ランドスケープデザインの実体
地域構造の中のランドスケープデザイン
関学研はクラスター開発ですが、 その場合、 各クラスターの相互の関係付けや、 開発クラスターと地となる地域の関係、 言うなれば地域のトータル計画の視点が希薄です。
開発が開発区域の中だけを対象として計画していると、 都市計画における限界を生じてきます。
また、 そういったことは理解されても、 結局は象徴性ですとか、 文言的なもので処理をされてしまって、 実体に結び付かないことがあります。
そこで、 ランドスケープデザインは、 そういった開発地をむしろ地域的なスケールから見てはどうかということを考えます。
ランドスケープデザインが考えているオープンスペースとは、 消極的に聞こえるかもしれませんが、 まず開発というものがあって、 それに対する反応として出てきます。
あるいは、 建築サイドが建築を建てると、 それ以外のところがすべてオープンスペースになる、 そういうような捉え方をします。
ということは、 求心的にものを造り上げるというよりは、 空間的とか、 広がり的な感覚だということです。
ですから、 都市開発という一つの島ができるとしますと、 その島に対して常に海原上から見ている感覚で捉えるという、 逆方向の感覚を持って展開します。
そうしませんと、 ランドスケープデザインが、 都市開発の中の単なる各論に終わってしまうわけです。
それを越えるために、 開発区域を越えた概念を開発区域内に持ち込むというのが、 ランドスケープデザインのスタンスです。
具体的に言いますと、 開発区域外には地域構造である木津川があって、 府県界緑地があります。
また、 内部には都市開発によるオープンスペースや緑地があります。
そういったものを周辺地域の構造の中で捉えながら、 全体系の中へどう組み込んでいくのかということを考えていきます。
ばらばらなものを地域構造としての緑水軸として、 地域の一つの系として捉えてゆきます。
さらに、 赤い軸は開発側の活性軸です。
そういった地域構造の中で、 公園という、 緑水軸という保全系に対しても、 あるいはまちの活性化に対しても、 どちらの機能も持ち得るものを、 どこに置くべきかということを考えたものがこの図です。
結局のところ、 開発の赤軸と保全系の緑軸の交点を結び得る位置、 ここが一番公園のあるべきところであろうということです。
そもそも、 開発地の中の公園が開発の中だけの公園なのか、 あるいは、 地域にも恩恵を及ぼす公園なのかという議論から発しているのですが、 そういったものの置き方などの検討を、 開発側と地域を見据えた形で行ったものです。
さらに、 ランドマークとなる丘陵との見通しが、 どう地域軸を意識させるかといったような検討をあわせて行っております。
また、 この紫色は、 歴史、 文化軸です。
平城宮跡があって、 奈良山を越えて旧街道が伸びており、 その軸に沿って、 地域の人々が暮しています。
こういったものとの関連を捉えて、 一つの地域インフラを、 保全系と開発系をあわせたチャートとして持っておこうというものです。
ただし、 計画というものは往々にして、 色々な社会性や総合性で出てきますから、 現状が必ずしもこのようになっているとは限りません。
だんだんスケールを落としていきまして、 写真9は北大阪で行われようとしている都市開発のプランです。
ここは、 南側に大阪市街地、 千里丘陵があり、 北側は山間部に登っていくところです。
ここが、 率先して公的に開発されるかどうかは、 大阪が今後どういうような形で拡大され、 あるいは関西領域がどういうように変貌するかという発端になる、 地域構造的に大事なところです。
大阪平野は葛城山、 生駒山、 北摂連山、 六甲山といった山々に囲まれて、 それを領域としてその中で展開しています。
そういった自然の領域から都市部の間に、 ある種の段階制を持っていて、 自然から里山、 農地、 都市周辺の郊外住宅、 都心というような展開を持っているはずです。
ちょっと極論ではありますが、 自然と都市とが密着いたしますと、 不健康な状態になります。
往々にして、 防災面でも問題を生じます。
逆に言えば、 観光的にはおもしろいところになります。
関西では、 典型例が神戸と六甲山の関係だと思います。
景観の変化や環境の変化が非常にダイナミックであり、 非常にわくわくさせる、 あるいは住んでいても、 そこのアイデンティティというものが明確になります。
一方、 自然から都心まで段階を持って展開されると、 その構成は非常にのどかになります。
観光的には魅力が薄らぐのですが、 土地利用的には非常に健康な状態になります。
ですから、 ここの開発はまさに神戸型の開発で、 大阪の本来の土地構成のもつ基盤を大幅に変えていこうとしていると見えるわけです。
先ほどお話ししたように、 ランドスケープデザインの出発点として、 大きくは大阪の周辺の領域、 あるいは茨木、 高槻の地域の構造と、 それぞれの開発(黄色)がどうつながるべきかといったことを考えます。
そして、 その開発の中の緑や水が単独の施設としてではなく、 周辺の地域構造としてどういった風合いを持って、 どうつながっていくべきかを考えます。
例えば、 この開発地に接する茨木川周辺には、 大阪の近郊では不思議なほど里的な農村が残っています。
開発側が、 そういったものに対するインパクトをどう良好な方向に持っていくかは、 開発地内の緑のデザインではありませんが、 地域的スケールから見ると大きな問題です。
そういったことを緑側の地域的なインフラ基盤として整理したのがこの写真9の図です。
さらに、 大きなインフラの緑、 水と、 住宅地内部の緑、 水が実際に段階的にうまくつながっていくのかを考えました。
極論すると、 こういった地域構造を捉えた開発方式や、 緑の段階構成が健康な土地利用による大阪的市街地の拡大につながるのだと思います。
さらには、 実体論として緑の質はどうなのかということがあります。
自然の再生をめざす地域的な緑や、 生活環境としての緑の他に、 まち的なものを想定した軸線(赤色)の緑や、 あるいは、 その核となるセンターの緑等があります。
そういったところでの緑のあり方や、 あるいは緑だけでなく、 都市景観として、 建築と一体となった空間に対しても、 どういった緑の景観を創出していくべきなのかということが計画の最終段階です。
個別ではなく、 総合的な意味で一つの指針を狙いながら、 だんだん段階的に落としていくといったことを目指し、 この計画は今動き出しているところです。