丸谷:
都市に住む鳥はみなさんが思っておられるよりも広い範囲を行動します。 例えば、 シジュウカラという鳥は、 山の中ですと1haぐらいの縄張りを繁殖期になると構えます。 これが、 街の中に下りてきますと、 一つの縄張りが10ha以上になります。 結局、 緑地が少ないので、 その緑地を点々と移動しながら利用しているということです。 そういう意味でいうと、 このNEXT21も彼らにとっては利用箇所の一ヶ所にすぎないということもいえますが、 その利用箇所が増えたというふうにもいえると思います。
実は、 シジュウカラが今年、 繁殖しているらしいのです。 今までここに緑地がなかったからこの付近には住めなかった。 しかし、 ここに一つ緑地が増えることによって、 マスとして縄張りを構えるためのスペックが満たされて、 そこに生物が入ってくるということです。 こういうふうに、 生物というのは少しでも可能性があれば入ってきて、 自分たちで生活をはじめて行くという感じですので、 一つの緑地が作られることによって、 ネットワークというものができてくると思います。
それから、 上町台地の斜面緑地は、 エノキ林です。 エノキ林というのは、 雑木林で落葉樹なんですが、 イメージ的には昔の人に聞くと、 もともと湿地の林ですので、 地面がじめじめしていて鬱蒼としていて、 あまりいいイメージを持っておられる方は少ないんです。 大阪城公園に行きますと、 このエノキ林の地面が乾いていまして、 スキッとしていて、 きれいな林になっています。 そのあたりをイメージしながら、 明るくワイルドにというようなイメージで、 周辺の緑地との関連性とか、 樹種との関わりを考えながら緑地を作りました。
できあがったイメージに基づいて、 それに合わせていくというような管理というよりは、 変わっていくものに合わせていきながら、 生き物も住めて、 人間にとってもさほど不快にはならないような、 そのあたりのバランスがうまくとれらと思いながらやっています。 バランスというものをなるべく重視しているつもりです。
ただ、 特定の木が伸びてきたらやっぱり切ります。 屋上の木では、 隣の家からの葉っぱの苦情があってバッサリ切ったというのもあります。 いずれにしても、 あるものだけがばっと広がってしまいますと、 狭い範囲でそれだけになってしまいますので、 そういうことにならないようにはしています。
緑地ネットワークについて
周辺の緑地とのネットワークということですが、 当時遺伝子プールとかそういうことは考えておりませんでした。 ただ、 みなさんご存じのように街区公園はほとんどが広場になっていて、 まとまった樹林はなかなかないんですが、 都市鳥は狭い所でもそれを飛び地にして利用しているのは確かなんです。 そのなかで、 緑地の中での役割分担、 コリドール構想というものについては、 丸谷さんの方で事前に調査されて、 どう飛んでいるということが把握できましたので、 しっかり位置づけできたということだと思います。
僕らは職業がら鳥をやっていますので、 ネットワークということは常々考えるところです。 今回も、 大阪城公園、 この周辺の公園、 真田山公園といったとことろを調査しました。
緑地管理について
丸谷:
それから、 最後の管理の問題ですが、 これが一番難しい問題です。 私どもの方で、 自然緑地の部分を管理させていただいています。 全く管理をしないととても人間が住めないような状態になってしまいます。 考え方としては、 生えてきた植物は雑草ということで、 普通は抜きます。 でも、 最初から雑草と考えるのではなくて、 この雑木林にどう活かせるのかということを考えています。 例えば、 ヘクソカズラでも下へたらせば、 壁を隠していいのではないかとかというように、 既成の概念になるべくとらわれないように生えてきたものを活かしながら管理をするということを、 試行錯誤しながらやっています。
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