ソウルの都市再生の流れ
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ソウルの都市開発について

 

■清渓川は降雨時は危険!?

松久

 私は清渓川には2年ほど前に行ったことがあり、非常に感動したのを覚えています。ソウルのまさに中心部で素晴らしいことが起こっていると思いました。川が堀みたいになっていて、下の高水敷を歩いていたら急に小雨がパラパラと降ってきました。そしたら高水敷内に軽自動車が走ってきて「みんな上に上がって下さい」と言うんですよ。

 あの川は雨が降ったら増水して、水位が上まで上がってくるんですか?

 清渓川は、昔の朝鮮時代は幅がもっと広かったんです。しかし今はここに下水道が設置されています。大雨になると、この下水道から水があふれ出てくるんです。年に2、3回はそういうことが起こります。ですから、少しでもあふれてきたらすぐに掃除するようになっています。

前田

 じゃあ、松久先生は貴重な体験をしましたね。年に2、3回のうちのひとつですから。

松久

 軽自動車がすぐに走ってきましたからね。

 今年、その警告を無視した利用客たちが、増えたみずで道路が切れて孤立された事故が起こったのです。幸いにその利用客たちは救助隊によって無事に救助されました。このような事故が発生しないように、小さい雨となっても利用客を避難させることです。


■漢江の橋を歩道にしたことについて

土居

 漢江(ハンガン)にかかる橋が従来は自動車専用道路だったのを、歩道に変えましたよね。これはかなりドラスティックなことだと思います。というのは、ものすごい反対があったと想像できるからです。どういう手続きでそれが実現できたかを教えて頂きたいのですが。

 それについては、あまり反対はなかったんですよ。というのも全ての橋ではなくて、一つの橋だけで実施したからです。

土居

 京都の例では、橋の歩道部分を広げたいという話が随分昔から出ているのですが、地元市民から「そうしたら不便になる」とかなり反対されてうまく進んでないんです。

 車線を狭くして歩道を広くするのは、都心部の交通量の多い地域ではあまりないんです。

 また交通影響評価などをしてから計画を立ちますので大きい問題はないと思います。

 さらに、最近は車はちょっと不便になっても、歩行者の権益をより優先視する市民意識ができていると思います。先の発表の中にも紹介したソウル市庁の前の広場や南大門の広場も車の交差路を大部分なくして作り、自動車は通りにくくなったが、市民たちにはよく評価されています。また、光化門の前の広場も道路の半分以上なくして作った広場です。このように、オープンスペースに関する市民の意識が高まってきたことではないかと思います。私個人的な考えでは、これには清渓川開発の影響が大きいと思います。今の清渓川開発は、ソウルの都心高速道路をなくし、また商店街が集まっている都心地域の道路の幅を半分くらい縮小することからできました。計画の初期には商店街の商人や市民からものすごく反対されましたが、ソウル市とイ・ミョンバク当時の市長が商人と市民を繰り返して説得しました。今はは、だれも文句いわずによくしたと評価しています。


■デザインの基本原則を実現するためのシステムは

斉藤

 最後にお聞きしたいのですが、「22の基本原則」についていろいろご説明頂きました。それは、どういう制度(社会システム)で支えられているのでしょうか。

 ソウル市は条例を作って、条例の中で「ソウル・デザイン」のガイドラインを作っているんです。そのガイドラインも22の原則に則っています。

斉藤

 新しい事を起こそうというときに何かの審議会や事業内容を検討するための場はあるのでしょうか。必ずそこを通さないと、事業に着手できないとか。日本で言えば開発許可制度みたいなもので、手順としてそこをパスしないといけないという手続きのことですが。

 それは市の審議会が行います。審議を受けて、景観に影響を与えそうな看板などは制限を受けます。

 市の審議会が力を持っていて、許可や規制したりするということです。


■まとめ

鳴海

 今日は、金先生どうもありがとうございました。お隣の韓国から来ていただき、ソウルのまちづくりについてお話し頂きました。日本では、アーバンデザインをやっている人たちの関心がアジアに対してはあまりなく、アメリカやヨーロッパに向いていますが、アジアのこともちゃんと知らないといけないと思い、金先生が日本にこられた機会にJUDIセミナーにお越しいただきました。

 先ほどの政策の問題については、もちろん議論する必要があるとは思いますが、最近新しいニューヨーク市長の原稿を読む機会があり、その中で面白い話が出ていました。前のシンガポールの首相であるリー・クワンユーが、「世界都市賞」を設けています。この賞をニューヨーク市長が受賞しました。その受賞記念のためのスピーチ原稿です。その中にニューヨークは何を目指しているかということが述べられており、「ファミリー・フレンドリーな都市」を目指すという言葉がありました。ニューヨークは世界中から優れた人に来て欲しい、しかし家族が一緒でなければ誰もこない。だから、家族が住みやすい都市にしたい。そのことはニューヨーク市民にとっても大事だと思う。そんな内容が書かれていて、私はそれがなかなか面白かった。それを思い出しながら、今日のお話をうかがいました。

 そういう世界のいろいろな都市のまちづくりのポリシーを調べるのも、面白いかもしれませんね。また、機会がありましたら、アジアの都市についてもJUDIで取り上げていきたいと思います。金先生もソウルで頑張って頂きたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

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