?


■緑の維持管理の難しさについて

中尾

 緑化管理の仕事をしております。個人的にも芝生が大好きで、自分でもやっております。今回もみなさん方の提案は素晴らしいと思いました。ただし、先ほど佐々木さんが言われたように、維持管理をどうされるのかが問題だと思います。

 私が気になったのは、お話の中でどんな緑なのかが全然見えてこなかったことです。例えば、木一本にしても何の木を植えるのかとか、芝生を植えるにしてもいろんな種類があるのです。駅前に緑を作ってそこに年間何百万人も来られると、たぶん芝生だったらいっぺんにダメになります。欧米に行かれたら、そこの芝生は非常に奇麗です。ただし、彼らは芝生に対する長い文化の歴史があって、芝生を奇麗にすることがステータスに通じますから、手入れの仕方も分かっています。

 みなさん方にお聞きしたいのですが、この絵を描かれた時に本当に芝生を育てたことがあるのでしょうか。こういう絵を見るたびにいつも思う疑問です。

 私は西宮に住んでいますが、1995年の阪神淡路大震災の後、駅前を再開発しようという話になって、緑の空間を作ろう、まず始めに芝生を植えようという話になりました。しかし、芝生の管理は業者は絶対してくれないんですよ。芝生を貼ってはくれますが。3年も経つと芝生は見るも無惨、雑草の荒れ野になって、5年も経てば芝生なんてどこにも見えなくなりました。

 「緑の駅前空間」というテーマは非常にいいと思うんですよ。しかし、それを誰が管理するのか、どのくらいのお金がかかるのかということが想像すら出来ません。アメリカでの事例のように民間サポーター組織があって、しっかりした運営をしているなら、そこはうまいこといっているのだろうと思います。しかし、私たち日本人とは全く違う思いで動いているんじゃないかという気がします。その辺、どういうふうにお考えなのかをお聞きしたいです。

 それと、こういう立派なものが大阪駅前に出来たら、御堂筋はますます廃れていくんじゃないかと心配になります。ある方が「御堂筋はシャンゼリゼに負けへんで」とおっしゃったのですが、本当にそう言えるんでしょうか。駅前は雑草だらけですし、花を植えるためのプランターも貧弱、僕はもう少し細かいディテールの維持管理をしっかりしてもらいたいと、御堂筋を通るたびに思うんです。そういうことさえできないのなら、本物の緑なんて提案できないんじゃないかと思っているのですが。つまらんことを申し上げましたが、その辺が疑問に思えましたので。

佐々木

 全くおっしゃるとおりです。そのために、維持管理について提案致しました。

 例えば、ソウル市役所前の美しい緑は管理がものすごく徹底されているんですよ。私は今ソウルで仕事をしていますが、ソウルで芝生を育てるのは日本の環境よりずっと厳しいんです。冬は凍結してしまいますから、水を遣ることができない、全部凍ってしまいますから。ですから、ソウル市は民間業者のいくつかに競争させながら提案させて、芝生の管理には徹底した姿勢で臨んでいます。

 今のお話をもっと広げると、我われはオープンスペースの利用の仕方とか管理の仕方に対して、国にしろ自治体、行政、民間なのかに共通して言えることは実は組織なんですよ。何らかの組織が何かを考えて運営していくやり方は、実はもう限界があるのじゃないかと思うんですね。都市における公園やオープンスペースを考えた場合、本当に人々が集まってコミュニケーションの力がある組織というのは、企業の代表が入る組織しかいないんです。自分で高いお金を払って参加してきますし。要するに、テーマに集まるコミュニティ、社交グループだから、自由に動ける、徹底管理もできるということがあるんです。自分の会社の名誉にかけて、テーマをやり遂げます。

 そういうグループが自分の都市にいくらあるかが、今後の都市のオープンスペースのあり方にかかってくるんじゃないかと思っています。テーマを中心に集まるグループの力、それを都心にどう生かしていくかを考えるなら、管理やメンテナンスのグループを作ったらいいんじゃないかと考えます。花や植物を好きなグループを作って、緑の維持管理に生かせるようなことをやっていきたいと私は考えています。


■行政の役割とは何か

司会

 では最後に、いつものように鳴海先生からコメントをいただいて、セミナーの締めくくりとしたいと思います。

鳴海

 先ほどのスライドにOECDの「都市のクォリティーが都市の力になる」と出ていました。それが2001年のことだとありました。その3年前に、新アテネ憲章がヨーロッパで発表され、同じことが掲げられていました。この憲章に関係した人が書いたのかもしれないとちょっと思いました。

 先ほどのスライドにもいろんなことが出てきましたが、「都市のクォリティーが都市の力になるんだから、行政はそこに力を注がなくてはならない」と世界の都市が考えている時に、大阪市はいろんな再開発に失敗したという反省の気持ち(があるかどうかは分かりませんが)からか、まちづくりを民間に委ねていますよね。問題なのは、どうして失敗したかを充分に検証していないのではないかということです。経緯を振り返って、分析していない。「失敗したから民間の知恵に任せよう」というのでは発想が短絡していると思います。

 まちづくりにおいて、民間の知恵が出るようにするということは、必要なことです。しかし、それは、フリーにやりたい放題にということではないと思います。また、制度やその場所が置かれた状況から、知恵を働かせてもなるようにしかならないという認識であきらめてはいけないと思います。その壁を乗り越える知恵を働かせなければなりません。

 都市計画審議会というのがあります。名前から考えると、まちづくりについて審議をつくすところと思われてますが、実際には、案を可決するか否決するかという手続き的な役割が主となっています。実際の議論は議会でやっているのかもしれませんが、専門家が参加できるテーブルが無いのが実態だと思います。経済同友会は何度も市役所に話に行っているようですが、実質的な議論がされているのでしょうか。

 ヨーロッパの最近の都市づくりに関する思潮をみると、モダニズムの再開発の多くは失敗したという認識が強く現れています。そうした認識に立って、次代の都市づくりが論じられている。これまで大阪が都市開発で失敗したという認識があるならば、それをしっかり検証し、次の方法論を打ち出す必要があると思います。都市づくりの舵をきるのは、市民からそれを付託された行政の役割です。都市づくりを引っ張っていく役目を行政は担っているのです。

 佐々木さんのお話にあった「民有公共」の考え方も、企業がそれをちゃんと理解すれば動く可能性もあるのですが、今のところ市役所はそれを活用しようと考えていないように思われます。民間に任せっきりにしたいのが本音です。そうすると、仕事の負担が減るからという考えがあるのかもしれませんが。

 「民有公共」は、民間主導とか民間まかせではできません。やはり「公共」のリーダーシップが必要になります。こうしたまちづくりの動きが大阪では遅れているように思います。「民有公共」といった考え方には我われも非常に関心があります。JUDIとしてもその推進にサポーターとして取り組んで行きたいと思います。みなさんのご協力をよろしくお願いしたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。


■JUDIに期待すること

篠ア

 JUDIのみなさんのような専門家グループが、市長候補宛に公開質問などを出していただけたらいいと思います。私たち経済同友会も公開質問状を出すのですが、同友会は幅広く経済から市営事業の問題からいろんなことを質問します。ですから、公開質問の中では北ヤードは、質問のひとつということになっています。是非ともJUDIのような専門家グループからも、市長への公開質問という形で出していただきたい。それをJUDIのホームページで公開していただいたら、市民のみなさんにも広く知っていただくことができるでしょう。そういうことを期待しております。よろしくお願いします。

司会

 みなさん、どうもありがとうございました。これで今日のセミナーを終わります。

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