エピソードとしては、 盆栽の好きな方がいらしたんですが、 僕もすごく勘違いしていたんですが、 盆栽が好きであれば緑のことを分かっていただけると喜んでいました。 ところがお話を聞いている限り、 盆栽はどうもプラモみたいなところがあって、 盆栽が外に対してどんな役割を果たすかというよりは、 盆栽を育てるための状況になるように協力して欲しいということでした。 非常に簡単なことだったんですが、 盆栽を飾る下に水が抜ける物を作って欲しいということでした。
各住戸に庭があるのですが、 そういう物については要望はありませんでした。 一生懸命問いかけたのですが、 ほとんど要望があがらなかったという実情です。 終わってみて住戸設計者との話しの中で感じたことですが、 紙1枚で問いかけても、 おそらくイメージできなかったんじゃあないのか、 と思います。
加茂:
それぞれのライフスタイル対応住戸に自分がいかにフィットしているのかということをアピールしてもらう作文をしてもらって、 その作文から入居者を決定しました。 つまり住戸プランから入居者を決定したのであって、 住棟プラン、 もしくは緑地の側から選んだということは一切なかったという経緯があります。 ですから、 入居者にしてみれば、 「あるコンセプトの家」に自分があっているというアピールをして自分が入ってみたら、 緑地もついてきたというのが本音ではなかったのかと思います。
コレクティブハウジングですとか、 住まい手参加設計の話がでていましたが、 緑地に参加して設計したということはなかったのです。
4軒が住まい手参加で設計した住戸で、 12軒がライフスタイル提案型住戸に入ってもらっています。 住戸に対しては絶対的に満足度が違っています。 参加して作った方がずっと満足度が高いんです。 おそらく、 緑地にも同じことがいえるのではないかと思います。
まず、 住まい手参加の場合には、 扉の開き勝手が気に入らなかったら、 入居してすぐ自分のコストで、 日曜大工で変えています。 関わっていこうという姿勢がものすごくあります。
ところが、 ライフスタイル提案型の場合には、 いやなことがあったらまず設計のせいになります。 会社のものだという意識がまずありますし、 自分から住宅を変えていこうということがなくて、 「収納がない」とか、 「あそこはあんなに天井が高いのに、 ここはこんなに低い」とか、 「この部屋は狭すぎる」とかがまず設計の不備として認識されます。 住まい手参加型とライフスタイル提案型のこのような認識の違いはおそらく、 住宅の中だけに限っていえるのではなく、 住環境全体に対していえるのではないかと思います。
それと、 与えられた空間に自分が関与していないから苦情になるのであって、 自らの選択で、 自ら欲してやったことに対しては、 苦情にはならないと思います。 先ほどのご質問と重なるのですが、 自ら欲するという気持ちを引き出して、 自らなにかしようということができるのが一番いいのかなと思います。
あと、 雑草の散髪は、 丸谷さんからそろそろ切った方がいいよといわれたら、 剪定業者さんの方にお願いするという感じです。
ただ、 入居者との関わりの中で考え方を変えていかなければいけないなということもあると思います。 NEXT21の居住実験は、 一応5年で第1フェーズが終了します。 第1フェーズの入居者の方には5年で出ていただいて、 次の5年間は新しい方を迎えるということになります。 その時には、 あらかじめ緑地のことを説明して、 緑地の管理をできる人に入ってもらおうかなと思っていまして、 住環境創造型の意欲にある人に入っていただいて、 第1フェーズとの違いを比較するというようなことをしてみたいと思っています。
入居者について
入居者の選定
江木:
NEXT21でも4軒で住まい手参加が行われています。 住戸設計者の建築家の方が、 住まわれる方のいろいろな要望を聞きながらレイアウトをされていきました。 その中で、 緑地を担当した私としては、 住戸設計者を通じてどういう要望があるのかということを把握したというような経緯はあります。
この建物の竣工が93年の10月、 入居開始が94年4月です。 今ちょうど、 4年すぎて、 5年目に入った5月ということになります。 入居者は、 入居のだいたい1年ぐらい前に決まりました。 この建物は、 建築的にはいわゆる二段階供給方式といいまして、 スケルトンとインフィルに分離した構造を採っています。 住居は、 一軒一軒ライフスタイルに合わせて提案しているという工夫をしています。
苦情処理について
加茂:
苦情の処理の仕方なんですが、 分かったら私も教えて欲しいというのが本音のところです。 特にリフォーム実験を行った時には、 人が住んでいるマンションで、 1つの住戸だけリフォームしましたので、 騒音など、 様々な問題も発生しました。 結局、 苦情に関しては謝るしかないという感じです。 なにか起こったことに対して、 一つ一つ丁寧に対応していくしかないのかなという感じがしています。
このページへのご意見は前田裕資へ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai