一般的には、 さっき言った景観行政のなかで、 たとえば景観形成重点地区とかいった名前を付けて、 行政的に裏打ちしようということになるでしょう。
こうしたケースのモデルとして計画時での試行が注目されるわけです。
幕張は全部で8住宅事業者が建ち上げるわけですが、 最初の事業の枠組みのところから、 デザイン的にコントロールしようという仕組みができています(図6)。
ここには7人の計画設計調整者と呼ばれるアーバンデザイナーがおり、 言い方はおかしいのですが、 その下に建築家がいるわけです。
その計画設計調整者が集まる会議があります。
フォーマルなものとしては役所側が持っている計画デザイン会議がありますが、 計画デザイン会議だけで色々な調整ごとを決めようとしたら、 何時間あっても決まらない。
しょうがないから、 我々が任意に集まっては横の調整をし、 会議に持ち上げることにしました。
大体6時頃から始めて夜の10時半くらいになるのですが、 全くみんな好きだなあと言うほかありません。
そういうのを正式にやったというものだけで65回やっています。
その分科会みたいなものも含めると100回以上やっているんじゃないかという感じですが、 それでまだ半分も進んでいないくらいです。
その結果としてのデザインがどうかは別として、 複数主体がまちづくりに関与するということがどういうことなのかという実験という意味で、 今言ったことも含めて非常におもしろいケースが現在進行中であります。
これは必ずしも事業として成功しているとは言い切れませんが、 東京の東五反田地区での複数主体のいろいろな土地利用転換とか、 川崎の駅前とか、 何カ所か非住宅系の同様の試みがあります。
私がお手伝いしてきた日立なんかも、 非住宅系です。
あれは事業コンペとかいろいろなものを含めてやっていて、 プロデュースとかコーディネイトが大きな意味を持っています。
しかし実際に動かすには、 計画ガイドラインが必要です。
つまりマスタープランがあってどの道路からは取り付けの道をとっていいとかいけないとか、 道路からの壁面後退はこうしろとか、 高さがどうだとか、 そういった項目です。
しかし、 それだけでは形態コントロールにはならない。
デザインガイドラインが必要だという感じになってきました。
デザインガイドラインが必要か必要でないかということには議論の余地がまだあります。
例えば磯崎さんが香椎浜をやったときには、 デザインガイドラインを作ったのですが、 建築の方がどうもぱっとしないものだから、 「デザインガイドラインをはずすからおまえら勝手にやれ」といって、 勝手にやらせたと聞きます。
デザインガイドラインでデザインを縛るのは余りよくないというのが磯崎さんの意見のようです。
確かにデザインに緊張が欠ける気配が出てくるのは、 どうもそのような気もしますが、 しかし幕張の場合にはガイドラインがあった方がいいということが非常にはっきりしてきました。
たとえばその一つにデザインガイドラインがないと事業者をまずコントロールできません。
つまり、 ガイドラインに従うということで各事業者が他の事業者と違った走り方をしないことが副次的な効果としてあるのです。
あそこのデザインはガイドライン違反ではないのかということを実は他の事業者のほうから指摘されることがあります。
あれを認めるなら俺の方もこういうことをやりたいということが出てくるわけです。
他の事業者がやる事業についても、 どうなると自分に有利に働くのかということを事業者も常に考えながらやっていますから、 ガイドラインを守るなら守ってやりたい、 はずすなら全部はずしてやりたいというような反応が返ってくるのです。
いずれにしても、 マスタープランだけではだめで、 デザインガイドラインはいるなという感じは持っています。
20年も前ですが筑波でもガイドラインを作ってみたのですが、 なかなかうまくいかない。
あれは計画標準という言い方ですから、 計画のガイドラインですが、 それですらなかなかうまくいかない。
逆に言うと、 運用する人間が非常に硬直的に扱うと、 硬直的な街にしかならない。
あの筑波は私も頭半分くらい丸めなければならないのですが、 今後、 幕張のようにもう少しうまく使われてくると、 一般の街並み、 市街地の中でも使えるようになるかなという感じです。
ところで数年前に、 横浜で国際デザインフォーラムがありました。
あるパネルで、 サンフランシスコのミッションベイの住宅地で、 マスタープランとデザインガイドラインを作ったSOMのアーキテクト・プランナーと、 ヨーロッパのリールの都市デザインマスタープランを頼まれていたコールハウスが、 大議論をやっていて興味深く聞きました。
デザインガイドラインというものが必要か不必要かということや、 あるいは、 デザインガイドラインで様式とかデザインのスタイルまで決めているのはやりすぎではないかといった議論で、 コールハウスがかみついていました。
今後デザインガイドラインがどういう形で扱われていくのかということは、 建築家の能力との問題もあるでしょうが、 まだまだ試行と議論が必要な段階ではないかと思います。