ブルガリアの住まい by ミレーナ・メタルコヴァ
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IV

ブルガリアのルネッサンス

画像bu14     ブルガリアのルネッサンスは17世紀、 主にオスマン帝國の封建時代後期の、 生産力と関連しています。

国家と軍隊の成長の必要性から、 地方の経済の発展が促されました。

ブルガリア民族は、 商業活動に活発に参加し始め、 ある者たちは帝國の商業の中で重要な役割を果たします。

ブルガリア民族は都市に戻り出し、 18世紀末までに、 全市民の25〜50%が戻りました(図13[略]、 14)。

 

    5世紀以降のブルガリア国家、 つまり長期の奴隷制度は、 落ちつきのない歴史の中で形成されたブルガリアの顕著な特徴となっています。

また、 厳しい自然の下での生活、 家庭内で両親を尊敬すること、 尊敬すべき伝統的精神、 文化と教育に対する深い尊敬、 勤勉さと質素さは、 特徴的です。

 

画像bu15     ルネッサンスの浸透は、 自然な動きであったと同時に、 はっきりとした調整の中で進められ、 環境と有機的に結びつくスケールを確立しました。

ルネッサンス期の都市は、 均整のとれたパノラマ的な構造を持ち、 自然と融合しています。

だいたい、 それらは、 山の斜面の谷間か、 河川の蛇行部の土手に配され、 全体が植物で埋められています(図15)。

 

画像bu16 画像bu17     それらは、 周辺部から完全に区域化され、 工業、 商業、 居住の区域になっています。

街路は土地構成に従ってカーブし、 必要に応じ、 道幅は変化します。

広場は絶対的なものではありませんが、 大きな定住区域の中では、 明らかに意図された建築的な中心核となっています。

そして、 だいたい、 どこでも二つめの広場があります(図16、 17)。

 

画像bu19画像bu22     住居はルネッサンス期の建築の中で大きな役割を占めています。

なかでも木造住居は、 最も特徴的です。

その起源をバルカン諸国のスラブ民族の建築的伝統にまで遡ることが出来ます。

ブルガリアの住居の建築様式には、 異なる特徴に従って、 多くの分類がなされます。

地理的区分、 建築材料の種類、 主要な空間要素、 機能的特徴(隠れ場所、 ベランダのある開放型と、 ホールのある閉鎖型)、 構成的な手法(対称、 非対称)、 社会的特徴(田舎と都市部)などです(図18[略]、 19、 20[略]、 21[略]、22)。

 

    初期には、 住居はただ一つの空間しか持っていません。

すべての人間活動を包含する原始的な功利主義と言えるでしょう。

後に、 ベランダの前身である部屋がつけ加えられます。

その後、 「ソバ」、 つまり、 寝室に変形する食料庫がつけ加えられます。

次の段階では、 その家は3階建てとなり、 その中に2、 3の「ソバ」を持ち、 さらにそれ以外にも貯蔵庫と牛小屋を別棟で持ちました。

部屋は完全に、 ベランダと二階の食堂に続く廊下になります。

住居の機能分化は徐々に洗練され、 店舗は街路に向かって開くようになります。

このように徐々に、 ブルガリアのルネッサンス住宅の古典的体制が確立されていきます。

 

    ルネッサンス後期の、 田園住居と都市住居の分化が、 進展する階級分化によっておこります。

なぜなら、 両者の生活過程の仕組みや、 建築的手法には根本的な違いがあるからです。

 

画像bu23     ルネッサンス期の建築様式は、 中世の建築的伝統に関わっていて、 特に、 住居におけるバンスコ、 アルバニッシ型に関連しています。

住宅の外観は、 建築的法則により構成されています(図23)。

 

画像bu24     ファサードのデザインは、 上下の床の分離によって処理されており、 水平方向の分節化が支配的です。

二階の床が一階の上にベイをつくります。

その軒は通りの上に張り出し、 ベランダの水平性と、 開口部の水平性は、 典型的な特徴となっています(図24、 25[略])。

 

    また普通は、 ファサードと開口部は黄金比に従ってデザインされ、 様々なデザインの煙突が形に多様性を与えます。

これらルネッサンス期の住宅の特徴は、 建築を非常に造形的なものとし、 街路の姿を豊かにしています(図26[略])。

 

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    ルネッサンス期の住宅の分析においては、 二つの構成的な手法が確立されています。

つまり、 「開」と「閉」による分類です(図27、 28[略]、 29、 30、 31、 32、 33〜35[略]、 36)。

さらにそれは対称、 非対称に細分されます。

開放型では、 非対称に解決する、 地方の住居が典型的であり、 一方、 閉鎖的な都市型では、 対称的なものが支配的です。

 

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    建築においてそれを反映した、 ルネッサンス期の修道院では、 機能や空間構成に幾つかの変化があります。

中世の修道院は、 ふつう周囲から隔離的に、 または単独で配置され、 文化的な価値や伝統が守られ続けています(図37、38、39、 40、 41[略])。

ルネッサンスの精神は、 それらの修道院を現実的、 或いは世俗的な方向へ誘導しており、 多くのスクールがそこにつくられ、 ブルガリア人に人気のある巡礼地となります。

ブルガリア人はその国家性を、 宗教的属性によって示しています。

 

    この過程は、 修道院の組織に根本的な変革をもたらします。

巡礼者を迎え入れるための、 おびただしい数の空間が作られます。

つまり、 寝所、 食堂、 大きな台所、 そして大きな教会です。

これらの修道院に見られる典型的な特徴は、 自然との有機的な結びつきです。

それは、 地理的特徴、 自然による建物の経年変化、 スケールや空間構成の新鮮な雰囲気からくるものです。

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