いわゆるオープンスペースを堅く考えると、 そこには行政的な土地区分ですとか行政管轄というものがあります。
そういったもので分けて考えるのではなく、 空間は一体的につながっていって、 区画のないものであるというとらえ方をするべきだと思います。
しかし今の行政から見ると、 公園、 広場といった区分がなされており、 それにしたがって整備がなされています。
その中で我々作る側としては、 行政管轄とは別に、 常に周辺との関係を持ったものとしてそれぞれの土地を扱わなければならないのです。
図2は広島の山間部の中に作った国営公園です。
国営公園は、 だいたい地方建設局に1ヶ所から2ヶ所の割合で整備されているものです。
実体的にはともかく「国民のリクリエーションの場」を目指している公園です。
基準としては約300haとなっています。
当然、 ニュータウン開発と同じように10年、 20年のスパンで整備されていきます。
公園行政は、 どれだけ来園者があって、 どれだけ滞在したのか、 といったことが成否を分けるバロメーターになりますので、 往々にしてこういった公園は地域と遊離したテーマパーク化してしまいます。
しかしここでは、 従来のテーマパーク的発想ではなく、 いかに本質的に国民のリクリエーションに対応するかということを考えました。
黄色のところは、 芝生広場だとか草っ原だとか牧場だとかの実体的なオープンスペースです。
緑の部分はレクリエーション活動のできる林です。
その中に、 宿泊施設やオートキャンプ場などが仕込まれています。
写真3は、 その中の原っぱです。
ただし、 どうしても行政的な発想で目玉施設といったものがでてきてしまいますが、 それも地元の風土性とかけ離れないものをめざして作っています。
写真4はそのシンボル施設です。
山間部の農地、 庄屋屋敷をそのまま作り上げたような核施設を作りました。
ここでは、 運営について地元の三セクと色々議論をし、 どういったサービスを提供すべきかということを考えています。
玄関の竹筒にそのあたりでとってきた花を生けてくれていたり、 漬け物やソバ打ちを通して地元の人々と来園者とのコミュニケーションや、 餅つき等の農村の歳時記的イベントを行っています。
ランドスケープデザインとして、 この写真の手前側の水田の畦のようなところに、 自活で自然が復旧してきて、 それをどう今後コントロールしていったらいいのかといったようなことも考えております。
写真5は、 いわゆるビオトープですが、 三田ニュータウンの中のフラワータウンの中にある深田公園です。
ここには、 かつて石組みを組んだ日本庭園もどきの川があったのですが、 そこを一度、 泥田で埋めてしまいまして、 そこから自然の力で復旧させたものです。
自然は力強く、 数週間で草が生えはじめます。
先ほどの作品性ということと関係しますが、 川を埋めて泥田にするということが我々の仕事で、 その中に何が生えてくるのかということは我々の仕事ではないのです。
当然、 予測はします。
泥田の勾配をどのくらいにして、 水の流れをどのくらい遅くするのか、 富栄養価をどう止めるのかということを、 基盤としてデザインしました(写真6)。
こういったことばかりいっていますと、 ランドスケープデザインを誤解されて、 みなさんが来ないといけませんので、 造形デザインの紹介もします。
写真2aは、 滋賀県の山間部の小さなまちでシンボル広場を造ったものです。
まちのシンボル性を表わす空間を創るといったものです。
部分、 部分には造形的な各論がのっているわけですが、 それにもまして全体的な地面の造形が主題になっています。
写真2bがそのプランです。
ここの場合、 庁舎を移築するとか、 図書館を造るとかなど色々な施設のために施設用地を造る必要がありました。
私としましては、 こういった地面の造形をしながら、 施設用地を造ることがむしろ目的です。
理想的な施設用地を生み出すために、 広場があって、 車がたっぷり止まれて、 車や人のアクセスが効率よくできるといった、 先ほどの合理性ですが、 そういったものを全て満足している空間構成を中心に考えています。
最後に、 先ほどのチャート(図1)で一番下のところの生活についてです。
写真10は、 里山をリクリエーショナルな住民参加で管理しているところです。
実は、 最近、 ある県で県営公園20haほどの計画にかかわりました。
ところが、 県としては、 他にない目玉商品をめざしたのですが、 今の社会でのユーザー意識をつめていくと、 幸いなことに何を作るのかということがなかなかまとまらなかったのです。
そこで、 「今造ってしまう必要はないのではないか」と提案しました。
里山があって、 田圃があるという、 都市公園としての常識的な視点を変えれば素晴らしいところでしたので、 芝生広場や園路といった必要なインフラだけ造り、 その後は地の特性によるレクリエーション展開をしてはどうか、 といったことです。
そして、 そういったものを今後どう展開していくのか考えていくような活動センターを造ります。
その活動センターを中心に、 組織、 運用形態等のデザインに重点を置きます。
その後に、 周辺に新しく住んでいる人たちや、 旧住民も交えて、 どう地面の「地」を造り上げ、 変えていくのか考え、 その人たちにおまかせしようというものです。
そういった方法によるデザインもあるのです。
最後になりますが、 最近ガーデニングがはやっています。
ガーデニングとは花や緑の園芸展示ではないはずです。
我々は庭を幸福な生活空間だと捉えたいと思います。
まちなかにおいても、 緑、 花、 水、 自然というものが、 本当の意味での人間の行動とどうかかかわりあうのか、 そうのあたりで空間が実体化されてこないと、 ランドスケープデザインではないと思います(写真11)。
ランドスケープデザイン全般について、 だいたいこういったような範囲でやっていますということをお話しさせていただきました。
ありがとうございました。