建築は基本的な部分ではっきりしたものを持っているのに対して、 ランドスケープデザインは分かりにくいのではないかと思っております。 ですから、 ランドスケープデザインといわれるものがどのあたりを扱っているのか、 ということをお話しさせていただいて、 それから、 具体例を示させていただきます。
「ランドスケープデザイン」という名称ですが、 つい最近までは「造園」という言葉を使っていました。 なぜ、 呼び方が変わったかを考えると、 ランドスケープデザインが目指しているものが見えて来るように思います。
感覚的なことですが、 造園というと日本庭園ような昔からの庭をイメージし、 都市環境から多少なりとも距離があるようなニュアンスを受けるのではないかと思います。 それに対して、 ランドスケープデザインは、 本来は先ほど鳴海先生がお話しされたような、 大きな基盤的な意味で使われるべきですが、 やはり、 都市的な造形空間というように受け止められがちです。 例えば、 ピーターウォーカー氏ですとか、 佐々木葉二さんは、 斬新なデザインで都市空間を作っています(写真1)。
このように感覚的に、 日本庭園的なものを造園、 モダンな造形的な空間をランドスケープデザインと使い分けているようなところが一般的な受け取り方でしょう。
一方、 専門分野からはどう捉えているかと言いますと、 同じように、 庭園からの離脱という意識が多分にあります。 実際には、 デザインからは距離のあるビオトープとか、 自然保全とか、 あるいは都市計画の分野を越えた地域計画の中で、 緑地環境をどう創っていくのか、 あるいは保全していくのかといったことにも取り組んでいます。 また一方では、 生活を見据えたまちづくりですとか、 あるいは造ったものと生活とを直接結びつける、 あるいは結びつけながら創るということもあります。
そういう意味で、 領域の拡大といますか、 他分野との重合といいますか、 あるいはコラボレーションとか、 範疇が拡大してきているということがあります。 そういうことで、 造園という言葉から、 ランドスケープデザインという言葉へ言い直した方が、 概念拡大につながりやすいのではないか、 といったことが造園からランドスケープデザインへ、 といった呼び方の変化の下地にあるようです。
私は、 あまり深く考えずに造園学科に入りました。 庭だとか、 造形だとかをやるのかなと思っていましたら、 都市計画だとか、 地域計画とか色々なことをやらされて、 出るときなって、 「造園てなんだったんだろう」と疑問に感じることがありました。 同じように、 ここにおられる学生諸君も、 ランドスケープデザイン全体というよりは、 むしろ主任教授の考えていらっしゃる範疇でランドスケープデザインを受け止めていて、 全体の整理ができていないのではないかと思います。 そこで、 私の独断的な考え方ですが、 あえて全体の整理をしてみたいと思います。
造園からランドスケープデザインへ
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