田甫さんにお願いするには、 アーティストと契約しなければいけない。 その契約の中には著作権だとか、 版権だとかというものがあって、 特に外国ではそういうものが非常に重要視されているというような話がありました。 今回やろうとしているものがもしアートだとして、 そんなものに著作権があるとしたら、 これはなんなんだろうということなのですが、 これは、 結論は出ているのですか。
橋本:
今回の話の中で、 課題が2つ残っています。 ひとつは先ほども少しふれましたが、 管理の対象としての公営住宅、 あるいはパブリックスペースという問題を、 どう切り開いていくのかということです。 「芦屋だからできたんだ」とか、 「震災復興だからできたんだ」というような話で終わってしまっては、 意味がないわけです。 もっと大きな根本的な制度や今何が必要とされているのかというようなその根っこにある問題にまで立ち返って、 この問題をきちっと議論していかないと、 意味がないと思います。 そのあたりを共有していって、 ものを言っていかなくてはならないと思います。
それから、 2番目が、 今、 江川さんがおっしゃられた著作権、 所有権に対する理解がいかに低いかという問題です。 これは国際法で保証されているのですが、 全くそういうものが通じない社会が日本にはあって、 「そんなこと言うんやったら、 もうやめてんか」というような考えがあるのです。 一番保証されるべき創造性、 あるいは個人の知的な活動に対する理解が、 制度的にはなかなか認められていないことに対して、 どう考えていくのかということです。
江川:
そうではなくて、 例えば、 今回の田甫さんの作品で、 どこが著作権といえるのかということなのです。 そのプロデュースした行為が著作物なのかということです。 そのあたり、 みなさん気になっているところだと思うのですが。 何を持って、 彼女の作品というのでしょうか。
橋本:
少なくとも、 このだんだん畑の形がはっきりと提示されているわけです。
江川:
構造みたいなもの?
構造といえば構造です。 形、 パターンです。 それは、 一番の根っこではないでしょうか。
江川:
それはそうかもしれませんが、 例えば、 宮本さんなんかは、 壊れていってもいいとおっしゃったりしているのですが、 それはどういうことなのでしょうか。 それは、 言う人の問題なんでしょうか。
橋本:
著作権に対するそれぞれの作家の態度というものは、 百人百様ですけれども、 守ってくれと言われたときに、 それを守る義務は、 同様にあるべきだと思います。
佐々木:
ちょっといいでしょうか。 こういった手入れをしていく共有の庭としての空間は、 いずれ水をまく道具だとか、 ゴミ捨て場だとか、 座る椅子だとかいろいろな道具が出てくるわけです。 そういうときに、 著作権ということで、 行動を縛られると、 何も置くこともできないし、 石をずらして階段にするとかの変更も出来ないわけです。 私もデザインにとって著作権というものは大事だと思っていますので、 以前、 特許庁の法規を調べたことがあるのですが、 他にまねの出来ないもの、 絶対にゆるがせに出来ないもののみに著作権というものは出されるということでした。 橋本さんの本音は、 住民の方に変えていって貰いたいのだと言われましたね。 私もそれがいいと思いますが、 それでしたら、 参加・育成型の空間には著作権云々は、 言われない方がいいんじゃないでしょうか。
橋本:
言葉は厳密に使わなくてはならないのですが、 何も草木一本たりとも、 小石一個たりとも動かすなと言っているわけではないわけです。 基本的な大事にしたいものはなにかということです。 先ほど申し上げた基本的な形状に関しては守って欲しいということです。 ですから、 例えば、 なにか動かすことがあれば、 よりコンセプトにあった動かし方もあるでしょうから、 一緒にそれについては議論していきましょうという、 そういうあり方です。 著作権はいくつかの要素に分かれていますから、 今の話はその中の一部だと思います。
江川:
ただ、 住民が動かすときに、 誰が、 誰と話をするのかとか、 少し動かしたときに誰が怒るのかというような問題は、 どうでしょう。 例えば、 我々が住宅地の環境の構造をデザインするわけですが、 住民が自由に使えるものである限り、 自由に変わっていくことをむしろ期待していて、 いじりやすいところをどういうふうに残しておくかというような話になるかと思うのです。
そういう事になると、 今回のテーマとは全く無関係ではありませんが、 住宅の著作権とは何ぞやというような話にもなりますし、 それはそれとして、 またの機会にゆずりたいと思います。
生活の場のアートと著作権
橋本:
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