まずはインド門です。
イギリスがインド統治のシンボルとして建設した門です(図1)。
いまムンバイは1200万人の大都市ですが、 ここは東インド会社の本社がおかれたところです。
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ここのおもしろいのは街の中を歩くと非常に本格的な英国のタウンハウスのような建築物があります。
中小のストリートまで含めてイギリス人が理想とした都市づくりがなされています。
建築あるいは都市計画の専門的な立場からすると、 自由に絵を描いて全く思い通りの建築や街路を実現したといううらやましいような、 理想的な街であったわけです。
しかし、 現在歩いてみると、 一見するとほんとにすばらしい西欧的都市に見えるのですが、 そこに住んでおられるインド人の住まい方や、 そこからにじみでてくる生活というものをよく見てみますと、 どんな建築をもってきても全てインド的空間になってしまうというひとつの典型ではないかと思えてきます。
街路もしっかりしていて街路樹も植わっているのですが、 それはいわゆる西洋的な街路樹ではなくて、 なんというかインド的な大木になっています。
街路樹に神様がいついてしまうのです(図3)。
ヒンズーの人たちは少しでも隙間があればどこにでも神様を置いておくというようなことで、 決して図面で引く都市計画のように「ここに街路樹を何メートル間隔で置く」というような空間にはならないのです。
西洋近代建築も使われる中でインド化します。
1階が店舗、 2階がオフィス、 3階以降が住宅というような市街地の典型的な建物ですが、 ちょうど2層分くらいがコリドールになっています(図4,5)。
外からは何となく西洋っぽいのですが、 よく近づいてみると非常に煤けています。
それが廃墟になっていくものなのかといえば全くそうではなく、 こういう煤けたままの生活でひどく高密度な住居になっているということです。
超高層のオフィスがあり、 9億の人口を抱えて経済的に大躍進しているインドの現在の姿に対し、 写真の手前にある3階建ての店舗併用住宅も非常にしっかりした建物ですが、 完全にインド化した風景がここにはあります(図6)。
ムンバイのひとつの対比が見られると思うのです。
このようなビルは決して特殊なビルではなくて、 ずらっとどの通りにもありました。
本来イギリス人が自分たちのためににつくっていたビルが、 インド人たちの庶民の生活空間になっているというわけです。
駅にはすごくいい建築が今も残っています。
ビクトリア駅もそのひとつです(図9)。
ですから道路は、 動物と人間と車とが全く対等に存在するような空間なのです(図10)。
通勤ラッシュの風景にいるこの犬は、 死んでいるのではなく寝ているだけです(図11)。
犬の手前の方に人も同じような格好で寝ています。
通勤のときのインド人はものすごく足が速いのですが、 見事にこの犬をよけて行くのです。
犬の方でもすれすれで当たりそうになっても1センチくらい動くだけで、 あとまたすぐ寝てしまいます。
こういう鈍感さというのは世界でも珍しい。
乞食のかたもそういう感じです。
どういうわけか道路の真ん中に教会がある。
日本でもたまに道路の真ん中にほこらがあったりしますが。
路上のペインターもいます。
見たのはものすごくへたなペインターでしたが、 こういう人もいるわけです(図12)。
キリスト教徒の人たちの多い地域でムンバイの庶民地区の裏風景にはやや西洋的な生活の匂うような路地があります(図13)。
2階建てから3階建てのタウンハウスがあり、 右側の建物は割と日本でいう町家風です(図14)。
これもショップハウス風というか町家というか店舗併用中層住宅のようなものですが、 ここでもやはり切り取り建て替えが見られます(図15)。
あたり全体が衣料品のストリートで衣料品の市場も奥にあります。
特にサリーなどの衣料品関係の卸売店が密集するすさまじい市場です。
荷台を運ぶ人たちのかけ声のすごさと、 その運び方のうまさ。
周りの人にぶつかる寸前で方向を切り替えていくという、 そういう道路のもっている多様な空間、 緊張感というものを見ることができます。
ふつう1階が店舗で、 商人に貸し出すのです。
そのテナント料でお寺の維持をしていくという。
そのような手法が多いのです。
宗教と商業というのが共生関係にあるといえるのでしょうか。
おおらかです。
ここのすごさは野菜から肉、 そのうえペットなども扱っているところです。
これは水飲み場兼、 休憩スペースです(図19)。
市場のかたちとしては壁面に対して階段状に商品を並べていくというやり方です。
かなり高い位置まで商品を並べています(図20)。
このやり方は間口に対して商品をたくさん置け、 ディスプレイ効果があります。
もっと強烈なのは商品で埋めつくされて台の上に人が乗って売るやり方です。
商品をうまく避けながら上まで登って行きます。
かなり大量の卸売りがありまして、 扉つきの倉庫もあり、 ディスプレイもあり、 なかなか迫力のある売り方をしています(図22)。
肉売場では、 競りをして解体してそのまま売っています(図23)。
東南アジアでも同じです。
鳥を買って、 そのまま持ち帰る人が多いのですが、 その場でさばいてもらうこともできます。
このあたりでは大きな集合住宅で、 ここは入り口になっております。
表が商店に面して並んでいて、 中に入ると中庭があります(図26)。
このかたちの集合住宅がけっこう並んでいます(図27)。
子供たちもこういう中庭で遊んでいます。
門番のいるところもあります。
少し高級なところではコミュニティの注意事項なんかも書かれています(図28)。
見本市というからには大きなテントなどをもうけてやっているのではと思ったのですが、 実はそうではなく、 もともとある衣料市場が大インド展のようなテキスタイル展をやっていたのです。
いわゆるメッセです。
一般の人が来るのではなく、 いわゆる業者間の取り引き会場で、 宝石の問屋街などが接しています。
おそらくメッセにあわせて街のディスプレイをしているのだと思います。
メッセ会場です(図31)。
一軒の間口はせいぜい3メートルです。
5〜6人の家族経営だと思うのですが、 取り引きの話などをしています(図32)。
日本でいうジオラマみたいな演出をした屋台も出されます。
聖書の一幕を中のミニチュアで再現しているわけです。
このようなものが祭りの期間中でています。
ここでも五茫星が飾られています。
家と家との間にロープを張って電飾にします。
そのような祭りを見ると、 そこに住んでいる人と商業との融合がよくわかります。
ムンバイにて
理想の計画都市
ムンバイから始めます。神のやどる木
路上の風景
インドの道路は歩道と車道が一応ありますが、 人はあまり歩道を歩きません。宗教と商業の共生
後ろの方にモスクが見えますが、 ムスリムの人たちの多いところです(図16)。売ることの迫力
集合住宅
テキスタイル見本市
衣料の市場では、 ちょうどインドのテキスタイルの見本市をやっていました(図29)。インドにおけるキリスト教
先ほどの教会の裏道に入ると、 キリスト教徒の住民が多く住む地区でクリスマスが祝われており、 五茫星の飾り付けをした道が多くあります(図33)。
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