(1)「立体街路の緑地」については、 「目を引かれることがない」と言う人が減って「楽しんでいる」人が増えています。 しかし、 注目すべきなのは「枯葉などが気がかり」と言う人が2年目になるとかなり増えていることで、 これは居住者が植栽の手入れに苦労しているのだと推測できます。
(2)「中庭(エコロジーガーデン)」については、 「中まで自由に歩きたい」と答えた人が1年目にはかなり多かったのに、 2年目になると慣れてきたせいか大幅に減っています。 その一方「楽しんでいる」人が増えているようです。 また、 「虫や野鳥を見たい」人が減っているのも特徴です。
(3)「屋上緑地」については、 1年目、 2年目とも「もっと遊べる場所が欲しかった」と答える人が多いのが特徴です。 その他「野菜などを植えて収穫したい」人が増えています。 これを受けたわけではないのですが、 今は丸谷さんのご指導のもと、 子供達を中心に人参や大根を植えて楽しんでいます。
(4)「住戸内植栽(テラス内)」については、 「楽しんでいる」人が若干増えています。 その一方、 「もてあましている」人も少し増えました。
こうした入居者アンケート全体を見てみると、 自然に対する興味が増えたという声が多く、 携わった私にとっても嬉しい結果となりました。 しかし、 全員が緑地に対して肯定的ではなく、 否定的な人もいます。 それは昼間に在宅かどうかが大きく関わっているようで、 夫婦とも働いていて夜しか在宅しない家庭だと、 昼間の緑の恩恵をあまり受けておらず「夜は死角が多くて怖い」という声もあります。 やはり、 昼間に家にいる人の方が緑地に対する評価が高いと言えます。
入居者の意見で面白いと思ったのは、 昼間不在の人(この人は緑に対して否定的な意見ではありません)が書かれたもので、 「都市の環境は、 鳥や緑に対していい状況なのですか」というものです。 「人のために作られた都市環境にわざわざ鳥や虫を呼んでこなくてもいいのでは?」というご意見でした。 また、 別の人は緑地を評価しつつも「緑地は住棟レベルでなく、 街区レベルで考えた方がいいのではないですか」という意見を寄せてくれました。
その他、 否定的な意見として多かったのが「虫が多い」「蝉がうるさい」ということです。
ところで、 住戸内の植栽と1階の中庭については、 同じ人でも若干意識の差があるようです。 中庭については「会社がプロジェクトでやっている実験の庭」ととらえる感覚があるようですが、 自宅内植栽については「私の庭」という感覚が強いようです。 中庭については興味のない人も、 住戸内植栽については熱心に世話をするというケースがありました。
ただ「庭の世話に疲れました」という人も出てきています。 やはり自分が責任を負ってしなければならないことについて、 庭の世話が好きではない人が疲れてくるようです。
居住者による緑地の評価
図7(a) 立体街路の緑地(ハッチが1年目の評価、 黒ベタは2年目の評価)
図7(b) 1階中庭(エコロジカルガーデン)(ハッチが1年目の評価、 黒ベタは2年目の評価)
図7(c) 屋上緑地(ハッチが1年目の評価、 黒ベタは2年目の評価)
図7(d) 住戸内植栽(テラス内)(ハッチが1年目の評価、 黒ベタは2年目の評価)
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