住戸のプランを見ながらいろいろなところで断面を切ってみて、 いろいろな条件から、 緑地としてうまくいきそうだというところ、 これはどうなるのかなというところ、 絶対にこれはダメだというところを、 まずチェックしました。 住戸設計者との応答で強くいうところと、 いろいろなアイデアを出しながら解決していった部分とあるのですが、 まず、 絶対にダメだという赤の部分を見ていただきます。
住戸設計者との共同作業
図9 植栽に関する問題点1(5階) |
押し出し式の窓を開けて手が届くのせいぜい1mぐらいのものです。 それで、 住戸設計者とずいぶんやりやったわけです。 ここの植栽を植える土の厚さは25cmぐらいです。 それでやめたらどうですか、 するにしても手が届く範囲にしたらどうですかと提案したわけです。 結局そのままでいって、 いろいろご苦労されて植え替えたりされています。
建築の設計者、 住戸の設計者、 緑地の設計者、 それぞれの思いと権限と時間の違いということで、 ずいぶんと苦労するところがあるわけです。 今現在、 加茂さんが苦労されて、 住戸の方といろいろご相談されているかと思います。 こういった共同作業では、 いつの時点で、 どういう打ち合わせをするのかということを、 よく考えなければならないなと思います。
(2)の箇所は、 どうだろうかということで黄色をぬっています。 ここの上には屋根がかりがありますが、 南側ですから光は入ります。 そうするとあとは水の条件です。 それで、 これはなぜ必要かという話から詰めていったわけです。 そうすると、 修景上必要だということでした。 非常に土が薄くて、 光はあるけれども水がないというところです。 ずいぶんいろいろな話があったわけですが、 結局、 植えるけども保証しないということになりました。 その前の家の人がきちっとめんどうを見るということになりました。 現在は、 何度も植え替えたりしながら、 その前の家の人が苦労してやっておられるところになっています。
図10 植栽に関する問題点2(3階) |
設計者といろいろ話をしているうちに、 壁が緑地の内側になったり、 外側になったりして、 いろいろなアイディアが出たのですが、 緑地を室内側に位置づけていくことになりました。 そうするとやっぱり、 観葉植物を植えないで、 普通の植物を植えようとすると、 非常に無理があるわけです。
ここにお住まいの方は、 非常に理解のある方で引き受けて下さったのですが、 様々な問題が出てきました。 丸谷さんが非常にご苦労されたんですが、 鉢を持ってきて植えるわけですから当然ですが、 虫が出てくるのです。 一度全部根を洗浄してもう一回植え替えたりしたんですが、 やはり出てきます。 また光量が足りないだとかで、 生き残っているのは限られています。 そういった話を住みながらもやっているわけです。
住んでいる方は非常に不快であるとは思うのですが、 それでもやっぱり室内の緑をいらないとはいわないのです。 苦労してもらっているだけに、 すごく愛してもらっているわけです。 僕らも、 不思議だったんですけれども、 愛してもらっています。
(4)は、 絶対にうまくいくという部分で、 緑の部分です。 当初はあまり考えていなかったんですが、 コンクリート面が非常に目立つので、 僕らは緑地設計者としての裁量で、 例えばマツバギクとか、 ツタのように壁をはいあがっていくものを考えて、 配植していって、 非常にゲリラ的なことをしていったわけです。 サーモビュアで見るとある程度の効果が出ているかと思います。
それと、 今はもういらっしゃいませんが、 (5)の屋根がかりのところに盆栽がありました。 盆栽を置くからということで、 その下には土が欲しいとおっしゃられたわけです。 でも、 実際にはできないので、 湿気がたまるようにしました。 それから、 屋根がかりがあるということは、 夜露がかからないので盆栽をするには非常にきついそうです。 噴霧器をかけたりして、 非常に苦労してやっておられました。
5階の(6)は設計の段階では緑だったのですが、 しばらくして、 ずいぶん枯れていったところです。 緑色であっても、 住まわれる時にどう関わろうとしているかにかかっているわけです。 住まい手の側と緑地の側の関係が希薄になってしまうと、 環境として準備していても、 枯れていってしまいます。 そういうことも、 考えておかなければならないなと思いました。
設計段階、 住まわれてからのことについて、 ご参考になればと思います。