学生諸君には自分の進路を考える上で、 今日のこの話を参考にしていただければと思います。
まず、 都市環境デザインについて、 我々のグループの基本的な考え方がどういうところにあるかを話します。
「環境デザイン」とか「都市デザイン」とかいろいろな言葉が使われますが、 厳密に区別して使っていないため、 あまり言葉にとらわれないでまず聞いてください。
環境デザインが大学の講義で行われたのは、 今から40年ほど前、 1959年のカリフォルニア大学バークレー校でした。 また1957年にはペンシルバニア大学で、 シビックデザインプログラムというアーバンデザインのカリキュラムが行われました。 1960年にはハーバード大学でも、 そういうコースが設けられています。
1972年にはアメリカの建築家の集まりであるAIA(アメリカ建築家協会:日本のJIAにあたる)が、 『アーバンデザイン』という本を出版しました。 1960年代から建築家の中で「アーバンデザインとはいったいどういうものなのだろうか」という研究が展開され、 その成果が本として出版されたという経緯があります。 この本は翻訳されて出版されていますから、 それを読めば20数年前にどういったことを考えたのかが解ると思います。 その中には、 どうしてアーバンデザインというものが注目されないといけなくなったかという経緯が書かれています。
第2次世界大戦が終わり、 アメリカでは多くの地域・都市開発が行われました。 しかし、 そういったものが必ずしもいい環境を作ってはいないという反省のうえにたって、 AIAに参加していた建築家たちは次のように述べています。
「アメリカの都市建設のなかには、 都市景観の基本的な質の破壊を招来した自然に対する理解や尊敬と感応の、 長くかなしい失敗が刻み込まれている。 本書は未来の環境の真のデザイナーになることを望む人々に、 自然のあらゆる様相に対する深い洞察と、 現代の複雑で急速に発展した計算された技術の手なれた使い方や、 都市とデザインの歴史に根ざす創造的なデザインの能力を、 結びつけるように要求するものである」。
以上のことから、 自然という環境に対する洞察と、 今我々が手にしている高度な技術、 あるいはデザインという創造的な行為がうまく結びつかなければ、 望ましい環境、 都市空間が形成できないのではないかという考え方が強く認識されていたことがわかります。 これが20数年前のアメリカの専門家たちの認識した課題です。
都市環境デザインの誕生
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