都市再開発法による市街地再開発事業が全国で何百(事業完了383地区)とできたのは、 民間企業にとって魅力がある事業だったからです。 時間はかかるけれど、 メリットがありました。 分かりやすい例で言うと、 ゼネコンにとってはひとつの事業で百億からそれ以上の工事費があったし、 大型店などの流通業にとっても駅前という魅力のある所に出店できたわけです。 住宅ディベロッパーにとっても同様です。 つまり、 民間企業にとって取り組むメリットがあったから、 市街地再開発が進んだのです。
ですから、 密集市街地整備事業も民間企業が参画できるような仕組みに作り替えないと、 事業の普遍化ができないだろうと考えています。 どうしたら民間企業が魅力を感じるようなシステムにできるかは私も結論が出ていませんが、 いずれにせよそういう仕組みにならない限り、 インナーシティ問題の解決はなかなか進まないと思っています。
難波:
密集市街地の専門家というのは、皆無ではないが、ほとんどいないといっていいのではないでしょうか。行政の中でも、改良とか密集の事業は、公営住宅とか区画整理、再開発に比べわかりにくく、マイナーな事業と見られています。コンサルタントでも、共同化だとかまちづくりからの発想は都市計画、交通計画、住宅計画に比べ、得体の知れない金にならない分野としてあまり陽の目を見ていないのではないでしょうか。
逆の見方をすれば、都市・環境・デザインに携わる方々はどこかで密集市街地に関わるって仕事をしていると思います。
それぞれの関係する分野で密集市街地を毛嫌いしないで積極的に関与するスタンスを持っていただければ、新しい密集市街地対策の局面が生まれてくると思います。