密集市街地の居住空間
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1 密集地のとらえかた

改行マークまず密集地とは何かということから始めましょう。

改行マーク最近にわかに密集地問題が「全国区」になってきましたが、 これにはいろんな捉え方があります。 通常は「木造住宅により建て詰まった市街地」を密集地と呼びますが、 これは、 空間的には身近な道路や公園等の公共施設が未整序で、 かつ、 住宅が建て詰まり状態にある地区と定義できます。 図1に示すように、 道路基盤と住宅条件の両面において低質であることに、 加えて密度(建ペイ率、 人口密度、 世帯密度等)の高い市街地であるといえます。 概して住環境や防災上低位にある市街地と言えるでしょう。

改行マーク道路の整序状況は、 市街地の形成の沿革と関わっている。 道路には、 骨格となる道路と、 生活を支える地先ともいえる区画道路の二つのレベルがあります。

改行マークまた、 密集地の住環境評価には二面性がある。 確かに、 延焼不安や住宅の狭小性、 老朽性等の問題があるが、 一方で、 暮らしやすいという評価も高いのであります。

改行マーク同じ密集地といいましても、 その類型により違いがあります。 ここが一番のポイントです。 よく、 密集地をひとくくりにして一律に防災上の改善を施せばいいのだということになりがちですが、 実際はそうではない。 市街地の形成過程や住宅の種類や、 住民のなりわい(生業)、 その生活基盤も見ておかないといけません。 特に道については、 まちの形成が近世以前の場合にはそのころの町割をひきづっている。 現代の町は、 それぞれの時代の土地なり、 道の水準を反映している。 都市化段階にはいって、 急速な住宅がスプロールしたということがあります。

改行マーク市街地を評価する場合、 道路インフラとしての骨格の状態はどうなのかということと、 もう一つは地先道路、 住宅の前の道路を見ておく必要があります。

改行マークまた密集地の住宅といいましても、 住宅は、 長屋、 文化住宅、 木造共同住宅のほか戸建住宅もあります。 住宅もバラエティがあります。 長屋に至っては関西では数百年の歴史があります。 これも間口と奥行き、 長屋の形態、 広さ、 前庭、 後庭等の相隣環境の点でも多様であります。 そういったものの集合性や密度をあわせて見ておく必要があるでしょう。 こうした条件の違いにより町並みの空間的様相や住環境の違ってきます。


密集地の防災意識

改行マークそれから密集地は延焼危険性など防災上は確かに良くないのですが、 そこに住んでいる人たちからすれば暮らしやすいといわれています。 住民からみると機嫌よう暮らしているので、 「そっとしておいてくれとか、 手を付けてくれるな」という意見が多くみられます。 もっとも火災には非常に敏感でして路地裏にはよく防火用水用バケツが置かれています。 大火の時には実際にはあまり効果がないと思いますが。 しかし安心感というか、 火災に対しては自分たちで守るという共通意識があるといえます。

改行マーク京都の町中を歩きますと、 路地には至る所に防火用水バケツをみかけます。 大阪でも生野区などでは防犯、 防火用の自主組織があり、 防火用水バケツがあります。 路地には、 このほか鉢植えがあったりして、 ここは自分たちの町だという領域意識が働いています。

改行マークですから道にしても自分のものという意識が強い。 公衆用道路で、 みんなが普段から通っているのですが、 自分の所有地、 自分の道だと考えている人が多いのです。 これが自分たちの町、 暮らしやすい町という評価につながっているといえます。


近年の問題点−高齢化

改行マークしかし近年は若い人たちが出ていって、 密集地に新たに人が入ってこない。 高齢者だけの町になってしまっています。 かつてはこの地域は家族が4〜5人という比較的大規模家族が多く、 住宅を使いこなしてきたのですが、 世帯分離、 子供の独立、 結婚など地区外に転出し、 お年寄りだけが残るといった構造になっています。

改行マークこれまでは人口は減少しても世帯数の減少にまでは至らならなかったといえます。 その点において地域を支えてきたという面があります。 これからは高齢者世帯が中心となり、 こうした方が亡くなると世帯数はゼロになる。 つまりこれからは人口減イコール世帯減になることを意味する。 相続者がそこに住み続けるかというと、 それは疑問であります。 財産としては相続するけれど、 そこには若い人は住まない。 共有の相続が空き家になるか、 倉庫になるか、 つぶされて駐車場になるかというケースが予想されます。

改行マークですから居住の継承を図ることが非常に困難になると思われます。 複数人の相続者がいる場合、 相続放棄により一元的管理ができればよいのですが、 これを処分することになると、 土地利用の転換などに発展することになりのですが、 最近はどうでしょうか。 家族の問題、 住まいの問題、 血縁の問題が絡み、 長屋住宅の継承・維持も曲がり角にあるといえます。

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