石橋は一言で言ってラッキーな街だと言えます。 学生街かつ住宅街を後背させた商圏基盤の安定に加え、 これまで述べてきたような街の空間構造が商業のまちとしての耐久力に深く寄与していると思われます。 ただし、 今後商店街を取り巻く状況を見ていくと、 防災の問題や商店街を取り巻く構造的な難しさもあります。 さしもの石橋も、 将来に向け何らかの手を打たなければならない時は、 必ず来るでしょう。 アーケードにカラー舗装したというから見に行くと、 アスファルトにペンキを塗りたくっただけだったりして、 もうちょっとがんばってほしいと思います。 密集市街地の対処としては、 木造建物が多く古い市場もあることから、 阪神淡路大震災規模の地震が起きたときには倒壊、 火災も起こりやすいわけです。 抜本的に街を作り直そうとすると、 すぐ思い出されるのが再開発事業等の大規模施設の建設や広大な駅前広場の整備です。 しかし、 この街の場合、 すでに備わっている商業の街としての才能を、 生かすかたちで整備を進めたら、 というのが私の考えです。 大がかりな再開発を行った場合、 道路の拡幅で今ある細街路ネットワークも寸断されてしまうでしょうし、 店舗の経営の仕方もこれまで通り柔軟に、 とは行かなくなるでしょう。 意図して手に入れたものではないにしても、 長い年月をかけて備えたこの街の魅力や特性を失うのは、 あまりに惜しいと思うのです。
そうなると街の更新手法としては、 自力単独の建替え、 それに小規模の共同化が有力な手法になります。 先ほどスライドでも紹介したようにゲタバキのワンルーム集合住宅に、 ポツポツと建替えが進んでいることは、 将来を見通すときに順調な方向に進んでいると理解できるわけです。
もう一つの点では、 やはり商業のまちなのですから、 もう少しがんばって街をきれいにしてほしいと思います。 スライドで見た小川に代表されるように、 環境要素としてはいいものを持っているのですから、 それらを有効に活用していったらどうかと考えています。
こういうことは僕が言ってもどうにもならないことで、 これまで述べてきたようなこの街の繁栄の理由や条件を、 街に関わる営業者や自治体の人たちに共通認識として分かっていただくことが、 真っ先に必要と思います。 そうした場で、 さてどうしようと考えるなかから、 石橋なりの将来の方針が見えてくるのではないかと思います。
以上で、 私の報告を終わります。
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