JUDI関西・96年都市環境デザインセミナー
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ケース(2)
プロジェクトA8C(芦屋市三条町)の場合

By 江川直樹

従後従前(現在とは算定基準が若干異なる)
敷地面積1466,70m21481,99m2
建築面積586,22m2692,44m2
建蔽率*39,97%
*現在修正中→ 総合設計の緩和事項が減ったので55%可となったため
46,73%(60%)
延床面積3534,42m23247,00m2
地上部延床面積 2858,74m23247,00m2
容積対象面積2881,37m23247,00m2
容積率193,46%219,09%(2種住專200%)
有効公開空地面積346,87m2
有効公開空地率23,64%
必要公開空地率率23,34%
専用床面積2551,32m22542,78m2
階数地下1階地上6階
一部3階,一部4階,6階はペントハウス状
地上5階
高さ20,73m
構造RC造S造
住戸数49戸55戸(54名)
転出者4名
公社分譲住戸0戸(空き1戸分をメゾタイプで1戸処理)
駐車台数20台+来客用1台
地下1階自走式平面駐車
4台
駐輪台数50台
竣工平成9年10月予定昭和44年5月
被災状況半壊(経済的全壊?)
再建手法兵庫県住宅供給公社に土地売却後, 公社から定期借地し定期借地権付の分譲住宅建設
事業主兵庫県住宅供給公社の事業代行

既存不適格部分その他(詳細は別紙参照)

  • 容積率→(現計画で容積率は基準内に変更)

  • 第2種高度地区高度斜線→(現計画で基準内に変更)

  • 日影規制 4時間ライン、 2、 5時間ラインオーバー→(現計画で基準内に変更)

    兵庫県震災復興型総合設計制度の適用(震災後3年以内に着工が条件)

  • 建蔽率  40%以下→今回45%以下に変更

  • 公開空地 一般総合設計から係数が5倍に緩和

  • 容積率  (今回基準内)

  • 日影規制 従前建物の日影ラインを超えない条件で、 許可
  • 斜線制限 道路斜線、 同量天空光の確保(一般総合設計と同じ)

  • 住戸面積 規定なし(金融公庫あり、 40m2 以上で従前以上で緩和)

  • 住戸日照 規定無し(原則冬至日4時間、 連続3時間以上)

  • 居室採光 緩和なし 上階セットバックの形態の採用

  • 集会所  規定なし

    芦屋市都市計画の緩和(芦屋市都市計画審議会)

  • 第2種高度地区高度斜線、 絶対高さ15Mの緩和(公開空地確保の為)

    芦屋市宅地開発等指導要綱(開発行為ではない)の緩和

  • 駐車台数 一般なら80%、 今回は40%(原則は敷地外で不足分確保)

  • 駐輪台数 (戸当たり1台で基準内)
    ただし、 スペース取れず、 屋外2段式サイクルラックを採用(使いやすさは?)

    優良建築物等整備事業の適用

  • マンション建て替えタイプで適応(戸数増、 又は、 住宅部分の面積増が必要)
    戸数減になるが、 従後の住宅部分の面積(地下駐車場は除く)が従前の住宅部の面積より多い(現在の算定基準で)ということでOK

  • 通常は、 調査設計費、 共同施設の建設費の2/3が補助(国1/3、 市1/3)となるが、 震災後の特例で、 補助率が4/5に引き上げられている。

    ただし、 震災後1年限りという条件で、 今回は、 基本設計、 資金計画、 土地測量、 権利調査及び権利調整、 土地調査のみが該当、 かつ、 芦屋市の資金不足(第8は予算措置外だったため)のため、 一部、 削られている(最終的に調整可能とのこと)

    (芦屋市のまちづくりコンサル派遣制度で、 別途、 ほんの若干、 補填されている-環境開発研究所(事業コンサル)で申請済み)

    また、 補助総額が20%(金利、 公社事務費は除く)限度と決められたので、 現在の事業計画書では、 20%でカットした内容になっている

    実施設計、 共同施設の建設費については、 2/3の補助率で事業計画を策定しているが、 何とか、 震災後1年以内の事業着手分については、 4/5の適用を願っている。

    (単年毎の出来高補助である)

    →2/21の国会で、 本年度分4/5補助が決定したが、 結果的に、 芦屋市は20%上限でカットされるため、 このように共用率の高いケースでは、 変わらずということになる。

    -(事業費算定は20%)

    兵庫県住宅供給公社の事業代行

    マンションの管理組合は法人格がないので、 工事や設計の契約は、 住民一人ひとりとの契約となるわけだが、 住民側の個人的トラブル(破産や夜逃げ、 支払不履行等)の可能性が、 事業者(住民)、 施工者にとっての不安材料、 事業挫折の材料となる

