石橋の街と私との関わりは、 すでに13年になります。 学生時代にこの近辺に居住して、 卒業してからも行きつけのお店に通ったりしているわけです。
まず作成した石橋の地図をご覧下さい。 集積エリア線で囲んである部分が、 これから報告する街です。 密集市街地ではあるのですが、 私の目から見てまたユーザーやそこで営業する人びとから見ても、 なかなか魅力豊かな街です(図1)。
立地は大阪府池田市、 阪急宝塚線の急行で梅田から20分足らずの距離にあります。 駅は宝塚線と箕面線の分岐駅で、 93年の実績では1日平均5万5千人の乗降客があります。 この規模は、 阪急豊中駅や阪急川西能勢口駅に拮抗するものです。
周辺の主な施設としては、 阪大の豊中キャンパスをはじめ学校施設が多いようです。 土地利用の面では、 西方の伊丹空港に向かって大小の工場がありますが、 総じて住宅市街地が街の周りを取り囲んでいるということになります。
石橋の街は、 住宅を混在させた商業集積です。 周辺居住者の市場、 マーケットだったり、 サラリーマンや学生など駅利用者の盛り場、 また中高生の社交場でもあります。 繁華街が駅前から半径500mの円内に密度高く展開しているというのが、 石橋の簡単な概要です。 こうした住商混在型の密集市街地は大都市近辺、 それも都市計画の中で商業地域や近隣商業地域に指定された所ならよく見られるものです。 成り立ちとしてそうした街は、 戦前から戦後にかけて旧来型の商店街がそのにぎわいをリードしてきた街と言えます。 しかし、 近年は商店街の危機が言われています。 ある報告では全国の商店街のうち9割が停滞もしくは衰退していると伝えている通り、 非常に深刻な事態を迎えています。 後継者問題とか空き店舗、 地上げ活動による空き地の続出などが主な問題となっています。 こうした商店街の危機は地方都市に行くほど顕著で、 支持人口の分厚い大都市近郊ではそれほどではないものの、 だからといって今後発展が見込めるのかというとなかなか難しい状況です。
そうした一般的傾向のなか、 石橋はなかなか元気な街と言えます。 これまでに何回か危機が商業者の間に広がったことはあるのですが、 そういう時も「なんとかなるんじゃないか」という経験も重ね、 逆に自信を深めています。 地図に波線で示した「アーケード通り」(約400m)に店舗が60以上ありますが、 空き店舗が数件しかないことなどは商店街の活発さを証拠づけていると言えるのではないでしょうか。
そうした元気さ、 にぎわいを持続できた理由の一つには、 商圏がしっかりしている(大都市近郊、 学生街)ことがあります。 加えて、 利用者のニーズに応えられる店舗が一通り揃っていることが指摘できますが、 それ以外の理由としてこの街独特の空間構造が、 商業の街としての魅力に少なからず貢献しているようです。 言い換えるなら商業集積としての才能みたいなものが、 この街にはしっかりと根付いているのです。
では、 次にそうした石橋の空間構造と、 そこから生じる商業集積の魅力について、 写真を見ながら説明していきます。
1 石橋の概要
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