淡路を支える風景
棚田のある風景もそうです。
震災の時、 馬鹿なカメラマンは人の不幸を撮って、 「どうだ」と報道してましたが、 もっと素直な普通の風景の写真も撮れと言いたいのです。 淡路の良さは棚田とため池なのです。
写真9は淡路島の南にある集落です。 妻篭のように観光一辺倒の集落保存ではなくて、 何気ない集落を大事にしたい。 良いところがいっぱいあります。 震災でやられたところのすぐそばにも、 良いところが残っています。 地盤が悪いところは昔の人は避けていたんです。
関西の大学の知人もデザインサーベイをやりに来ますが、 古い庄屋の屋敷をサーベイして帰ってしまう。 そうではなくて、 普通の何気ない民家をサーベイしてほしい。 写真10も、 道があって緑の木陰があって、 いい風景です。
淡路では写真11ぐらいの豪邸を建てないと男になれないと言われます。 私は3000万ぐらいの家を建てたのですが、 「そんなチンケなの建てて恥ずかしくないのか。 山田さんも男にならんといかん。 今度、 1億ぐらいのものを建てるときはワシが面倒見てやる」なんて言われてしまうわけです。 あんたには一生世話にならないからってところです。
それはともかく、 豪邸ではなくて手前の道を見てほしいんです。 いい道です。
淡路で10年とか、 15年ぐらい前の写真を役場の人に見せると、 「これは戦前の写真ですか」なんて言われることがあります。 すぐに風景を忘れてしまうのです。 下手でもなんでも、 記録しておくことが重要です。
いい家の写真がいっぱいあるでしょう。 いっぱい見せます。 淡路に来たら、 被害にあったところだけを見ていないで、 こういうものも見て欲しい。
特に、 この小さな小屋が良いですね(写真12)。 女の人と駆け落ちして三日三晩過ごすならこういうところです。 素材感があるでしょう。 この良さが分かる人が出てこなければ、 文化なんて亡んでしまった方が良いぐらいです。