若者のための都市環境デザイン入門(ランドスケープ編)
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ランドスケープデザインの構成

作品性と合理性

画像oz01 改行マーク図1は、 私流にランドスケープデザインを整理をしてみたものです。

 

改行マーク横軸は、 造る側で整理してみました。

我々の一つの出発点である「庭園」が左端にあります。

それから、 真ん中に「オープンスペース」があります。

公園とか、 道路とか、 緑地であるとかといったものがこの中に入ってきます。

一番右側には、 「自然」を設定してみました。

 

改行マーク自然を創るのか、 庭園を造るのかでは、 造り方、 あるいは造る側の態度が違って来ると思います。

その中で、 デザインといいますと、 非常に感性的にものを造り上げるという感覚と直感的に結びつきます。

そういった意味からいいますと、 庭園というこの横軸の左側は「感性」でものを造るといえるかと思います。

 

改行マークそれに対して、 右側は「科学」的にものを造っていくということではないかと思います。

言い換えれば、 作品性を重視して造る場合と、 対語で、 非作品性というふうに書いていますが、 科学的に造る場合があります。

作品という独自性、 存在感というものに対して、 むしろ、 「地」になるものといえるかと思います。

これらが、 横軸の中で段階的にかわっていくのです。

 

改行マークもう一つの言い方をしますと、 庭園は、 個人のオーナーと作家との折り合いによって、 何を造っても良い世界です。

そういう意味で、 左側が個人的であるとすれば、 右側は社会的であると言えるかと思います。

 

改行マークさらに、 感性と科学というものをどう解くかということです。

科学性については、 私流の言葉でいえば、 合理的にものを解いていくことであると思います。

庭園は、 象徴的な宇宙感ですとか、 例えば日本庭園で理想郷の須弥山を中心に据えて小宇宙を繰り広げるように、 非常に感覚的な世界です。

それに対して、 右側の自然を復元する、 あるいはビオトープを造るといったことは、 土地の地盤の問題、 あるいは、 周辺の自然の問題、 それから自然というものを動態として捉えたときに、 それがどういう形で変化していくのか、 そこへ生物的にどういうものがのってくるのか、 といったことを合理的、 科学的に解いって組み立てなければなりません。

 

改行マークその間に、 オープンスペースというものがあるわけです。

都市環境デザインに眼をおく場合はランドスケープの中でオープンスペースが最も重要なところになります。

ただし、 実際にオープンスペースが解けているのかというと、 そこにおいても庭園的、 作品的感覚が強すぎて、 なかなか難しいのです。

直感的には、 20%ぐらいがどうにか解けた世界かなと思います。

残り80%は、 我々がやってきたことを継いで、 これからの世代の方たちが解いていってくれるところだろうと思っています。

 

改行マークものを造ることと作品化することは、 造り手の意識の中で強く結びついています。

それ故か、 オープンスペースでも作品性をもってアウトプットされていることが多いように見受けられます。

そういったことは確かに、 都市デザイン、 個々のオープンスペースデザインということでは重要でもあります。

しかし、 オープンスペース自体が本来どうあるべきか、 合目的性、 合理性といったキーワードでもって解いていくということも必要であると思います。

むしろ、 極端な場合には、 作品性や感性から離脱して、 非作品性や合理性をねらうべきところにオープンスペースがある場合も少なくないと思います。

 

改行マーク例えば、 公園のデザインをしておりますと全体構成に加え、 パーゴラのデザインとか、 舗装材のパターンといったものを、 造る側がデザイン対象として色々思案します。

それに対して、 ユーザーとしての住民アンケートをとった場合、 単なる草の広場が欲しい、 あるいはそこでバーベキューがしたいというようなことがでてきます。

こういったこととデザインは、 かみ合わなければなりません。

しかし、 そのかみ合いがうまくいかないのか、 むしろデザイン性や作品性が先行してしまって、 「地」の機能を忘れてしまっていることが、 時々あるのです。

作品の存在感よりは、 快適性であるとか、 実用的であるとか、 そういったようなことが右寄りで解かれるべき大きな課題として残っています。

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