この都市環境デザイン会議関西ブロックでは毎年10回ほどセミナーを行なっています。
このためにセミナー委員が10名ほどいまして、 その年の始めにいったいどういうセミナーで展開していくのかを議論するわけです。
今年はそのセミナー委員会の議論で前半は震災復興をとらえて、 そこから都市環境デザインを考えるテーマを設定してみたらどうかという意見が出ました。
そこで今年の前半4回から5回ぐらいは震災復興の現場から都市環境デザインを考えるというテーマで毎月1回続けていきたいと考えています。
今日のテーマは、 「環境における共同の意味を探る」です。
セミナー委員会の中でいくつか議論のあった中で「共同」ということについて考えてみようということになりました。
ここで、 私なりに共同の意味はどういうことかということを簡単に説明してみたいと思います。
共同というと共同体というような雰囲気を思い浮かべますが、 私たちはふつうの場合には、 なかなか共同という実態がつかめないようになってきていると思います。
つい最近までは、 社会的な人間関係が非常に強く、 日々の暮らしの中で共同性が生きていたと思いますが、 現在では社会の共同性というものが実感できる場面が少ないということが言えると思います。
ところが、 震災とか災害のような困ったことが突然起こると私たちは社会の制度に直面することになります。
たとえば、 交通事故や交通違反を起こすと何か制度とぶつかるというようなものです。
残念ながら災害の場合も同じで、 普段あまり気にしていないけれども、 災害になって社会制度というものに直面してしまうことになるわけです。
今回テーマにしていますマンションですが、 普段は共同住宅・集合住宅に住でいるのですが、 制度としての共同ということになかなか直面しないわけです。
しかし、 壊れたとなると直面せざるを得なくなります。
それから一緒になって建物を建てていかなければならないという制度的な問題もありますし、 ここでは再建ができないというような、 それまで思ってもみななっかたことに直面してしまうわけです。
言ってみれば、 困ったことが起った場面で今まで気にしていなかった共同性に立ち向かって、 その中で自分たちの共同のあり方を作り上げていかなければならないという状況になった。
そういう例がたくさんあるのではないかと思います。
そういう経験を知ることが、 まだ制度としての共同ということに直面していない多くの町にとって、 学ぶことが多いのではないかということから今回の企画となりました。
こういう問題は難しい面がたくさんありますが、 比較的順調にいっている事例をたくさん収集してそれを広く紹介することも、 都市デザイン会議の役割ではないかと思っいます。
そこで今日は御三方にそれぞれのご経験の中からお話しいただきたいと思っております。
長くなりましたが、 これで今年のセミナーの最初のご挨拶とさせていただきます。
今、 鳴海先生の方からセミナーの主旨についてお話しいただきましたので、 ご理解いただいたことと思います。
今日は主に住宅の復興のプロセスを通して「共同」を考えていくということで、 住宅再建における共同化事業を中心にお話を進めていきたいと思います。
今日来ていただいていますのは、 環境整備センターの石関さん、 都市・計画・設計研究所の岩崎さん、 現代計画研究所の江川さんです。
石関さんには戸建ての共同化による住宅再生のお話、 岩崎さんには街区単位での共同化による住宅再生の話、 江川さんにはマンション再建のお話をしていただきたいと思います。
最初のお2人の例では、 これまで別々の建物に住んでいた人たちが、 この困った条件の中で住宅を再建するためには一緒に考えていかなければならないという状況が起ったわけです。
そういう中でいったいどういう共同の経過があったのか、 あるいはそういった中でどのようなことを目指していったのか、 その結果、 今はどうなっているのか、 についてお話しいただければと思います。
マンションは、 本当はこれまでも一緒に住んでいた仲なのですけども、 ここにきて始めて共同だということを意識した人もあるかと思います。
そういう意味で再生していく中でどのように共同して暮らすという言葉の意味を確認していったのか、 そういうことも含めて再建のプロセスの中での共同の意味についてお話しいただければと思います。
では最初に石関さんからお願いします。