    また、 優建(前述)の補助対象者の問題がある

    さらに、 調査設計費、 工事費の部分払い金等、 住民の資金調達の問題もある

    そこで、 再建組合は、 事業の代行者として、 デベロッパーに委託するわけであるが、 デベとて、 倒産等の可能性があるし、 事業者にとっての利益的メリットもない

    公的機関がこの事業代行を引き受けることが望まれるわけだが、 なかなか、 人的問題が あって、 公団も神戸市住宅供給公社も出来ずじまいである

    兵庫県住宅供給公社のみ、 その事業代行を引き受けているが、 原則は、 神戸市以外の物件になっている(MCM等、 若干の例外あり)

    本件は、 公社も引き受ける数の問題があって、 年度最終のものとして、 引き受けていただいたようである

    本件の場合、 事務費としては事業費の4、 94%それに、 金利負担によって、 優建の受け取り、 調査設計費の支払、 工事の発注 転出者分の買い取りと販売 等を行う

    (ただし、 設計者やコンサル、 施工業者の選定、 発注金額の決定等は全て、 再建組合にまかされている)

    ただし、 原則として、 公的震災復興住宅や長寿社会住宅、 金融公庫仕様、 その他の仕様適合が必要(若干のやむを得ない例外は認められる場合もある)

    公社が事業主となるので、 開発協議や確認申請の点からも簡略化がはかられることになりそうである

    事業の経緯と仕組み

    本件は、 兵庫県住宅供給公社に土地を売却し、 後、 公社から土地を定期借地するかたちで再建マンションを建設するという形態である

    公社は、 今のところ、 基本的に定期借地権付マンション事業を行うつもりはなく、 再建マンションに限るケースとしている

    したがって、 この場合は、 空き住戸については、 公社は買い取りをせず、 住民サイドでの処理が求められる(戸数を減らすか、 持ち分を増やす)

    また、 土地購入に関して、 兵庫県からの利子補給を受けるので、 この点が兵庫県サイドでなかなか決まらなかったが、 公社自体は、 早い時期から、 その意向は表明していた

    (現在でも、 その詳細は未だ、 未定である)

    住民側では、 半壊認定であった(震災後も、 住民の半分は住み続けていた)ことから、 当初、 補修の検討を行っていたが、 必要な補修内容が大きすぎ(住戸内からの全面やり かえが必要で、 かつ、 耐震性も含めて、 従前の水準にしか戻らない上、 基準法上は大規模改修に該当するに加えて、 コスト上も補助が受けられない、 負担できない、 等の理由から、 実質、 経済的全壊と認識し、 建て替えの検討に入った。

    住民の平均年収は低く、 かつ、 低所得者も含まれていること、 多額の残債の人が多いこと、 等の理由で、 再建費用の少ない定期借地権を利用した再建を検討するに至った

    ただ、 そうはいっても、 年収2000万の人もおり、 他にも、 高収入の人も多くいて、 当初、 定借に賛同した人は、 そう多くはなかった

    再建理事会での検討、 毎週土曜日に行った総会での議論を経て、 全体が再建するために、 定借利用の方向に徐々にむかっていった。

    ちょうど、 その頃、 縁あって相談を受け、 他の件のこともあって単なる協力のつもりでいたが、 その後、 正式に協力要請を受け、 事業コンサルとして環境開発研究所、 (工事 は竹中工務店)との協同体制での協力の意思表示ののち、 他にも支援協力を表明したゼネコン(設計施工、 事業計画も含む)がいたことから、 総会の決議を経て、 決定された

    その後、 相続の解決がつかない人、 借家人との解決がつかない人、 抵当権問題、 その他山のような課題を解決しつつ、 進行したわけだが、 最終的にどうしても定借に賛同しない人が一人いて、 事業は挫折の危機をむかえた(芦屋市もH7年度中の再建決議は無理と判断し、 予算措置をとらなかった程)

    その人は、 地方赴任で貸家状態の人で、 理事会や住民がバスをチャーターし、 お願いに行ったほどであるが、 がんとして受けつけなかった

    再建決議だけなら4/5の賛成ですむが、 優建と、 定借、 公社事業代行については、 100%の同意が求められている

    芦屋市への優建申請の最終期限、 正月明けの1月9日の3日前の1月6日の総会で、 何とか同意の賛同が得られ、 その後、 事態は急速に収斂することとなった

    その後、 工費解体の延長が認められ、

    最終帰属先住戸の配分、 抽選、 その他、 引っ越し先の確保、 引っ越し先の見つからない人への支援、 その他の作業は、 住民が主体になって進められた

    従前とは異なる形態となるため、 従前の面積タイプをどう割り振るかが難問であり、 従前の状況と転出状況をはかりにかけながら、 何とか振り分けたものの、 従後の帰属先決定に際しては、 相当な困難が予想された(MCMの経験でその困難さが良くわかっていた)―公開空地確保のため、 東向きがなくなり、 南向きの戸数が増えるが、 従前どおり西向きも残る。

