the Urban Enviornment Design Seminar, Melcatello
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イタリアの生活
メルカテルロの街角
(株)都市環境計画研究所
大矢 京子
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「大矢さん、 イタリアに行かない?」とお誘いを受け、 それもイタリアの山岳都市。 いつでも気軽に行けるような所ではない。 メルカテルロには数年前に購入された井口邸があり、 今回のイタリア行きの目的はカーサ・イノクチの修復工事、 ウーン行ってみたい………、 とお話を聞いてから半年後、 少し忘れかけていた頃に「イタリア・トスカーナ/JUDI関西/ロングステイ・スペシャルセミナー・プログラム」なる資料が送られてきた。 メニューは、 イタリアのまちづくり・都市計画の実際を聞き、 町の人たちと交流する公式行事に始まって、 普通のイタリアの生活を楽しむ、 職人工房を訪問する、 歴史的建造物の修復現場を見学する、 井口邸の修復工事に参加する等々、 さらに白トリフがたっぷりの食の楽しみまで。 スケジュールは毎年恒例の都市環境デザインフォーラム関西を終えて4日後の出発、 これはなかなか準備は大変かなと思いつつ、 そこはJUDI関西メンバー。 役割分担が決まると事は着実に進み?、 総勢26名がそれぞれのイタリアを期して国際セミナーに出発した。
ローマからバス。 地震の傷跡も生々しいアッシジを経由して約280km。 メンバーの一部が宿泊するメルカテルロ隣町のボルゴパーチェに到着。 まず目についたのが広場にトリフ祭りのポスター。 う〜ん・うんうん「イィですね−」。 今夜はワインとトリフで出足好調……。
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写真1 中庭の掃除
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翌日からの公式行事は他の皆様の報告にお任せして。 セミナー後の足かけ3日間ではありましたが、 ゆっくりメルカテルロの町に滞在し、 目的の井口邸の修復工事を足手まといになりながら、 中2階レベルの中庭のお掃除からまずは開始。 草引きをしているとお隣のおばあさんが2階の(レベルが複雑で良くわからない)窓から顔を出して、 ニコニコとイタリア語。 どうやらカマかクワを貸して下さるよう。 すると半地階(多分)の窓から息子さんが道具を差し出してくれ、 作業が捗る。 昼食を終え3時までお昼寝。
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写真2 床の状況
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その後は1階のギャラリーが予定されているスペースのお掃除。 箒で掃いてもモウモウと埃が舞い上がるだけ。 床にタイルが張ってあるから目地が見えるはずなのに?。 これはどうもモルタルが固まっている様子。 近くの農機具なんでも扱っているお店に行ってトンガやクワ(イタリアでは何というのか、 身振り手振りで)を購入、 薬局で防塵マスクも。 タイルの目地が見えてきた。 タイルが割れて床が落ち込んでいる所がある。 部屋の隅に余ったタイルが積まれていたので、 メンバーがタイルを並べ直そうと一枚ずつ剥がす。 と、 タイルは梁の上に渡してあるだけ。 1枚ずつ外して隙間の埃を除く。 ところが元に戻すのに一苦労。 あわない元に戻らない、 どうして?もとの場所に戻しているだけのつもりなのに。 イタリアの職人さんの伝統技術、 多分彼らは上手く納める技術を誇りを持って受け継いでいるのだろう。 次回はその伝統の技術とプライドにも出会えればと思う。
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写真3 CASA INOKUCHIの前の通り
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写真4 居間でくつろぐ
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途中、 部屋中に埃が立ちこめ、 あまりの苦しさに外に出る。 ご近所に迷惑をかけてはと、 ドアを閉めたままにしていたため。 マスクも顔も頭も埃だらけ。 通りに出るとご近所のオバサン・オジサン、 昨日セミナーでお会いした市長さんまで通りがかる。 「ボンジョルノ」と真っ黒な顔でご挨拶。
一応旅の目的は果たし、 日頃にない心地よい体の疲れは井口邸の日本式浴槽でとり、 夕食はメンバーご自慢の手料理。 材料は近くのスーパーと農協マーケットで調達する。 地のワインは殊の外おいしく、 暖炉の火の温もりを背中に感じながら、 ゆったりとした時間を楽しむ。
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写真5 広場に面したバールの賑わい
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その後は広場の向かいのサッカー観戦で賑わうバールで、 夜遅くまでお酒やカプチーノ、 会話を楽しむ。 夜更け広場を通ってエウロージャおばさんの民宿に向かうと、 教会の鐘が時を知らせる。 最初は朝・昼・夕くらいだと思っていたが気をつけていると15分おき。 何百年も姿を変えない石造りの町並みに鳴り響く鐘の音は、 周りの山々もまちの人々も包み込むように鳴り渡る。
翌日は、 朝早く街をブラリと散策する。 道路の片側に聖書の物語を石灰岩に彫った列柱が並ぶ。 その道をたどると、 どうも面積二千m²くらいの墓地のよう。 参加メンバーに聞くと、 ほとんどの人が訪ねていた。
お墓を積み上げた壁面に美しい花が飾られ、 見まわすと壁に梯子を立てかけ、 墓守のようなオジサンが花を生け変えている。 多分毎日のことなのだろう、 亡き人を懐かしんでお墓参りする人達もいる。 壁面だけでなく平地にもお墓がある。 立派なお墓の中には古いものも混じるが、 墓碑に刻まれた年代は10年くらい前までが多い。 後でお聞きすると、 何年か過ぎると別の場所に改葬するとのこと。 この地方の宗教や歴史・文化を多くは学ばずに訪ねたことを反省しつつ、 私の田舎の墓地と変わらない人のぬくもりが、 気持ちを安らかにさせてくれる場所として印象に残る。
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写真6 中世の館(いずれ修復される)
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トリフづくしメニュー
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お昼は、 セミナーでもお話に出ていた、 少し大きな隣町のサンタンジェロインバドへ。 本格レストランのトリフを食べようと、 井口さんご夫妻と共に7〜8人で行く。 車を降りたところで、 セミナーに来られていた地元の方に偶然出会い、 街の中心より少し離れた素敵なお店を紹介して頂く。 トリフづくしのコースを満喫。 その上、 レストランのオーナーが所有する中世の古城まで見学させていただく。 また、 町中のバールでは、 井口ご夫妻の友達(メルカテルロのバールのご主人と許嫁)や地元の彫刻家にも出会い、 さらに楽しい時が流れる………。
今回のセミナーに参加させていただいたこと、 また井口ご夫妻のおかげで、 メルカテルロの人々と素晴らしい交流を持てたことに感謝している。 帰国後、 有志が集まり(仮)大阪メルカテルロ協会を設立した。 この集まりを通じて、 お互いに学ぶところの大きい、 そして心温まる交流が永く継続することを願っている。
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