お花がきれいとか自然がどうだとか言いながら、 自然も感じられないような素材を使いながら計画されてしまったビオトープや花壇が多いような気がします。
それが当り前のようになっていくと、 敏感な人は、 風が吹いたら涼しいなあとか感じることができるけれども、 人間の感覚を呼び戻そうとするならば、 むしろおおげさなくらいに“におい”がするとか、 “風”がそよいでくれるとか、 そういう五感を呼び戻すための装置づくりを、 オープンスペースで行なうことが必要だと思います。
花の植物館ではそういうアプローチでやってきました。
感動するという事は必ずしも純粋に自然に触れることからだけではなくて、 ある人は食べることから植物が好きになったり、 ある人は染色に興味があったりと、 いろんな人がいろんな方向から興味を持つわけで、 とにかくまず自然の事に興味をもってもらうための一つの装置として、 この植物館をつくりました。
中では年間10回フラワーショーをやっていたのですが、 きれいに飾って、 派手にやっているなあというのが外での評判だった思います。
しかし私はその中で、 今の日本の園芸や造園に対していろんな事を提案してきました。
結構最近は日本の園芸も良くはなってきていまして、 多品種少量生産の方向になってきましたが、 かつては園芸なんかでも経済効率に合わせて少品種の原色の花をたくさん生産することしかしていなくて、 そんな苗を使って公園なんかを飾っていました。
そうじゃなくて、 もっと五感に感じるような園芸をして行こうと考えまして、 それを探っていくと、 野にある花にたどり着いたのです。
しかし今はその野にある花と言うのがなくて、 野にある花の演出をして行かなければならないのです。
それをこの花の博物館でやりました。
空間的には内部空間の外部空間化、 外部空間と内部空間の一体化を行い、 そのための技術的実験も行いました。