石田:
こういう共有地を専用化させる住民参加のシステムをつくる際に、 公平性とか、 公開性をどうやって確保しておくのかというのは、 なかなか難しい課題だと思います。 自然発生的にそういう参加が出てくるのは、 合意の上での話ですからいいと思うのですが、 それを最初から仕掛けておくというところに難しさがあります。 その解決方法が、 これからの課題であると思いました。
大和田:
佐々木さんの方から出てました、 建設後が勝負だということですが、 まさにその通りで、 入居した後に、 住民の方にさらに下りていくような実行委員会にしていきたいと思っております。
具体的には、 年に1度、 南芦屋浜のアートフェスティバルをしようということになっておりまして、 今後とも、 こういった機会を捉え、 我々がやってきたことを引き継いでいただき、 自主管理をやっていただきたいと思っております。
今後、 具体的な団地自治会にシフトしていかなくては、 我々がやってきたことが水の泡になります。 特にアートについては、 今後の管理をいかにしていくのかが課題になってくるかと思いますので、 そういうようなことを今後やっていきたいと思っています。
小林:
橋本さんが、 南芦屋浜のすぐ北側に住んでいることが非常に大事なことで、 せめて3年はフォローできないようなら、 作らない方がいいと思っています。 橋本さんがあそこにいなかったらできなかったはずだと思っております。 なにかあったら橋本さんがすぐに飛んでいくという約束をしていると思っていますので、 安心しているわけです。
本当をいいますと、 東部新都心でやることが私の任務なのですが、 私も江川さんも芦屋に住んでおりますので、 私たちもコミュニティの中でやっているという部分が大きな背景としてあります。 これもまた大きなテーマかなという気がしております。
それから、 最終的に「よかったなあ」と思っていることが大事であると思います。 田甫さんの案も、 はじめ、 ぼろかすに言っていったのですが、 できてみたらいいじゃないかとかいったことは、 アートにとっては非常に大事なことだと思います。 佐々木さんのおっしゃられたように、 どんなものでもいいというわけにはいかないということがよく分かったし、 小浦さんがおっしゃられたようにアートというのはなかなか力があるということも感じました。 コミュニティ&アートということばは、 登録商標をとっておけばよかったという気がしているのですが、 2つをつなげて話ができたのは、 私の成果です。
もう一つ最後に言いたいことは、 こういうことが公営住宅でできるということです。 これは、 災害復興の公営住宅でコレクティブハウジングができたということと同じぐらいの意味があると思っております。 公営住宅はこういうものでしかできないという概念が、 少しずつ壊れてきているというか、 現実に壊れている部分もあるわけです。 田舎の方に行って公営住宅を見ていただければ、 何が集合住宅か、 どこが低所得者用の住宅かというような状況の公営住宅が山ほどできています。 公営住宅というのは、 貧乏人のものだというようなことは都市部だけです。
パブリックハウジングというのが、 いろんな形でできうるんだということは、 地方の人はみんな知っているのですが、 大都市の人は知らないわけです。 その中で、 中身としてのコレクディブだとか、 外身としてのこういったパブリックスペースのアートだとか、 もっともっとやっていっていただきたいと思っております。
橋本:
こういうことができたのも、 本当に仲間があってのことだということを強く感じております。 特に、 建築と一体となったアートは、 アーティストが言ったからといってすぐにできるものではなくて、 それをバックアップして、 建築の現場とつないでくれたスタッフがいて、 オーソライズして下さる人もいて、 それぞれの役割の中で、 こういうものができたという喜びは、 掛け替えのないものだというふうに思っております。
星田:
私が、 今回のことを体験して感じたのは、 やっぱり、 参加してやってみないと分からないことがあるんだということです。 人としての思いや、 考えというのはうつろいやすいものですが、 論理も意外と不確定なものであるということが最近分かってきました。 むしろ、 理屈、 論理以外の部分で、 たくさんの人が集まって、 レスポンシビリティを重ねていって、 地層みたいなものでたまっていって、 何となく総和の力になって、 こういうことができていったというような感じがするのです。
だから、 とりあえずやるということから始まって、 それにいろんな人が応答していって、 修復していくという循環で、 なんか知らないけれども厚みみたいな力があって、 できなかったことが少しできたのではないかという実感を持っております。
江川:
どうもありがとうございました。
先ほど、 小林さんの話の中に公営住宅の話がありましたけれども、 私自身の関心事はまさにその点にしぼられます。 芦屋では、 本当に公営住宅が嫌われているのです。 完璧な嫌われ者です。 先ほどの星田君の話にもありましたが、 公営住宅は緑で隠してしまえというような話が、 まじめな顔で語られているわけです。 それはなぜかというと、 現実の芦屋の市営住宅の中に、 生き生きとした生活感がないからだろうと思うのです。
何も芦屋はお金持ちの人ばかりが住んでいるのではなく、 今回地震で壊れたようなところには、 零細な人たちだけれども、 生き生きと暮らしていたということがありました。 そういうものを復興しなくてはいけない。 そういう人たちを南芦屋浜の離島にとばして、 従来と同じようなことでやっていたら、 もっと大変なことになってしまいます。
例えば南芦屋浜の場合は、 あの公営住宅ゾーン以外は分譲住宅になる計画ですから、 もっとはげしく嫌われ者になってしまう可能性があります。 彼らが嫌われ者にならないで、 むしろ一番最初に島に移り住んだものとして、 自信を持って生活してもらおうと思ったら、 生き生きさを生み出さなければ絶対に無理なんじゃないかと思ったわけです。
私どもは、 結構地方で公営住宅をやってきています。 先ほど小林さんのお話にもありましたが、 そういうものが淀んでいた沈滞感を活性化するというようなことが、 現実に起こってきているわけです。 そこが、 私個人でいえば一番の関心事であったがゆえに、 そういうものができるきっかけとして、 アートかランドスケープか分かりませんが、 いきなりゼロからスタートするのではなくて、 1万人の人が関わったというエネルギーを感じていただいて、 住んでもらえれば一番幸だと思っております。
以上で、 本日のセミナーを終わりたいと思います。 今日は長時間にわたりありがとうございました。