    また、 新たにエレベーターが設置され、 階数条件が変わる―

    そこで、 費用負担の出来ない人を救うことも考えあわせて、 従後の評価を行い、 相応の 価格差をつけ、 条件の良いところ(例えば、 6階ペントハウスで面積も3割増)は高く して、 資金の余裕ある人に抽選で配分し、 逆に評価の低いところは安くして資金の余裕のない人に配分することにした

    評価は不動産鑑定士に依頼し、 (方位、 階数、 窓の条件、 庭の条件、 他を考えて)平均的な住戸を100として、 すべてを評価した

    抽選方法等は住民が理事会で決定し、 総会の承認を経て、 プロ野球のドラフト方式の予備抽選、 本抽選で選択順位を決定する方法がとられた

    特に、 条件の悪いところを先に希望者をつのり、 優先させて、 逆に、 費用の多いところは、 希望者の抽選とし、 最終的に、 平均的な住戸の抽選をおこなった

    本ケースでは、 公開空地の確保のため、 従前5階建てが6階建てになり、 芦屋市の都市計画審議会で高度地区の絶対高さの緩和を受けるわけであるが、 案の定、 近隣住民からの反対(6階になるということで)があり、 敷地境界の立会が拒否された

    最終的に転出者が数名出ることがわかったので、 その分の地代負担は増えることを覚悟で、 戸数減を行い、 6階部分を8ユニット上に4ユニット・6スパンとし、 壁面からセットバックさせるペントハウス形式で納めることにした(結果的に、 容積に関しては基準内に納まることになった)

    帰属先抽選の直前に、 さらに一人の転出者が出たので、 2ユニットをまとめて1住戸で買ってくれるひとを募ったところ、 5階横2ユニット連続の希望が2人、 1、 2階メゾネット希望が一人あらわれ、 全員の意見聴取の結果、 1、 2階メゾ希望の人が権利を得て、 空き住戸の解決がなされた

    土地全部を公社に売却するわけであるから、 その時点での、 抵当権の抹消が必要になり、 この部分のヒアリングに時間がさかれ(プライバシー上の事なので、 環研がこれにあたった)、 結果、 その対応が微妙であった。

    特に、 残留希望の一人が多額の抵当権があり、 ギリギリまで、 問題であったが、 何とかなりそうというのが今の状況である→現在、 な お、 調整中

    一般的に、 抵当権の一時的取り外しに関しては、 金融機関の理解(統一的理解)が得られたことがなんといっても大きいし、 個別の特殊対応もこの延長線上にあると言える

  • 定借については、 (前述のように、 細かな詳細は未定であるが)

    基本的に土地売却代金受領の後、 新たな敷地共有持ち分に応じて、 土地相当額の2割を補償金として預け(50年後の建物除去費等に相当が考えられる)、 残りを、 新たに建設する住戸の個別負担に充当することになる

    不足分については、 本ケースでは、 平均的住戸(従前とほぼ同等面積で)で、 今のところ400万円ぐらい(効用率で1、 0評価の場合)と考えられるが、 今後、 優建の共用部分の補助の引き上げ(2/3→4/5)、 工費解体の適用(これが大きい)等によって、 さらに減ると思われたが、 最終的には、 前述の20%カット上限のため、 変わらない模様

    また、 前述のように、 評価の低い住戸で、 従前より若干面積減の人の場合、 新たな負担ゼロで再建後の住戸確保が出来ている(これが、 目的のひとつ)

    毎月の地代は、 標準で1、 3万円(1〜2万円)ぐらいの範囲で納まるもよう

    (兵庫県による、 公社に対する土地購入資金の金利補助は、 結果的に地代の金利負担ということか?)

    住戸のプランニング

    標準設計からの、 施工途中でのの変更は手続き上困難とのことで、 着工までに49戸のヒアリングによる個別変更設計を行った(ただし、 対象はあくまでも部屋の構成等、 空間の作り方に主眼をおいたものや、 従前の特殊スタイルの再現等とする・・一人、 震災直前に立派なキッチンシステムで改装した人がおり、 再利用の希望が強かったので、 対応することにしている他、 いわれやゆかりの天板等の再利用も図っている)

    その範囲で、 色や柄等は工事途中でのセレクション方式としたい

    その他

    2月17日、 再建決議完了
    MCMスケジュールにならって8月中旬、 着工予定
    しかし、 兵庫県の定借に関する補助の詳細が未定のため、 土地の売買契約の時期が未定であり、 その後のスケジュール対応も未定
    設計監理    現代計画研究所
     事業コンサル  環境開発研究所
     施工      竹中工務店
     事業スタイル  兵庫県住宅供給公社に土地を売却、 定期借地権で共同住宅の建設
     事業代行    兵庫県住宅供給公社
     環境とデザイン 周辺は1戸建主体の場所で、 従前から真っ白の5階建ての大きなマスが問題だったので、 6階のペントハウス化を含めて、 ファサード、 仕上げの分節化、 色も含めた周辺スケールのコラージュ化を考えている

       

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